- 著者
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吉森 賢
- 出版者
- 公益財団法人 医療科学研究所
- 雑誌
- 医療と社会 (ISSN:09169202)
- 巻号頁・発行日
- vol.12, no.2, pp.21-48, 2002
- 被引用文献数
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本稿はまず第一次世界大戦以前のドイツ医薬品産業の劇的な発展と長期間にわたり世界の模範となった先駆的医療保障および社会保障制度を概観する。ドイツ医薬品産業の革新能力の中心的要因は化学の学問水準を高めた工科大学の創設と,染料の派生物質である薬剤開発において見られた企業と大学間の密接な研究協力関係にあった。<BR>第一次世界大戦後,ドイツ製薬産業は相対的に衰退する。その原因は大戦によりドイツ製薬企業の特許,バイエルのアスピリンなどの世界的商標やメルクなどの社名がすべての在米資産と共にアメリカ政府により没収されたからである。<BR>次いで産業構造,市場規模および構造,貿易,雇用,世界における地位,企業集中度,競争状況,価格構成,特許,医療機関などについて概観する。また最近における主要な医療制度改革について紹介する。<BR>最後にドイツの代表的製薬企業5社,アベンティス・ファーマ,バイエル,シェーリング,ベーリンガー・インゲルハイムを取り上げ,それぞれの概況,歴史,市場地位,所有構造,戦略および研究開発について比較考察した。結論として以上が日本の製薬産業へ与える示唆を提示した。