著者
Boulton William R.
出版者
医療と社会
雑誌
医療と社会 (ISSN:09169202)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.73-111, 2000

過去20年間,米国ヘルスケア業界では大型合併が進められてきた。今日わずか4社の卸(マッケソン,バーゲン・ブランズウィク,カーディナルヘルス,アメリソースヘルス)が医療用医薬品流通の80%以上を,4社のドラッグチェーン(CVS,ウォールグリーン,ライトエイド,エッカード)が小売処方薬ビジネスの60%以上を支配している。このような大型顧客の出現によって,製薬メーカーは競争上不利な立場にあったが,ようやく精力的な動きをとりはじめた。<BR>製薬メーカーは,戦略的提携により,新製品の発掘・開発のための最新技術を得る一方,世界的な統合を通じ,市場の拡大とマーケティング・一般管理費の削減をめざす戦略を再び取り始めた。製薬業界の再編はまだ終了したわけではないが,今後の方向は明確である。製品開発をさらに押し進め,経営コストを削減するリストラクチャリングが,新しい世界規模でのリーダーの要件となるであろう。たとえば,グラクソとバローズ・ウェルカムは1996年に合併してグラクソ・ウエルカムに,ゼネカとアストラは1998年にアストラ・ゼネカとなった。その他にも,ノバルティス(チバガイギーとサンドの合併会社-1996年に合併),アベンティス(ヘキストとローヌ・プーラン・ローラーの合併会社-1998年に合併)が,業界のリーダーシップを取るべくしのぎを削っている。この業界では10%の市場シェアを占めることが最終的な目標のように思われる。というのは,メルクでさえもいまだ約7.5%,アベンティスが約6.7%,グラクソ・ウエルカム,ファイザー,アストラ・ゼネカはそれぞれ6%のシェアを占めているにすぎないのである。<BR>ヒトゲノム解析計画は,大手製薬メーカーへ最新の開発・経営技術を提供する新会社を生むこととなった。たとえば,有望な新薬開発に向けて,ファイザーは,インサイト・ファーマスティカルズと遺伝子解読の作業を加速し,すべての遺伝子配列を解読するため協力・提携することに合意した。インサイトは約5万個のヒト遺伝子に関する特許を出願中で,すでに遺伝子に関連する特許を453件取得している。このような提携によって,今後は一連の全く新しい形の医薬品の導入を進めていくと思われる。将来のリーダーには彼らとの接触が不可欠となろう。

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