著者
小島 肇
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
vol.40, 2013

創薬の開発段階において,in vitro試験によるスクリーニングの必要性が増している。作用機構に立脚した試験法は,低コストかつ短期間に薬効や毒性を評価できると期待できる。さらに,iPS細胞の利用においても,再生医療よりも創薬開発が容易との意見もあり,その開発には社会的な追い風も吹いていると想像できる。本シンポジムでは,そのような最先端の創薬スクリーニング試験法をご紹介頂くことになった。 試験法については,その方法が一企業・一国・一地域での認知ではなく,世界的に受け入れられる方法として位置づけられることが重要であるとの見解がある。確かに行政的な受入れに必要なガイドラインではそうかもしれないが,ある企業がスクリーニングに用いるものにそれが当てはまるとは思えない。行政的な受けがなされるまでには,バリデーションが必要であり,それを当てはめようとするとバリデーションラグにより,in vitro試験の垣根が高くなり過ぎる。 ただし,in vitro試験の利用をむやみに増やせばよい訳ではなく,科学的な裏付けもなく,再現性が乏しい方法は相応しくない。できれば,in vitro試験の導入にあたっては,同業他社との共同研究を通して,プロトコルが開発者の思い込みで作られていないか,施設間の再現性は良いか,予測性も十分かを確認しておくことをお薦めする。In vitro試験は使い方により,その高い偽陽性率から誤って有用な候補物質を脱落させてしまうか,または,高い偽陰性率から重大な安全性上の懸念を見落とす可能性を持っている。これを十分に念頭において利用すべきと考えている。

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