著者
平澤 敦
出版者
The Japanese Society of Insurance Science
雑誌
保険学雑誌 (ISSN:03872939)
巻号頁・発行日
vol.2013, no.620, pp.620_321-620_340, 2013

海賊は,有史以来存在する海上危険である。しかし,時代の趨勢と共に海賊および海賊行為は変容し,今日の海賊は単なる武装強盗集団ではなく,ソマリア沖の海賊のようなハイテク武装集団も多く存在し,その目的も乗組員や旅客への襲撃や殺害,船舶や積荷の強奪といった往時の海賊の姿とは異なり,旅客等を人質に多額の身代金を要求する頭脳犯的な側面を持つものまで登場している。海賊の問題は,海上保険における海賊危険の取り扱いにも多大な影響を及ぼしているが,海賊および海賊行為に関する確固たる統一的な定義はなく,その扱いについては,国際法や海上保険法においてそれぞれ異なっているのが現状である。本稿では,主に国際法や海上保険法における海賊および海賊行為の定義について検討し,海賊類似の危険と線引きが困難な問題や国際法上の定義が海上保険の領域では妥当性を欠くことを考察した。

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