- 著者
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安達 みちる
猪飼 哲夫
平澤 恭子
- 出版者
- JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
- 雑誌
- 日本理学療法学術大会
- 巻号頁・発行日
- vol.2010, pp.BbPI2149-BbPI2149, 2011
【目的】超低出生体重児の運動発達は、体重が少ないほど遅れる傾向があると報告されている。400g未満で出生した児の運動発達経過についての報告は少なく、今回、346gで出生した超低出生体重児の理学療法をNICU退院後も引き続き経験した。発達経過と理学療法について検討考察し、今後の症例への理学療法に活かす事を目的とした。<BR>【方法】対象は、346gで出生した超低出生体重児。重症IUGRを認め、27週4日で緊急帝王切開にて出生。アプガースコアは1分1点、5分1点。呼吸器管理日数は63日。修正5ヶ月で経口と経管栄養で自宅退院。修正11ヶ月で経管栄養を離脱。修正18ヶ月のMRIは異常なし。3歳時の新版K式はDQ78(運動48、認知84、言語社会78)。38週から3歳まで理学療法が行われ、児の発達経過と理学療法との関連を検討した。<BR>【説明と同意】理学療法の施行と本学会への発表において、家族から口頭と書面で承諾をいただいた。<BR>【結果】38週1日(756g)保育器内より理学療法施行。覚醒時、驚愕しやすく啼泣が多いためホールディングにて落ち着くポジショニングを確認し施行指導した。屈曲位の側臥位または腹臥位で下部体幹骨盤を圧迫包み込むことで睡眠への導入、落ち着いた覚醒が得られた。39週(890g)以降、State4が保てる様になり自発運動等を評価できた。肩の後退と足外反は各姿勢でみられ、四肢の分離的自発運動は見られるがぎごちなく体幹を含め回旋運動と運動範囲が少なく、下肢のROM制限、四肢の過筋緊張、自発運動で驚愕しやすかった。手足のホールディングで落ち着かせると注視が可能であり、ホールディングした中で落ち着いた覚醒を経験させ、リラクゼーション後、四肢の他動運動等を通して触圧運動の感覚入力など施行し、親にホールディングと声かけ、見つめ合い等指導した。40週(1079g)では、State4が増え、追視可能。背臥位のポジショニングでは、頭部を安定させるための枕を作製した。41週(1184g)経口開始。吸啜嚥下みられ咽せはないが、3ccを10分要した。42週(1228g)でクベース外での理学療法が可能。感覚入力への受け入れは良く、ROMは改善したが、GMsはPRで自発運動と筋緊張は39週と同様の傾向であった。経口も1回5~20ccと安定せず、胃残や嘔吐を繰り返していたため、理学療法は経口前に施行するなど介入時間を配慮した。43週3日(1372g)でコットへ移床。四肢の過筋緊張は軽減していたがGMsはPRであった。評価、四肢の自発運動の促し、感覚運動入力、ポジショニングなど施行し、親へは、児の感覚運動の特徴や発達の変化を伝え、好む抱っこや落ち着いた覚醒での相互的な感覚運動入力を通して母子関係を促した。以降、感覚運動発達はみられ、53週(2918g)では関わりで声出し笑いや、四肢の抗重力運動が可能となった。退院後は、独歩獲得まで月に1回、獲得後は3~6ヶ月に1回の理学療法評価と各機能獲得に向けた運動、遊び方を指導した。各機能の獲得は修正で、定頚4ヶ月、寝返り6ヶ月,座位保持10ヶ月、四つ這い移動11ヶ月、伝い歩き12ヶ月、独歩19ヶ月であった。独歩獲得までの問題として、立位時に足外反足趾屈曲が見られ、足部の支持性と体重移動への反応が低下していた。足部でのけり出しと運動を指導した。足部の問題は独歩獲得後もみられ、足部運動の継続と靴の指導を施行、2歳9ヶ月時には改善していた。<BR>【考察】40週前後で週数に比し体重が少ない児は、過敏で驚愕啼泣しやすいと感じているが、本児も38週時の理学療法介入時は感覚過敏が問題であった。自発運動で受ける感覚を過剰に受け、覚醒時啼泣が多かったことが、四肢の筋緊張に影響していたと考えられた。ポジショニングの施行で睡眠への導入、落ち着いた覚醒が得られたことは筋緊張の緩和に、また、在胎37週以降に覚醒して集中する能力を発達させるといわれておりポジショニングでState4が保てたことは集中するための環境作りに有用だったと考える。超低出生体重児の粗大機能の獲得時期については、第44回の本学会で報告したIQ70以上の超低出生体重児群の運動獲得時期と比較すると、独歩のみ、90%通過修正月齢よりも遅かった。独歩獲得が遅れたことは、足部の問題が影響していたと考えられるが、修正11ヶ月まで経管栄養であり、体力の少なさ等他の影響も考えられた。<BR>【理学療法学研究としての意義】近年、出生体重が400g未満であっても生存可能となっている。400g未満で出生した脳の器質的異常を伴わない超低出生体重児へのNICUからの理学療法で、児の安定を引き出し発達経過に沿った理学療法の施行経験は、今後の症例への理学療法に役立つと考える。<BR>