著者
山田 月男
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Gb1448, 2012

【はじめに】 平成19年、日本整形外科学会はロコモティブシンドローム(運動器症候群、以下、ロコモとする)を提唱した。ロコモは高齢世代のみではなく、その予備軍(中高年世代)の問題でもあると進言されている。その予備軍に対する予防も重要な因子であると考える。しかし、その予防に対する施策・具体的方法は未だ不十分と考える。ただし、予防を提供する側のみならず提供を受ける側の意識も重要な因子と考える。アンケートによりその予防に対する意識を実際の有病者に確認した。8割の患者が予防に関する意識があったが2割の患者は意識が低かった。また世代間で予防に関する認識の違いがわずかながらも存在すると考えられた。今回の調査から見られた予防に対する世代間の特徴を述べ、若干の知見と見解を踏まえ報告する。【方法】 対象は運動器疾患の確定診断を受け本院リハビリテーション科通院中で本題について了解を得た外来患者27名(男性10名、女性17名、43歳から85歳、平均年齢65.6歳)。方法はアンケートによる質問紙法とした。アンケート内容は、1、予防リハ(仮称)を受ける機会があれば受けるか受けないか、2、受ける理由、受けない理由を可能な限り具体的に明記する、3、予防リハとして希望する内容を提示し複数回答可として選択(筋力・可動域・骨密度などの測定計測、予防体操・運動方法の説明・提示、予防に有効な食事・副用薬の説明等とした。【説明と同意】 アンケート実施前に書面にて実施することを告知した。各患者に質問紙を提示し説明、協力を依頼、また学会等で報告することに承諾を得た上で実施した。【結果】 アンケートに承諾を得て実施できた27名中、予防リハを受けると回答したのは22名(81%)、受けないと回答したのは5名(19%)であった。予防リハを受けると回答した40歳から50歳代の内容を提示する。「年齢と共に衰えを実感する場面が少なくないので時間が取れれば受けてみたい」、「悪い股関節の負担を減らすために他の部位を強化、ケアしてできるだけ人工股関節になる日を遅らせたい」、「予防になるなら受けたほうがよい」、「症状がひどくなる前のリハビリなので悪化前に良くできるのであれば受ける」という内容であった。同様に予防リハを受けると回答した60歳~80歳代の内容を提示する。「悪くならないように」、「理由は特にありませんが心配が少しでもなくなるのであればという程度です」、「アンチエイジングの一つとして」、「ひどくなると困るから」等の内容であった。予防リハを受けないと回答した内容は「必要にせまられないとリハビリを受けようとする意欲がわかないと思う」、「自分の知識の範囲内でやってみます」、「事前に病気の種類により予防を行うときは受けることもある」、等であった。【考察】 予防リハを受けない具体的な回答から理学療法が予防としての役割、認識が不十分であると患者側にも印象として持たれていることが示唆された。中高年世代の予防に対する意識はポジティブな意見と考える。この世代は自身の体に対して衰えやケア、また悪化させないなどの問題・項目などを自ら真剣に考える意識があると伺えた。これを「予防に対する能動的な意識」と解釈したい。高齢と呼ばれる世代は予防に対する意識はネガティブな要素が強いと考える。転倒や寝たきりなど将来的な問題の因子を発生させる運動器疾患の予防ということに真剣に考える世代と思われたがあまり真剣に意識していないことも伺えた。このように予防に対する意識の低い状態、また受身的な場合は「予防に対する受動的な意識」と解釈したい。この場合、予防を積極的に意識せず実行することも消極的と考える。【理学療法学研究としての意義】 理学療法分野が今後、予防分野に本格参入する場合、「その対象者を把握する」という意味では、本報告が若干の参考資料となると考える。

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