著者
朴 沙羅
出版者
The Japan Sociological Society
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.275-293, 2013

近年, 敗戦直後の連合軍占領期 (1945年9月から52年4月) における人口移動が解明されるにつれて, 在日コリアンの一部が太平洋戦争後に日本へ移住してきたことも次第に明らかにされてきた. その移動は通常, 「密航」や「不法入国」と呼ばれ, 管理され阻止される対象となった. しかし, 「密航」という言葉のあからさまな「違法性」のためか, 「密航」を定義する法律がどのように執行されるようになったかは, 未だ問題にされていない.<br>本稿が問題とするのはこの点である. 出入国管理法が存在せず, 朝鮮半島からの「密航者」や日本国内の「朝鮮人」の国籍が不透明だった時期に, なぜ彼らの日本入国を「不法」と呼び得たのか. 「密航」はどのように問題化され「密航者」がどのように発見されていったのか. これらを探究することは, 誰かが「違法」な「外国人」だとカテゴリー化される過程を明らかにし, 「密航」をめぐる政治・制度・相互行為のそれぞれにおいて, 「合法」と「違法」, 「日本人」と「外国人」の境界が引かれていく過程を明らかにすることでもある.<br>したがって, 本稿は, 朝鮮人の「密航」を「不法入国」と定義した法律, その法律を必要とした政治的状況, その法律が運用された相互行為場面のそれぞれに分析の焦点を当て, それによって, 植民地放棄の過程において「日本人」と「外国人」の境界がどのように定義されたかを明らかにしようと試みる.

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