著者
丹羽 靭負 飯沢 理 赤松 浩彦
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.103, no.2, 1993

最近のアトピー性皮膚炎(atopic dermatitis,AD)は以前と比べ成人の重症型が増加して来ているが,今回,過去2年間の197例の重症・難治型のAD患者について統計的観察を行い患者の種々の血清脂質値や活性酵素と生体内の脂質が反応して生成される過酸化脂質を測定し,更に生体の主たる活性酸素消去酵素であるsuperoxide dismutase(SOD)誘導能を測定した.結果は,入院患者の83%が13~30歳の年齢層に集中し,更にその90%以上が大都市在住の患者であり,皮疹の形態は,肥厚・苔癬化が強く,結節性年疹を全身に合併したものが多く,また,5%の白内障の合併が認められ,全例が治療に抵抗した重症型であった.検査結果は,成人AD患者では低比重のリポ蛋白(VLDL,カイロミクロン)が健康対照群に比して高く,また過酸化脂質値が増悪期に上昇し,一方患者白血球のSOD誘導能の低下が(軽快期,増悪期を通して)証明された.以上より,AD患者は体質的に細胞障害性の脂質が多く存在し,そこへ最近の環境汚染の増悪により,放射能,農薬,殺虫剤,化学薬品などが体内で活性酸素を増産させ,この活性酸素が,脂質と結合して過酸化脂質を形成する反応を,AD患者のSOD誘導能の体質的低値が一層促進させ,その結果,体内で組織障害性の過酸化脂質を増産させ,ADの病態の変化やその増悪をもたらしているものと推察された.

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