著者
森尾 友宏
出版者
The Japan Society for Clinical Immunology
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.267-267, 2014

原発性免疫不全症は,自然免疫系あるいは獲得免疫系に関与する分子の異常により発症する免疫異常症でその多くは遺伝疾患である.今までに250以上の責任遺伝子が同定され,9つのカテゴリーに分類されている.免疫不全症ではいわゆる易感染性の他に,自己免疫疾患や悪性腫瘍を合併するもの,自己免疫や炎症を主体とするもの,特定の微生物に脆弱性を示すもの,など多彩な疾患群が含まれ,その解析から様々な疾患の分子基盤が明らかになることが期待されている.<br>  近年は,遺伝子解析技術の進歩と低価格化,基盤遺伝情報の充実などから,毎年10前後の新しい責任遺伝子が明らかになっている.特に両親や同胞を含めた全エキソン解析からはPGM3,TWEAK,MALT1などの異常による新しい免疫不全症が次々と報告されている.さらに今まで知られていた表現型と異なる既知遺伝子異常症(例えばEBVリンパ増殖症候群を呈するCORO1A異常症)なども報告されている.また体細胞モザイクの高精度検出により,モザイクによる自己炎症性疾患なども容易に同定されるようになっている.<br>  一方,複数以上の責任遺伝子変異が検出されたり,機能未知の遺伝子変異が捕まったりすることも稀ではなく,遺伝子解析から機能解析,機能検証につなげる方策について工夫・技術革新が必要である.ここでは私たちの実際の解析データを示しながら,原発性免疫不全症の遺伝子解析・遺伝子探索の現況と将来像について議論を進めたい.

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