著者
今井 浩三 山下 健太郎 林 敏昭 村上 理絵子 高橋 裕樹 杉山 敏郎 千葉 進 谷内 昭
出版者
The Japan Society for Clinical Immunology
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, pp.324-328, 1993-08-31 (Released:2009-01-22)
参考文献数
10

31歳女性.数年の経過で全身倦怠感があり,自宅で臥床していたが,全身倦怠感,関節痛,頭痛および眼瞼下垂を主訴として,精査を求めて平成4年4月当科入院.諸検査より慢性疲労症候群(CFS),シェーグレン症候群ならびに重症筋無力症を疑われたが,アメリカCDCの診断基準に基づいてCFSと診断した.一方, CFSは他の慢性疾患が除外されなければ診断できないため,鑑別診断を試みた.シェーグレン症候群に関しては唾液分泌能試験およびSchirmer試験陽性であり,疑い例とされたが,自己抗体を含めて他の検査は陰性であった.重症筋無力症については眼瞼下垂,外眼筋麻痺が認められ,またテンシロンテスト陽性と判断されたが,誘発筋電図,抗AChR抗体は陰性で確定診断に至らなかった. CFSは注目すべき疾患と思われるが,本症例のようにいくつかの自己免疫疾患と鑑別が困難な場合もあると思われ,その点で興味がもたれたので報告した.
著者
横田 俊平 黒岩 義之 西岡 久寿樹
出版者
The Japan Society for Clinical Immunology
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.288a-288a, 2015

ヒト・パピローマウイルス(HPV)は一般的な感染因子であり,子宮頸部基底細胞への感染は部分的には癌発症の契機になる.子宮頸癌を予防する目的でHPVワクチンが開発され(CervarixとGardasil),約340万人の若年女性に接種が行われた.しかし,HPVワクチン接種後より全身痛,頭痛,生理異常,病的だるさ・脱力・不随意運動,立ちくらみ・繰り返す便秘・下痢,光過敏・音過敏,集中力低下・計算力と書字力の低下・記憶障害などを呈する思春期女性が増加している.「HPVワクチン関連神経免疫異常症候群(HANS)」と仮称し,当科外来を受診した51例の臨床症状の把握とその体系化を行った.すべての症例は,HPVワクチン接種前は良好な健康状態・知的状態にあり,接種後,全例が一様に一連の症候の重層化,すなわち,疼痛性障害,不随意運動を含む運動器機能障害,感覚障害,生理異常,自律神経障害,高次脳機能障害と進展することを確認した.このように幅広いスペクトラムの疾患の記載はこれまでになく,これらの症候を同時に呈する中枢神経障害部位についての検討をすすめ,「視床下部 下垂体病変」と捉えられることが判明した.病態形成にはミクログリアが関わる自然免疫,HPVワクチン抗原のペプチドと特異なHLAが関わる適応免疫の両者が,強力なアジバントの刺激を受けて視床下部の炎症を繰り返し誘導していると考えている.治療にはramelteon(circadian rhythmの回復),memantine(シナプス伝達の改善),theophylin(phosphodiesterase inhibitorの抑制)を用い対症的には対応が可能となったが,病態に根本的に介入できる薬剤はいまだ手にしていない.
著者
石黒 精
出版者
The Japan Society for Clinical Immunology
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.1-11, 2000-02-29 (Released:2009-02-13)
参考文献数
52
被引用文献数
1
著者
小西 舞 小荒田 秀一 山口 健 田代 知子 副島 幸子 末松 梨絵 井上 久子 多田 芳史 大田 明英 長澤 浩平
出版者
The Japan Society for Clinical Immunology
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 = Japanese journal of clinical immunology (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.154-161, 2011-06-30
参考文献数
17
被引用文献数
1 12

