- 著者
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阿部 和夫
- 出版者
- The Stomatological society, Japan
- 雑誌
- 口腔病學會雜誌 (ISSN:03009149)
- 巻号頁・発行日
- vol.10, no.4, pp.475-494, 1936
1927年, Seidel及ビReckow氏ハ「上顎賓ハソノ發育ニ當リ臼齒部根端ト上顎賓底トノ接近ヲ來シ, 殊ニ臼齒部齒牙ノ缺殞後ニソノ齒牙間隙部ニ, 上顎竇底ノ著シキ沈下ヲ認ムル」コト、述べ, 之ヲ齒牙缺損間隙窩Zahn-l霍ckenbuchtト稱セリ。最近ニ於テハ1935年Heuser氏ニヨル同樣ノ事實ガ確證セラル、ニ至レリ。<BR>斯クノ如キ事實ハ外科的操作ニ當リテハ, 拔齒時ノ賽, 口腔ノ連絡, 或ハ殘根ノ賓内侵入等ヲ惹起シ, 架橋義齒裝著ニ當リテハ根管治療ノ不完全ニ因スル根端部炎症ハ, 容易ニ上顎竇炎ニ移行スト考ヘラル。<BR>余ハ東京高等齒科醫學校附矚醫院ニ於テ, 最近約5ケ年間ニ撮影セシ齒科用「レントゲン」像ヲ診査シ, 「レ」像上ニテSeidel及ビReckow氏ノ所謂齒牙缺損間隙窩ノ著明ニ形成セラレタリト思ハル、モノ115例ヲ得テ, 之ガ統計的觀察ヲ行ヒ, 次イデ模型ニヨル實驗, 更ニ上顎竇ヲ組織學的ニ檢索セリ。<BR>1.「レントゲン」像ノ統計的觀察, 「レ」像ノ撰出ニ當リテハ, 賽底線が兩隣在齒齒根端ヨリ根側ニ浩ヒテ, 線状ヲナシテ沈下セノレガ如キ像ニ限り, 齒根ヲ途中ニテ横斷スルガ如キモノハ之ヲ除ケリ。<BR>(1) 歓損齒牙ノ部位ハM<SUB>1</SUB>107例 (78.7%) , M<SUB>2</SUB>22例 (16.2%) , P<SUB>2</SUB>6例 (4.4%) ニシテ主トシテ第一大臼齒部ニ出現ス。<BR>(2) 齒牙缺損間隙窩ニ齒根ヲ近接セル齒牙ハP<SUB>2</SUB>66例 (46.2, 0) , M<SUB>2</SUB>64例 (44.8%) , M<SUB>15</SUB>例 (3.5%) , M<SUB>3</SUB>2例 (1.4%) ニシテ第ニ小臼齒部, 第二大日齒部ニ最モ多シ。<BR>(3) 齒牙缺損間隙窩ノ深サニ就テハ, 6乃至8mmノモノ最モ多數ニシテ, 時ニハ殆ド平坦ナルモノ, 或ハ10mmニ及ブモノアリ。<BR>(4) 賓窩底ヨリ齒槽骨表面迄ノ距離ハ, 1乃至5mmニシテ, 最モ非薄ニシテ約1mmニ及ブモノ15例ヲ得タリ。<BR>(5) 初診時ノ歓損部ノ状態ハ, 架橋義齒最モ多ク, 大ナル齒冠部齲蝕之ニ次ギタリ。<BR>(6) カ、ル牙ノ拔去ヨリ「レ」撮影迄ノ期間ハ大髓1乃至2ケ月ニシテ, 中ニハ長年月ヲ經タルモノ有リトハ云へ, 齒牙鉄損間隙窩ハ比較的短時日ニ形成セラル、モハ如シ。<BR>(7) 年齡的關係ハ青年期最モ多ク。<BR>(8) 性別的關係ハ之ヲ認ムルヲ得ズ。<BR>2.模型ニヨル實驗<BR>臨牀的「トントゲン」的觀察ノ確實ナリヤ否ヤヲ確メントシテ模型ヲ形成シ, 「ワツクス」及ビ拔去齒牙ヲ以テ上顎竇竝ビニ齒牙ノ關係ヲ移シタルモノ數個ヲ以テ, 之ニ種々ナル方向ヨリ「レントゲン」冩眞ヲ撮影セリ。ソノ結果ハ臨牀的ニ口腔内ニ於テ撮影シ得ベキ範圍内ニ於テハ「レ」像ハ齒根端ト竇ノ近接セルモノハ近ク, 遠キモノハ隔テ、, 正シキ位置的關係ヲ明示シ, 殊ニ竇底線ガ隣在齒根端ヨリ根側ニ沿ヒ沈下セルガ如キ像ハ, 齒根ト竇トが近接シ即チ賓ノ沈下ト認ム可キモノナリ。<BR>3.齒牙缺損ヲ有スル上顎骨ヲ組織學的ニ檢索シテ次ノ如キ結果ヲ得タリ。<BR>(1) 陷凹窩ヲ「レントゲン」ニテ觀ルニ, ソノ陷凹ノ形態ハロ内法ニテ撮影セシ場合及ビ模型ニテ觀察セル場合ト等シク, 隣在齒根ト齒牙缺損間隙窩トノ關係ヲ明示セリ。<BR>(2) 賽内壁ニ於ケル吸敢状態ヲ觀察スァレニ吸牧ノ進行方向ハ齒牙側 (竃底) 最モ著シク, 鼻腔側及ビ頬側之ニ次ゲリ。<BR>(3) 竇外壁ニ於テハ常ニ輕度ノ骨新生像ヲ認メタリ。