- 著者
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澤田 幸展
- 出版者
- Japanese Society for Physiological Psychology and Psychophysiology
- 雑誌
- 生理心理学と精神生理学
- 巻号頁・発行日
- vol.14, no.2, pp.77-88, 1996
- 被引用文献数
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5
さまざまなストレス刺激や情動体験とかかわって, 心臓活動に対する迷走性の寄与を特別に扱った研究は, 相対的に少ない.本評論は, 心臓迷走活動をホメオスターシスやストレス, あるいは, 情動の生理的指標と見なす, Porgesの一連の最新論文に示唆を受けながら, 以下の三つの点について, よりいっそう明確な像を描こうと試みた.すなわち, 心臓迷走活動に関する, (a) 神経解剖学的および生理学的機序, (b) 推定技法, および, (c) 心理生理学的知見, についてである.とくに迷走および関連する系における随意的かつ社会的な側面 [(a)], 圧反射感度の呼吸性洞性不整脈に対する優位性 [(b)], 並びに, 悪性ストレスにおける圧反射感度の抑制 [(c)], といったことが強調された.かくして, 本評論では, ストレスおよび情動研究の必須部分として, 心臓迷走活動を考慮することの重要性が指摘された.