症例は67歳女性.主訴は頭痛,四肢の小結節・紅斑.近医にて慢性腎不全・高脂血症を治療中であったが,インフルエンザワクチン接種を行った.接種2週間後,微熱,頭痛が出現し,CRP高値,MPO-ANCA陽性,腎機能障害,側頭部の圧痛,四肢の紅斑を指摘され,紹介受診となった.紅斑の組織像で動脈周囲に炎症細胞浸潤,フィブリノイド壊死を認め,側頭動脈の組織では炎症細胞浸潤と巨細胞を伴う血管炎を認めた.CTで両肺に多発する斑状影を認め,肺胞出血または間質性肺炎と考えられた.顕微鏡的多発血管炎(mPA)と側頭動脈炎(GCA)の合併と診断し,副腎ステロイドによる治療を開始した.CRP, MPO-ANCAの陰性化を認め,腎機能も改善した.その後,日和見感染症を併発し死亡され剖検がなされた.剖検では,半月対形成性糸球体病変が証明された.本例はインフルエンザ・ワクチン接種を契機として2つの血管炎が同時に発症しており,組織学的に巨細胞性血管炎と微小血管炎が証明された世界初の報告である.血管炎症候群に共通する発症機序を示唆する貴重な症例と考えられた.<br>
著者
内田 立身 国分 啓二 酒井 一吉 五十嵐 忠行 鈴木 照夫 樋口 利行 木村 秀夫 松田 信 刈米 重夫
出版者
The Japan Society for Clinical Immunology
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.7, no.3, pp.146-153, 1984-06-30 (Released:2009-01-22)
参考文献数
24

慢性関節リウマチの鉄代謝異常を,血清鉄,総鉄結合能,血清フェリチン,フェロキネティクス,網内系細胞内鉄代謝の面から検討した.対象42例中57.1%に貧血があり,そのうち63%が正色性, 24%が低色性, 13%が高色性であった.血清鉄は66%が低値をとり総鉄結合能は82%が正常または低値,血清フェリチン値は83%が正常または高値を示し,鉄欠乏性貧血のそれと異なっていた. 15例のフェロキネティクスでは, PID T〓の短縮, PIT, RITの低値があり,これらは血清鉄低値,骨髄赤芽球系細胞の低形成の所見に見合うものであつた.59Fe標識コンドロイチン硫酸鉄を用いた網内系細胞の鉄動態の検索では,投与4, 6時間目に網内系細胞より動員される鉄量が正常に比し少なく,網内系細胞よりの鉄の動員の障害,いわゆるRE iron blockがあることが示唆された.この動員の障害により,血清鉄低値をきたし,骨髄への鉄供給不足,これに伴う無効造血の存在が病態として観察された.他方,骨髄では,造血幹細胞レベル,赤芽球細胞レベルでの低形成があり,これがPIT, RITの低値と関係していると思われ,貧血の主たる成因であることが類推された.
著者
三宅 幸子
出版者
The Japan Society for Clinical Immunology
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.37, no.5, pp.398-402, 2014

腸管は最大の免疫組織でもあるが,常に食物の摂取などを通して外来抗原に接するうえに,100兆個にも達する腸内細菌と共存するなど独特な環境にある.近年,自然免疫研究の進歩に加え,シークエンス技術の進歩による培養によらない腸内細菌叢の網羅的遺伝子解析などが可能となり,常在細菌による免疫反応の調節に関する研究が進み,自己免疫との関係についても注目されている.無菌飼育下では多発性硬化症や関節リウマチの動物モデルは病態が軽減する.また抗生剤投与により腸内細菌を変化させると病態が変化する.特定の細菌の移入による自己免疫病態への影響については,Th17細胞を誘導するセグメント細菌を移入すると病態が悪化する一方,制御性T細胞の増殖に関与するBacteroidesやLactobacillusを移入すると病態が軽減する.これら動物モデルの解析では,腸内細菌が積極的に病態に影響することが示されている.ヒトの疾患では関節リウマチで解析がされており,特定の菌が関与する可能性も示唆されている.免疫調節に最適な腸内環境の維持が可能になれば,疾患治療のみならず予防にもつながることから,研究の進展が期待される.
著者
下垣 保恵 郡山 健治 田中 雅博 望月 裕司 豊田 嘉清 中井 直治 河野 厚
出版者
The Japan Society for Clinical Immunology
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 = Japanese journal of clinical immunology (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.33, no.6, pp.329-334, 2010-12-31
被引用文献数
1

