著者
森川 明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Ed0816, 2012

【はじめに、目的】 平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震及び津波において、東北地方に甚大な被害がでた。日本理学療法士協会からは宮城県を皮切りに東北各地域の被害者に対するボランティア派遣を行い、岩手では同年4月19日から活動が開始した。同年9月31日をもって日本理学療法士協会からのボランティア派遣は終了し、東北地方各県理学療法士会からのボランティア派遣が実施されている。今回、私自身が日本理学療法士協会派遣のボランティアとして、4月26日から5月2日に岩手県陸前高田市で、宮城県士会派遣のボランティアとして、10月31日から11月4日に宮城県石巻市で行った災害支援活動について報告する。【方法】【活動内容】 4月26日からの岩手県陸前高田市でのボランティア活動は被災後50日前後であり、瓦礫の撤去も全くと言っていいほど進んでおらず、避難所生活する方が多く存在した。4月19日からボランティア派遣が開始されたが、それ以前にも岩手県理学療法士会による活動があった。避難所にある保健師ボランティアチームの活動に参加し、巡回保健師の情報を頼りに、被災住民が生活不活発に陥り活動性低下することを事前に予防するための支援をした。具体的には避難所や住宅訪問し、啓発活動を中心に、必要物品の給付、運動指導などを行った。様々な団体の活動も活発で、連携を視野に入れての情報整理等も行い、必要に応じてデイサービスや医療への移行を提案した。10月31日からの宮城県石巻市でのボランティア活動は被災後7ヶ月以上経過した時期でもあり、避難所はなくなり、仮設住居がいたる所に建っていた。被災当初は避難所での介入など早期の活動は出来る状況にはなかったため、情報収集と福祉的避難所に限定した活動になっていたとのことだった。7月1日に宮城県理学療法士会に支援要請があった地域包括支援センターを拠点として、ケアマネージャー、社会福祉士からの依頼により、生活不活発に陥っている被災住民に対しての個別相談対応を行った。具体的には、仮設住宅を中心に訪問し、運動・動作指導や介護方法の検討を行い、デイサービスなどへの移行を提案した。仮設住宅からは商業施設が遠いなどの不便があり、敷地内は舗装された地面ではなく不安定な足場で、ベンチなどの足を休める場所もなく、仮設住宅に移転してから活動量が低下した住民もいた。すでに生活不活発に陥り、下腿浮腫の増悪や、筋力低下をはじめとする運動器機能低下を呈している住民に対して、リラクセーション、関節可動域運動や筋力増強運動のセルフエクササイズを模倣させるなどでの指導し、運動機能維持に努めるよう促し、仮設住宅内や周囲屋外の安全かつ安楽な歩行指導を行った。【倫理的配慮、説明と同意】 個人を特定できる内容は述べず、各地域関係者に報告の旨を伝え同意を得た。【結果】【考察】 災害後の支援内容や経過が、被災後の支援開始時期や地域性により違うことがわかった。被災直後で早期に支援活動が開始されると予防的な活動に重点を置くことができ、その後も個別での対応から仮設住宅でのコミュニティーづくりに参加するなどの集団的な対応についても早期に対応出来ていたとのことだった。被災後、長期期間が経過しているとすでに生活不活発による障害が発生しており、集団対応や啓発活動では対応できない状況となっており、個別に定期的な介入が必要にならざる得ないことを感じた。被災した後も、避難所から仮設住宅への移転など、その都度、周辺環境や住民との関係を築いていくことは高齢者や障害者でなくとも難しいことであり、出来るだけ早期に介入し引き籠りなどで不活発にならないように努めることが必要であると感じた。また、被災をきっかけに大規模な巡回調査が行われ、被災前から介護やリハビリテーションが必要である対象者が新たに現れ、地域の訪問サービスなどでは対応ができず、現場での更なる混乱を招いていたように思う。また、ボランティア活動終了後の対応を引き継ぐ委託先がはっきりと決定していなければ、状況が停滞していると感じた。地域の病院や保健師、介護保険サービスなどとの積極的な連携が既になされている地域においては、他職種により早い対応が出来ており、その後の活動経過もより早く発展的なものとなっていた様子で、地域と連携などの重要性を再認識した。【理学療法学研究としての意義】 災害支援における理学療法士の働きはまだまだ手探りの状況である。具体的な活動内容を報告することで今後の災害場面での理学療法士の活動に繋げていけるものと思われる。

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