著者
小澤 義博
出版者
獣医疫学会
雑誌
獣医疫学雑誌 (ISSN:13432583)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.72-76, 2014

アフリカ豚コレラ(ASF)は昔からアフリカ在来のwarthohog(イボイノシシ),wild boar(イノシシ),soft ticks(ダニの一種)に不顕潜感染を続けてきたAsfivirusによる豚の病気である。アジアや欧米でよく知られている「豚コレラ」とは全く異なるウイルスによっておこる病気である。アフリカに白人が豚を持ち込むまではASFウイルスの存在すら知られていなかった。ASFウイルスは2本錯のDNAウイルスで,感染した豚や野生動物の血液や組織や肉製品,ダニなどの中で長期間生存できる。またアフリカにおける感受性を有する野生動物やダニは,ASFに感染してもなんら症状を示さず生存することが知られている。豚がASFに感染すると高い死亡率を示す急性のウイルス病であるが,時として慢性経過を示すASFウイルスの存在することが知られている。ASFウイルスは自然環境に強く,4度Cに保存された血液中で約1年半生存することがある。感染した豚の排泄物中でも室温で約1年半生存できる。また豚舎の中では約一ヶ月生存できる。骨付き肉では約150日間,塩付け乾燥ハムで140日間,凍結肉では数年間生存できる。ASFウイルスには多くの遺伝子型が存在するが,イベリア半島に広がったウィルスは1型で比較的に弱毒のウイルスであるが,2007年に黒海地方に広がったウイルスは2型で急性の経過をたどる。ASFウィルスは人には感染しないが,感染した豚には色々抗体が出来る。しかし中和抗体ができにくいので弱毒生ワクチンの開発が試みられてきたが,未だに実用化されていない。ASFの治療薬は存在しない。従って今のところASFのコントロールや撲滅には,感染国の豚やイノシシなどの感受性のある動物の殺処分に頼るしかない。しかし特定の野生動物の完全な淘汰は極めて難しく,ロシアは今のところ国内のイノシシのコントロール/淘汰には自信がないようである。

言及状況

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小澤義博教授(?)による論文。 2014年 「ASFウィルスは人には感染しないが,感染した豚には色々抗体が出来る。しかし中和抗体ができにくいので弱毒生ワクチンの開発が試みられてきたが,未だに実用化されていない。」 https://t.co/Q2ctFNbm86

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