50歳,女性.2003年9月に全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus ; SLE)を発症.抗Sm抗体陽性.右水腎症.プレドニゾロン(prednisolone ; PSL)40 mg/日で治療開始.大腿骨頭壊死(2B),ステロイド精神病合併.2005年5月PSL15 mg/日まで漸減中に尿蛋白再出現でシクロスポリン(CyA)併用開始.1年後,嘔吐を伴う激しい頭痛を繰り返したが画像診断上は異常を認めなかった.2007年2月タクロリムス(TAC)に変更,頭痛は消失したが,同年9月頃より左優位の巧緻性運動障害,振戦,小刻み歩行等を認めた.2009年6月ドーパミントランスポーターのイメージング(DAT)検査にてパーキンソン病(Parkinson's disease ; PD)確定診断.遺伝子解析で孤発性PDと判明.TAC中止によりParkinsonismは一部改善し,薬剤性が示唆された.TAC投与中のSLE患者に振戦を認めた場合,Parkinsonism誘発の可能性があるため減量や中止を考慮すべきである.<br>
著者
谷川 真理 東 賢一 宇野 賀津子 東 実千代 萬羽 郁子 高野 裕久 内山 巌雄 吉川 敏一
出版者
The Japan Society for Clinical Immunology
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.414a-414a, 2013
被引用文献数
1

【背景と目的】いわゆる化学物質過敏症(Multiple chemical sensitivity : MCS)は現代の環境がひきおこした後天的疾患である.日常的にさまざまな化学物資に曝されることに反応して神経系,免疫系,内分泌系をはじめ全身の多様な症状が起こり,通常の社会生活にも支障をきたすようになる.しかしその病態の詳細は解明されておらずMCS有訴者は診断を受けることも困難な状況に置かれている.MCSの病態解明を目的として免疫学的機能検査を実施し解析した.<br> 【方法】2009年10月以来百万遍クリニックのシックハウス外来に通院するいわゆる化学物質過敏症の有訴者(患者)の協力を得て,一般的な血液検査と多種の免疫機能検査を測定し解析した.<br> 【結果】18人のMCS有訴者と17人の健常成人の比較の結果,MCSではNK活性が統計学的有意に高かった.リンパ球サブセットではMCSではNKT細胞の割合が高く,CD3とCD4が低かった.多種のサイトカイン産生能の測定ではIL-2,IL-4,IL-13,GM-CSFが有意に低かった.<br> 【結論】MCS患者では自然免疫系が高めに保持されている一方,Th2型サイトカインが低い傾向で,アレルギーとは異なる病態と考えられる.<br>
著者
有森 茂 吉田 美代子 市村 香
出版者
The Japan Society for Clinical Immunology
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.80-86, 1990-02-28 (Released:2009-01-22)
参考文献数
13
被引用文献数
6 8

Ge-132, 1, 500mg per day, was administered to 47 y-o house wife who suffered from rheumatoid arthritis associated with Sjögren's syndrome and microcytic hypochromic anemia since 1983. Her clinical stage of rheumatoid arthritis was Stage II and class was 1. Polyarth-ralgia and joint swelling were getting worse even though she was administered both non-steroidal antiinflammatory drug and small dose of prednisolone. Treatment with Ge-132 brought her in a remission state of rheumatoid arthritis and MCV and MCH as well as Hb were improved within 5 months. Two-color flow cytometry of peripheral lymphocytes demonstrated an increase of lymphocyte, CD3-, CD21+ (B cell), CD3+, CD21- (T cell), CD4-, CD8+ (suppressor T cell), CD4+, CD8- (helper T cell), CD16+, DR- (NK cell) and all of double negative cells such as CD3-, CD21- cell, CD4-, C8- cell, and CD16-, DR-cell, parallel to clinical status.These data surely indicated that Ge-132 is effective to this patient.
著者
種市 幸二 芝木 秀俊
出版者
The Japan Society for Clinical Immunology
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.207-214, 1987-04-30 (Released:2009-01-22)
参考文献数
27
被引用文献数
1 2

