著者
林 光緒 堀 忠雄
出版者
Japanese Society for Physiological Psychology and Psychophysiology
雑誌
生理心理学と精神生理学 (ISSN:02892405)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.45-59, 2007
被引用文献数
7

眠気は, 午後に頻繁にみられる現象であり, これがいわゆるパフォーマンスにおける「昼食後の低下」を招いている。近年, 30分以下の短時間仮眠が日中の覚醒水準の維持にポジティブな効果を持つことが明らかにされてきた。これらの仮眠は徐波睡眠を含まないため, 起床直後の睡眠慣性は少ない。カフェインや高照度光, 音楽や洗顔, 自己覚醒法は, 睡眠慣性を低減するとともに, 短時間時間仮眠の効果を高めることが指摘されている。
著者
山本 哲朗 林 光緒
出版者
Japanese Society for Physiological Psychology and Psychophysiology
雑誌
生理心理学と精神生理学 (ISSN:02892405)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.249-256, 2006
被引用文献数
3

午後の眠気の抑制には短時間仮眠が有効であることが報告されている。しかし, 短時間仮眠が運動パフォーマンスを向上させるかどうかについては検討されていない。そこで本研究は, 短時間仮眠が運動パフォーマンスに及ぼす効果を検討した。運動部に所属する男子大学生10名が実験に参加した。彼らは14 : 00に仮眠をとるか (仮眠条件), 15分間新聞を読んだ (仮眠なし条件) 。仮眠条件では, 睡眠段階2が3分間出現した時点で起こした。15 : 00より自転車エルゴメータで, 参加者の限界に至るまで運動を続けた。その結果, 運動継続時間は仮眠条件の方が27秒長かった (<I>p</I><.05) 。運動中の心拍数に差はみられなかったが, 仮眠条件の方が, 主観的運動強度, 眠気が有意に低く, 活気も有意に高かった (<I>ps</I><.05) 。これらの結果は, 短時間仮眠が午後の運動パフォーマンスを改善させる効果があることを示唆している。
著者
三木 盛登 入戸野 宏
出版者
Japanese Society for Physiological Psychology and Psychophysiology
雑誌
生理心理学と精神生理学 (ISSN:02892405)
巻号頁・発行日
2014

視聴者が動画に注意を向けるほど,動画とは無関係なプローブ刺激に対する事象関連電位のP3 (P300) 成分の振幅が減衰する。本研究では,短い動画に対する主観的興味と脳波測度との相関を求めることにより,この知見を追試・拡張した。15名の大学生・大学院生が映画の予告編12本 (<i>M</i> = 143 s) を視聴した。視聴中に,痛みのない電気プローブ刺激 (0.2 ms) を左手中指に5--7 s間隔で提示し,左手親指によるボタン押し反応を求めた。それぞれの予告編について印象評定を行った。6項目 (興味ある,注意を引く,好き,快,目が覚めた,本編が見たい) のヴィジュアルアナログスケールの合成得点を"興味"得点として使用した。ステップワイズ回帰分析により,プローブ誘発P3振幅 (β = -.20) と刺激が提示されない区間の後頭部アルファ帯域パワー (β = -.29) はどちらも興味得点を説明することが分かった。本研究により,単一電気プローブ刺激法が視聴者の興味を客観的に測る実験プロトコルとして有望であることが示された。
著者
小川 時洋 松田 いづみ 常岡 充子
出版者
Japanese Society for Physiological Psychology and Psychophysiology
雑誌
生理心理学と精神生理学 (ISSN:02892405)
巻号頁・発行日
2015
被引用文献数
2

