著者
諫田 泰成 中村 和昭 山崎 大樹 片岡 健 青井 貴之 中川 誠人 藤井 万紀子 阿久津 英憲 末盛 博文 浅香 勲 中村 幸夫 小島 肇 関野 祐子 古江-楠田 美保
出版者
日本組織培養学会
雑誌
組織培養研究 (ISSN:09123636)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.13-19, 2017 (Released:2017-05-24)
参考文献数
8

近年、細胞培養に関連する技術の急速な開発に伴い、創薬研究、再生医療への応用など、細胞培養が貢献する分野が拡大している。欧米では細胞培養の再現性、信頼性、的確性を確保するうえで、細胞培養の基本概念を研究者・実験者間で共有することの重大性が認識され、Good Cell Culture Practice(GCCP)を作成することにより、細胞培養技術を一定の水準に維持する努力がなされている。我が国の研究者・実験者においても、細胞培養における基本概念を共有すべきと考え、「細胞培養における基本原則」案を作成した。本基本原則案は、培養細胞の脆弱性、入手先の信頼性と使用方法の妥当性、汚染防止、適切な管理と記録、作業者の安全と環境への配慮、の5条項から構成されている。この基本原則の概念が細胞培養を行うすべての研究者・実験者により共有され、日本の細胞培養技術が上進し、細胞培養技術を用いた研究の信頼性が向上することを期待する。
著者
中村 和昭 諫田 泰成 山崎 大樹 片岡 健 青井 貴之 中川 誠人 藤井 万紀子 阿久津 英憲 末盛 博文 浅香 勲 中村 幸夫 小島 肇 伊藤 弓弦 関野 祐子 古江-楠田 美保
出版者
日本組織培養学会
雑誌
組織培養研究 (ISSN:09123636)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.123-131, 2018 (Released:2018-09-08)
参考文献数
4

近年、細胞培養に関連する技術の急速な開発に伴い、創薬研究、再生医療への応用など、細胞培養が貢献する分野が拡大している。培養細胞を利用する上において重要な点の一つとして、適切な状態の細胞を用いることが挙げられる。そのためには、使用する細胞の状態を把握することが重要である。その手段として、生きている細胞を非侵襲的に観察できる倒立位相差顕微鏡が汎用されている。倒立位相差顕微鏡による観察から得られるのは形態情報や細胞密度のみではあるものの、その観察は培養細胞を用いた実験の信頼性と再現性を担保するために有用な手段である。生きている細胞の観察の手法には様々な留意点がある。そこで、細胞培養の観察における基本概念を共有すべきと考え、「細胞培養の観察の基本原則」案を作成した。本基本原則案は、顕微鏡観察に先立つ細胞の目視、低倍率・高倍率での倒立位相差顕微鏡観察、観察のタイミング、適切な記録と保存などに関して7条項から構成されている。この基本原則の概念が共有され、細胞培養技術を用いた研究の信頼性が向上することを期待する。
著者
小島 肇夫
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.151, no.2, pp.52-55, 2018 (Released:2018-02-07)
参考文献数
25
被引用文献数
1

動物実験を用いない代替法については,遺伝毒性・内分泌かく乱・局所毒性試験のin vitro試験法の開発が一段落し,化学物質,農薬,医薬品および化粧品の安全性評価において行政的な利用が進んでいる.日本も経済協力開発機構(OECD:Organisation for Economic Co-operation and Development)等における試験法開発で貢献してきた.世界の潮流は全身毒性(反復投与毒性,発がん性,免疫毒性,生殖毒性等)代替法の開発に向かっている.特に生理学的薬物動態PBPK(physiologically based pharmacokinetic)モデル,トキシコキネティクスの開発が盛んである.日本においても全身毒性試験のin vitro試験法,in silicoの利用検討が始まった.
著者
小島 肇
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
vol.40, 2013

創薬の開発段階において,in vitro試験によるスクリーニングの必要性が増している。作用機構に立脚した試験法は,低コストかつ短期間に薬効や毒性を評価できると期待できる。さらに,iPS細胞の利用においても,再生医療よりも創薬開発が容易との意見もあり,その開発には社会的な追い風も吹いていると想像できる。本シンポジムでは,そのような最先端の創薬スクリーニング試験法をご紹介頂くことになった。 試験法については,その方法が一企業・一国・一地域での認知ではなく,世界的に受け入れられる方法として位置づけられることが重要であるとの見解がある。確かに行政的な受入れに必要なガイドラインではそうかもしれないが,ある企業がスクリーニングに用いるものにそれが当てはまるとは思えない。行政的な受けがなされるまでには,バリデーションが必要であり,それを当てはめようとするとバリデーションラグにより,in vitro試験の垣根が高くなり過ぎる。 ただし,in vitro試験の利用をむやみに増やせばよい訳ではなく,科学的な裏付けもなく,再現性が乏しい方法は相応しくない。できれば,in vitro試験の導入にあたっては,同業他社との共同研究を通して,プロトコルが開発者の思い込みで作られていないか,施設間の再現性は良いか,予測性も十分かを確認しておくことをお薦めする。In vitro試験は使い方により,その高い偽陽性率から誤って有用な候補物質を脱落させてしまうか,または,高い偽陰性率から重大な安全性上の懸念を見落とす可能性を持っている。これを十分に念頭において利用すべきと考えている。
著者
小島 肇
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
vol.39, pp.S12-1, 2012

製薬業界において、医薬品の探索試験としてのin vitro試験の活用が増えつつある。これらの試験法を用い、多くの創薬候補物質のスクリーニングを進めることは、新規医薬品の開発を短期かつ安価に促すことになり、国際的な新薬開発競争が激化する昨今、極めて有用であると思われる。この試験法にはもちろんin vitro毒性試験も該当する。市場から撤退を余儀なくされる医薬品のほとんどが動物実験では検出できなかったものや、個人差の大きい副作用によるものであることもあり、ヒト細胞を用いた探索毒性試験に掛ける期待は大きい。 これら試験は探索毒性試験法であることもあり、行政的な公定化はもちろん不要であり、JaCVAM(日本動物実験代替法評価センター)の出番はない。しかし、新規に開発された技術やキットを利用する場合は、専門家による第三者評価が十分になされていないこともあり、科学的妥当性はあるのか、偽陽性の判断で有用な候補物質を見殺しにすることはないのか、偽陰性の判断で余分な追加実験を科すことにならなかいという利用者の不安を払拭できないことも確かである。このような試験法を導入する場合、学会や業界などにおける有志の協力を得て、共同研究を行うことにより、試験法の意義やプロトコルを見直すことが無難である。これにより、試験法が揉まれ、より有用性の高い試験法に磨かれていくと感じている。 このような試験法の開発に、協力者を呼び掛け、少ないながらも金銭的な支援をする、バリデーションのノウハウを用いて技術的な協力をすることも、国立医薬品食品衛生研究所にある新規試験法評価室の使命でもあると考えている。