著者らの経験した無菌性脳脊髄膜炎(AME)を合併したシェーグレン症候群(SjS)の5症例の臨床像の検討を行った.自験例は男性1例女性4例で,年齢は19歳~56歳(平均38.8歳)であった.成人スチル病の合併が1例のみ認められたが,その他はSjS単独であった.臨床所見としてはレイノー現象および関節炎を呈したものが5例中3例,尿細管性アシドーシスの合併は5例中2例に認めた. HLA抗原に共通するものはなかった. 5例中4例はsubclinical SjSであった.髄液所見は,細胞数は中程度の増加でリンパ球優位,タンパクは8回中5回増加,糖は5回中4回に低下が認められた. AMEは4例中2例が再発性であった.AMEがSjSの多臓器病変の1つとして位置づけられるかどうかを論じ, AMEを合併したSjSの症例の蓄積とその長期にわたる観察がAMEとSjSの関連を明らかにすることを強調した.
著者
石森 加奈 高桑 由希子 大慈彌 久絵 吉岡 拓也 前田 聡彦 大岡 正道 山田 秀裕 尾崎 承一
出版者
The Japan Society for Clinical Immunology
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.418a-418a, 2013

背景:従来Lupus腸炎と言われてきた中でLupus mesenteric vasculitis (LMV)は,悪化すると腹膜刺激症状を呈して腸壊死に至ることがある重篤な合併症である.腹部CTで腸管壁の全周性肥厚と腹水貯留を認めることで診断される.腸壊死に至る症例はSLE活動性と相関することが多く,治療はステロイドパルスとシクロスフォスファミド間歇静注療法を必要とする.今回,LMV様所見を合併した3症例を経験したので報告する.症例1:47歳女性.主訴は腹痛と嘔吐.腹膜刺激症状と,腹部CTで典型的なLMV様所見を呈し,ステロイドパルス,プレドニゾロン(PSL)50 mg/日とアザチオプリン併用にて寛解.症例2:40歳女性.主訴は軟便,腹痛,嘔吐.腹部CTで典型的なLMV様所見を呈し,PSL 50 mg/日にて寛解.症例3:39歳女性.主訴は腹痛と下痢.腹膜刺激症状と腹部CTで典型的なLMV様所見を呈し,ステロイドパルス,PSL 50 mg/日とタクロリムス併用にて寛解.3症例とも診断時にSLE disease activity index (SLEDAI)の上昇は認めなかった.結語:3症例ともLMVと矛盾しない所見を呈したが,PSL反応性良好であり,重篤な経過を辿らなかった.LMV様の所見を呈しても,SLEDAIが上昇していない症例では,比較的予後良好であることが示唆された.<br>
著者
長岡 章平 中村 満行 瀬沼 昭子 関口 章子
出版者
The Japan Society for Clinical Immunology
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 = Japanese journal of clinical immunology (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.28, no.6, pp.389-397, 2005-12-31
被引用文献数
1 3

1998年8月から2003年12月までの期間中当科において初めてMTXを開始した活動性RA460例(男80例,女380例,平均年齢59.3歳)についてカルテベースにて検討した.MTX投与24週後のACR20改善率61.3%,50%改善率30.4%であり,投与48週までの累積投与継続率は0.567であった.観察期間中260例(56.5%),304回に有害事象を認めた.有害事象のため投与中止した症例は52例,11.3%,死亡例は10例,2.2%であった.1%以上の内訳は,肝機能異常31.7%,感染症6.1%,消化器症状5.0%,口内炎3.9%,血球減少3.5%,骨折3.5%,悪性腫瘍2.6%,間質性肺炎2.0%,脳あるいは心血管障害2.0%,頭痛1.7%,皮疹1.3%,脱毛1.1%であった.有害事象例は高齢者,高Stageに多かった.MTXの有用性が再評価されたが,慎重なモニタリングが大切であると思われた.<br>
著者
森尾 友宏
出版者
The Japan Society for Clinical Immunology
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.267-267, 2014

