- 著者
-
佐藤 晃彦
小泉 勝
- 出版者
- 日本膵臓学会
- 雑誌
- 膵臓 (ISSN:09130071)
- 巻号頁・発行日
- vol.29, no.4, pp.736-741, 2014
症例は99歳,女性.2010年11月中旬,心窩部痛,吐気・嘔吐のため当科を受診した.血清アミラーゼ1,553IU/<i>l</i>と高値.CT所見と併せ,急性膵炎と診断した.膵体尾部実質造影不良と腎下極以遠までの広範な炎症波及を認め,厚労省重症度判定基準 造影CT Grade 3の重症膵炎と判定した.日本酒2~3合,毎日,35年間の飲酒歴があり,成因はアルコール性と考えられた.心不全が増悪して一時重篤な状態に陥ったが,徐々に病態が改善し,最終的には,膵炎に伴う重篤な後遺症を残すことなく第137病日に退院した(退院時年齢100歳).我が国において飲酒習慣を有する高齢女性は少なく,高齢女性のアルコール性膵炎は稀である.本例は,超高齢女性に発症したアルコールが成因と考えられる重症急性膵炎であり,極めて稀な症例と考えられた.高齢者の急性膵炎では,重症化,既往合併症の増悪や廃用症候群の続発に特に留意が必要である.<br>