隠匿情報検査(CIT)時の生理反応の特徴は,この分野の研究トピックスであり続けている。本研究では,関連項目の数が1個の場合と複数ある場合とで,生理反応および自己報告された感情を比較した。実験参加者は,模擬窃盗でアクセサリーを1個ないし3個盗むことを求められた。また,色の名前を示すカードを3枚ないし1枚,ブラインドで選択するよう求められた。次に実験参加者は,盗んだアクセサリーもしくは選んだ色の名前を尋ねるCITを受けた。生理測度における関連-非関連項目の差異は,関連項目が3個の場合には,関連項目が1個の場合に比べて小さくなった。自己報告測度は,実験参加者が関連項目提示時に驚きや緊張を感じていたことを示した。しかしながら,質問中の関連項目の数は,自己報告尺度の感情には影響しなかった。これらの結果は,CITの項目を感情喚起刺激とするプロセスの存在を示唆する。
著者
広重 佳治
出版者
Japanese Society for Physiological Psychology and Psychophysiology
雑誌
生理心理学と精神生理学 (ISSN:02892405)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.217-225, 2012

本研究は軽度断眠(部分断眠)が睡眠のホメオスタシス調整を駆動するか否かを実験的に検証した。5名の参加者(19~25歳)は,4夜の自宅睡眠の観測後,睡眠実験室にて連続4夜の睡眠ポリグラフを受けた。就床時刻は第1夜,第2夜および第4夜を午後11時,第3夜を午前2時とした。起床時刻はいずれも午前7時であり,したがって第3夜は総就床時間が5 時間に制限された。レム睡眠関連の睡眠変数の点から実験夜をとおして第1夜効果(ストレス夜)の順応が見られたが,これと対照的に第3夜ではノンレム睡眠と脳波δ帯域パワが睡眠初期の3時間に有意に増えた。第3夜は眠気を除いて出眠後の睡眠感にも改善がみられた。本研究は不眠症改善に適用される睡眠制限療法にホメオスタシス調節が関与する可能性を支持する基本的証拠を提供するものと思われる。
著者
澤田 幸展
出版者
Japanese Society for Physiological Psychology and Psychophysiology
雑誌
生理心理学と精神生理学
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.77-88, 1996
被引用文献数
5

さまざまなストレス刺激や情動体験とかかわって, 心臓活動に対する迷走性の寄与を特別に扱った研究は, 相対的に少ない.本評論は, 心臓迷走活動をホメオスターシスやストレス, あるいは, 情動の生理的指標と見なす, Porgesの一連の最新論文に示唆を受けながら, 以下の三つの点について, よりいっそう明確な像を描こうと試みた.すなわち, 心臓迷走活動に関する, (a) 神経解剖学的および生理学的機序, (b) 推定技法, および, (c) 心理生理学的知見, についてである.とくに迷走および関連する系における随意的かつ社会的な側面 [(a)], 圧反射感度の呼吸性洞性不整脈に対する優位性 [(b)], 並びに, 悪性ストレスにおける圧反射感度の抑制 [(c)], といったことが強調された.かくして, 本評論では, ストレスおよび情動研究の必須部分として, 心臓迷走活動を考慮することの重要性が指摘された.
著者
三木 盛登 入戸野 宏
出版者
Japanese Society for Physiological Psychology and Psychophysiology
雑誌
生理心理学と精神生理学 (ISSN:02892405)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.1-10, 2014

視聴者が動画に注意を向けるほど,動画とは無関係なプローブ刺激に対する事象関連電位のP3 (P300)成分の振幅が減衰する。本研究では,短い動画に対する主観的興味と脳波測度との相関を求めることにより,この知見を追試・拡張した。15名の大学生・大学院生が映画の予告編12本(<i>M</i>=143 s)を視聴した。視聴中に,痛みのない電気プローブ刺激(0.2 ms)を左手中指に5–7 s間隔で提示し,左手親指によるボタン押し反応を求めた。それぞれの予告編について印象評定を行った。6項目(興味ある,注意を引く,好き,快,目が覚めた,本編が見たい)のヴィジュアルアナログスケールの合成得点を"興味"得点として使用した。ステップワイズ回帰分析により,プローブ誘発P3振幅(β=-.20)と刺激が提示されない区間の後頭部アルファ帯域パワー(β=-.29)はどちらも興味得点を説明することが分かった。本研究により,単一電気プローブ刺激法が視聴者の興味を客観的に測る実験プロトコルとして有望であることが示された。