原発性免疫不全症は,自然免疫系あるいは獲得免疫系に関与する分子の異常により発症する免疫異常症でその多くは遺伝疾患である.今までに250以上の責任遺伝子が同定され,9つのカテゴリーに分類されている.免疫不全症ではいわゆる易感染性の他に,自己免疫疾患や悪性腫瘍を合併するもの,自己免疫や炎症を主体とするもの,特定の微生物に脆弱性を示すもの,など多彩な疾患群が含まれ,その解析から様々な疾患の分子基盤が明らかになることが期待されている.<br>  近年は,遺伝子解析技術の進歩と低価格化,基盤遺伝情報の充実などから,毎年10前後の新しい責任遺伝子が明らかになっている.特に両親や同胞を含めた全エキソン解析からはPGM3,TWEAK,MALT1などの異常による新しい免疫不全症が次々と報告されている.さらに今まで知られていた表現型と異なる既知遺伝子異常症(例えばEBVリンパ増殖症候群を呈するCORO1A異常症)なども報告されている.また体細胞モザイクの高精度検出により,モザイクによる自己炎症性疾患なども容易に同定されるようになっている.<br>  一方,複数以上の責任遺伝子変異が検出されたり,機能未知の遺伝子変異が捕まったりすることも稀ではなく,遺伝子解析から機能解析,機能検証につなげる方策について工夫・技術革新が必要である.ここでは私たちの実際の解析データを示しながら,原発性免疫不全症の遺伝子解析・遺伝子探索の現況と将来像について議論を進めたい.
著者
張 蘇平 平野 隆雄 村島 直哉 廣瀬 俊一 北川 龍一 奥村 康
出版者
The Japan Society for Clinical Immunology
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.300-306, 1991-06-30 (Released:2009-01-22)
参考文献数
10

肝硬変症患者血清中の免疫複合体(IC),とくにC3ネオアンチゲンに結合するC3b結合免疫複合体(C 3b-IC)とiC 3b/C 3dg結合免疫複合体(iC 3b/C 3dg-IC)の産生,およびそのクリアランスに重要な役割を担っている補体リセプター(CR 1), factor Iおよびfactor Hの動態について検討した.肝硬変症患者血漿中において,高率にC 3b-ICが検出されたがiC 3b/C 3dg-lcは正常人,慢性肝炎患者との間に有意な差は認めなかった.また,肝硬変患者において,補体リセプター(CR 1)と血漿factor Hは高値を示したが, factor I値はコントロール群と比較して低値を示した(p<0.01).このことは,肝硬変患者において免疫複合体(IC)の異常産生,そのクリアランスに重要な補体C3カスケードのメカニズムの異常の存在が推測された.すなわち, factor I値の低値による機能不全のためC 3b〓C 3dgへの変換が障害され,それを補うためCR 1, factor Hの産生充進として働いていることが推察される.このように肝硬変患者におけるC3カスケードの異常評価の検討をすすめることは,肝障害時における補体系動態の解析に重要であることが示唆された.
著者
鈴木 貴博 近藤 啓文 柏崎 禎夫
出版者
The Japan Society for Clinical Immunology
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.184-191, 1989-04-30 (Released:2009-01-22)
参考文献数
16
被引用文献数
3 3

膠原病としてRA 82例, PM-DM 35例, PSS 31例の合計148例,およびウイルスなどの感染症36例を対象とし,抗中間径フィラメント抗体として抗ビメンチン抗体と抗サイトケラチン抗体の各々を, western blotting法で測定することを試みた.前者の検出率は, RAでは24例29%, PM-DMでは19例54%, PSSでは12例39%,後者の検出率は, RAでは25例30%, PM-DMでは16例46%, PSSでは14例45%で,間接螢光抗体法による検出率と比較し高かった. 36例の感染症ではそれぞれ21例58%, 8例22%に検出された.免疫グロブリンクラスは両疾患ともIgG優位であった.本抗体陽性膠原病の臨床像を検討したところ,抗ビメンチン抗体単独陽性RAおよびPSSでは,肺線維症がそれぞれ50%, 83%と有意に高率に認められた.本抗体が膠原病およびウイルス,マイコプラズマ感染症の両者で検出され,正常人で認められなかったことは,膠原病と感染症との間に何らかの関連が存在するものと考えられた.
著者
渡辺 浩 落合 浩暢 児玉 栄一 鈴木 修三 武田 功 渡部 則也 小野 重明 海瀬 俊治 西間木 友衛 粕川 禮司
出版者
The Japan Society for Clinical Immunology
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.385-390, 1992-08-31 (Released:2009-01-22)
参考文献数
22

