著者
片桐 資津子
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.70-86, 2012

一般に敬遠されがちな施設ケアには, 在宅ケアでは享受できないものがある. それは専門のケア職員が常駐していることに加えて, 要介護状態の利用者が集まって生活しているため「グループのもつ力」が存在していることである.<br>本稿では, 相部屋の従来型特養と個室完備の新型特養を比較することにより, グループのもつ力と個別ケアのあり方を探究した. 本来ユニットケアをおこなう施設として創設された新型特養は, グループのもつ力を活用しながら個別ケアを実現できるはずであった. しかし, 必ずしもうまくいっているとはいえない. グループのもつ力は所与のものではなく, 人と人との重層的なつながりのなかで育まれる必要があるからだ. その際に生じるジレンマを浮き彫りにすることを本稿の研究課題とした.<br>そのため, まず既存研究の「再生力集団」の概念を検討し, グループのもつ力の説明概念として, 「役割」と「共同」を抽出した. さらに従来型と新型のケア職員にインタビュー調査を実施し, 修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ (M-GTA) により, 「安心」と「自由」の説明概念を抽出した.<br>従来型と新型ではグループのもつ力の中身が異なっており, それぞれに一長一短がある. グループのもつ力を個別ケアにつなげていくためには, 役割, 共同, 安心, 自由という4つの説明概念からみえてきたジレンマに折り合いをつけていく必要があることが結論として示された.

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