- 著者
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小林 伸二
雲居 秀城
宮下 修
赤尾 幸治
黒澤 つかさ
熊谷 修平
雨宮 雷太
西村 陽介
- 出版者
- 公益社団法人 日本理学療法士協会
- 雑誌
- 理学療法学Supplement
- 巻号頁・発行日
- vol.2006, pp.C0323, 2007
【はじめに】<BR>人間は重力下で姿勢を維持し、安定した動作を遂行するために身体各分節を力学的、機能解剖学的に制御している。これらのバランスが崩れ、ある局所に歪みが生じた場合、病態が発生するといわれる。整形外科疾患理学療法の臨床においては、局所の評価や治療のみではなく、姿勢や動作にアウトカムを設定し、それらを調節することで症状が軽減する症例を経験できることがある。<BR>【目的】<BR>重力下で姿勢を安定させることは、身体各固有受容器からの探索情報を処理、統合した結果である。間違った情報入力の有無を確認し補正するために、臨床において立位や坐位姿勢を観察、評価する場面は多い。しかし、その情報を単なる逃避や関節可動域制限、筋力低下として単純に捉えてしまうことが往々にして行われている。今回われわれは、立位と坐位の重心位置が、既往歴や、日常生活時の特徴的な姿勢(以下日常姿勢)にどのような関係があるか、また左右差についてはどうか、を調査し、これらが姿勢制御に及ぼす影響について検討を行なった。<BR>【対象および方法】<BR>対象は、関節の変形や拘縮が認められず、重心に変化を及ぼすような疾患をもたない当院外来患者、入院患者および職員、31例(男性16例、女性15例)平均年齢47.4歳であった。重心位置の測定は、重心動揺計(MEDICAPTEURS社製 Win-pod)を用い、前方注視で30秒間の静止端坐位と静止立位にて行い、同時に後方からデジタルカメラで撮影を行った。これを、個人の既往歴、日常姿勢と比較検討した。<BR>【結果】<BR>既往歴については、症例ごとに関連がある傾向はあったが、局所の評価や三次元的な姿勢、動作分析を必要とし、全体として明らかな関連性を見ることはできなかった。坐位では、日常姿勢と坐位重心で明らかに同一方向にあったものが20名(64.5%)であり、左右での同一性が認められ、立位では8名(25.8%)であった。重心位置の左右差は左に優位であり、立位23名(74.2%)、坐位23名(74.2%)であった。また、坐位重心での左右の偏りが、体重換算し10%以上のものは15例であり、そのうち立位では重心位置が10%以内に入ったものは13例(86.7%)であった。<BR>【考察】<BR>理学療法によって日常の姿勢をより良い方向へ変化させ、疼痛の除去や予防が可能となる。これには日常生活における習慣が大きく関与しており、特に坐位では重心位置との関係に強い傾向が認められた。重心位置は坐位、立位ともに左側が優位であった。また、坐位で偏りが強いものも立位では補正されている傾向が強く、足、膝、股関節における姿勢制御の重要性が示唆された。今後、前後や回旋との関連性、身体各部位との影響、また疾患や症状別の違いなどもより詳しく調査、検討していきたい。<BR>