著者
川久保 嘉昭 竹井 謙之 泉 光輔 山科 俊平 今 一義 榎本 信行 鈴木 聡子 池嶋 健一 大久保 裕直 佐藤 信紘
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.73-81, 2007

目的: 肝星細胞は肝障害が継続すると筋線維芽細胞様細胞に形質転換し, コラーゲンをはじめ, 細胞外マトリクスを過剰産生し, 肝線維化機序の中心的な役割を果たす. このため, 活性化した星細胞に細胞死を誘導することができれば, 肝線維化抑制につながると期待される. グリオトキシンは活性化した星細胞にアポトーシスを引き起こすことが知られているが, その分子機序は明らかではない. 一方, inverse genomicsの手法は, ランダムな切断配列をもつリボザイムライブラリーを導入し, 細胞の表現型・性質を変化させる刺激を与えた際, 変化が起こらなかった細胞からリボザイムを単離し, その塩基配列を知ることで表現型変化に関わる機能遺伝子を同定することが可能である. われわれはこの手法を用いてグリオトキシンによる星細胞のアポトーシスに関わる遺伝子の探索を行った.対象・方法: 株化星細胞であるHSC-T6にリボザイムライブラリーを搭載したプラスミドをトランスフェクションし, 48時間後にグリオトキシン (1.5μM) を培養液に添加して24時間培養後, 生存細胞からプラスミドを回収した. このグリオトキシンによるセレクションを3回繰り返した後にリボザイムを単離してシークエンス解析を行い, その配列情報をもとにアポトーシス関連遺伝子の検索をデータベース上にて行った.結果: われわれは20の星細胞アポトーシスに関わる候補遺伝子の配列を得た. その中の1配列は, カスパーゼ7に相補性を有していた. 同配列を持つリボザイムをHSC-T6に導入したところ細胞はグリオトキシンによるアポトーシスの誘導に抵抗性を示した.結論: 以上の結果によりグリオトキシンによるアポトーシスの誘導にはカスパーゼ7が関与していることが示唆された. またinverse genomicsによるアプローチは, 肝星細胞のアポトーシスに関わる機能遺伝子の探索に有用であることが示唆された.

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