著者
吉森 賢
出版者
公益財団法人 医療科学研究所
雑誌
医療と社会 (ISSN:09169202)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.121-135, 2011-07-28 (Released:2011-08-04)
参考文献数
27
被引用文献数
1 1

本研究はドイツの医療関連の同族大企業二社メルク株式合資会社とフレゼニウスSE社の企業統治制度を明らかにすることを目的とする。ドイツの企業統治の背景として日本と比較して,同族大企業が多い。この所有構造の原因と結果は同族企業に適した会社の多様な法的形態の選択可能性にある。両社に共通する企業統治の目的は企業の独立性永続化と外部資金調達手段の確保である。メルク社は株式合資会社の採用により無限責任出資者としての経営権を確保しつつ市場から資金を調達する。フレゼニウス社は公益財団を持株会社として利用しつつ,これが二次持株会社を支配し,これがさらに事業会社を支配するピラミッド方式により企業集団の独立性を確保する。資金調達は資本金の50%の無議決権優先株発行によりなされると同時に敵対的買収から防衛される。2010年12月時点でフレゼニウス社は法的形態を現行のFresenius SEを無限責任出資者とする株式合資会社SE&Co.KGaAに変更中である。この新組織を説明した。これにより公益財団の独立性は向上すると期待される。また発行済の無議決権優先株を議決権付き普通株に転換中であり,株主による監督機能が向上する。両社の企業統治を評価し,日本の医療関連企業への示唆を提示する。
著者
吉森 賢
出版者
横浜経営学会
雑誌
横浜経営研究 (ISSN:03891712)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.23(549)-40(566), 2013-03
著者
吉森 賢
出版者
公益財団法人 医療科学研究所
雑誌
医療と社会 (ISSN:09169202)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.21-48, 2002
被引用文献数
1

本稿はまず第一次世界大戦以前のドイツ医薬品産業の劇的な発展と長期間にわたり世界の模範となった先駆的医療保障および社会保障制度を概観する。ドイツ医薬品産業の革新能力の中心的要因は化学の学問水準を高めた工科大学の創設と,染料の派生物質である薬剤開発において見られた企業と大学間の密接な研究協力関係にあった。<BR>第一次世界大戦後,ドイツ製薬産業は相対的に衰退する。その原因は大戦によりドイツ製薬企業の特許,バイエルのアスピリンなどの世界的商標やメルクなどの社名がすべての在米資産と共にアメリカ政府により没収されたからである。<BR>次いで産業構造,市場規模および構造,貿易,雇用,世界における地位,企業集中度,競争状況,価格構成,特許,医療機関などについて概観する。また最近における主要な医療制度改革について紹介する。<BR>最後にドイツの代表的製薬企業5社,アベンティス・ファーマ,バイエル,シェーリング,ベーリンガー・インゲルハイムを取り上げ,それぞれの概況,歴史,市場地位,所有構造,戦略および研究開発について比較考察した。結論として以上が日本の製薬産業へ与える示唆を提示した。