症例は37歳の女性. 1986年11月日光過敏,蝶形紅斑,抗核抗体陽性,抗DNA抗体陽性から全身面エリテマトーデスと診断され, prednisolone投与を受けた。1989年10月から両下肢脱力感出現し精査加療目的に同年12月当科入院した.抗核抗体2,560倍,抗cardiolipin抗体陽性で,頭部CT上多発性脳梗塞が認められ, PSL 40mg/日の投与を開始した.症状改善傾向にあるも患者は服薬を中止し, 1990年4月退院した.同年5月,両下肢の対麻痺,胸椎11番以下の全知覚障害と膀胱直腸障害が出現し再入院した. aCLは高力価であり,抗リン脂質抗体が強く関与した横断性脊髄障害を合併したものと考え,血漿交換療法,副腎皮質ステロイド剤パルス療法,大量γ-globulin療法,免疫抑制剤投与を行い, aCL価は低下したが,神経症状はほとんど改善しなかった.早期の治療が横断性脊髄障害の諸症状の改善に重要である.
著者
長沢 浩平 山内 保生 横田 英介 仁保 喜之
出版者
The Japan Society for Clinical Immunology
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.246-252, 1990-06-30 (Released:2009-01-22)
参考文献数
18

結核菌は宿主の免疫系に何らかの影響を及ぼしうることが知られている.そこで全身性自己免疫疾患の代表である全身性エリテマトーデス(SLE)の病態が,結核の罹患によって変化するか否かを検討した.昭和54年より同63年までの10年間に当科に入院したSLE患者213名のうち結核に罹患したのは5名(2.2%)であった.このうち3名は結核罹患により, SLEの病態に大きな変化はみられなかった(2名:不変, 1名:軽度悪化).これに対し,比較的重症の粟粒結核に罹患した2名のSLE患者では,結核発症3~6ヵ月の間に尿蛋白およびRA-Tの陰性化,抗核抗体および抗DNA抗体価の低下など明らかなSLEの改善がみられた.このSLEの軽快はSLEに対する治療や自然経過によるものではなく,結核罹患による影響と考えられた.このように,重症で全身に結核菌が播種されるような粟粒結核では, SLEの病態が改善することもありうることが示唆された.
著者
赤澤 晃 勝沼 俊雄 飯倉 洋治
出版者
The Japan Society for Clinical Immunology
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.11, no.4, pp.322-328, 1988-08-31 (Released:2009-01-22)
参考文献数
10

トランスファー・ファクターの抗原特異的細胞性免疫能の転嫁作用と非特異的免疫賦活作用については多くの臨床報告があり,その有効性が認められている.その中で,気管支喘息やアトピー性皮膚炎などのアレルギー性疾患にも有効例があることがわかってきた.今回われわれは,食餌アレルギーの関与する小児アトピー性皮膚炎児9名と反復性難治性口内炎患児2名に経口的にトランスファー・ファクターを投与したところ,アトピー性皮膚炎例では皮膚症状の著明な改善,特異的IgG抗体の低下,血清IgG, IgAグロブリンの増加と血清IgE-RISTの低下がみられた.反復性口内炎例では,投与開始後臨床症状の速やかな改善が認められた.厳密な対照をおいた検討成績ではないので確言はできないが,このことからトランスファー・ファクターが腸管リンパ組織系や口腔粘膜の炎症部位に直接作用する可能性を示唆するものと考えられた.