著者
植松 海雲 猪飼 哲夫
出版者
The Japanese Association of Rehabilitation Medicine
雑誌
リハビリテーション医学 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.39, no.7, pp.396-402, 2002-07-18 (Released:2009-10-28)
参考文献数
23
被引用文献数
28 19

リハビリテーション専門病院に入院した高齢脳卒中患者374症例を対象に,自宅退院のための能力的・社会的因子条件について,classification and regression trees (CART)を用いて分析した.対象患者の自宅退院率は82.6%.単変量の解析では退院時家族構成人数,配偶者の同居の有無,functional independence measure (FIM)18項目各得点において転帰先間で有意差を認めた.CARTによる解析の結果,FIMトイレ移乗,家族構成人数からなる決定木が得られ,トイレ移乗が要介助でかつ家族構成人数が2人以下の場合は自宅退院が困難(自宅退院率21.7%)などのルールが得られた.CARTは,連続変数,カテゴリー変数のいずれをも扱うことが可能であり,結果は直感的に理解しやすく分類や予測などの研究に有効な手法と考えられた.
著者
西 将則 武原 格 猪飼 哲夫 宮野 佐年
出版者
社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
リハビリテーション医学 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.243-248, 2006 (Released:2006-05-01)
参考文献数
9
被引用文献数
4 7

経鼻経管栄養チューブ(以下NGチューブ)が嚥下に与える影響について検討した.対象は健常成人15名.1)NGチューブなし,2)8 Fr NGチューブ留置,3)14 Fr NGチューブ留置,それぞれの状態でバリウム溶液5 ml,ゼラチンゼリーと寒天ゼリーを5 gずつ摂取し,嚥下造影検査(以下VF)にて各状態の嚥下動態を比較検討した.またNGチューブ留置による自覚症状をNumerical rating scaleにて評価した.NGチューブ留置によって全ての被検者が違和感および嚥下困難を訴えた.NGチューブの口径が大きくなるにつれゼリー摂取時の嚥下回数が増加した.NGチューブ周囲に食塊が残留する例や通過した食塊がチューブに沿って逆流する例も認めた.NGチューブの留置は嚥下に悪影響を及ぼし,口径の大きいものほどその影響が強いことが証明された.本研究は嚥下機能に問題のないものを対象に行ったが,嚥下障害患者においてはNGチューブの留置により誤嚥の危険性が高くなることが容易に推察され,経口摂取はNGチューブを抜去して行うことが望ましい.
著者
安達 みちる 猪飼 哲夫 平澤 恭子
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.BbPI2149-BbPI2149, 2011

【目的】超低出生体重児の運動発達は、体重が少ないほど遅れる傾向があると報告されている。400g未満で出生した児の運動発達経過についての報告は少なく、今回、346gで出生した超低出生体重児の理学療法をNICU退院後も引き続き経験した。発達経過と理学療法について検討考察し、今後の症例への理学療法に活かす事を目的とした。<BR>【方法】対象は、346gで出生した超低出生体重児。重症IUGRを認め、27週4日で緊急帝王切開にて出生。アプガースコアは1分1点、5分1点。呼吸器管理日数は63日。修正5ヶ月で経口と経管栄養で自宅退院。修正11ヶ月で経管栄養を離脱。修正18ヶ月のMRIは異常なし。3歳時の新版K式はDQ78(運動48、認知84、言語社会78)。38週から3歳まで理学療法が行われ、児の発達経過と理学療法との関連を検討した。<BR>【説明と同意】理学療法の施行と本学会への発表において、家族から口頭と書面で承諾をいただいた。<BR>【結果】38週1日(756g)保育器内より理学療法施行。覚醒時、驚愕しやすく啼泣が多いためホールディングにて落ち着くポジショニングを確認し施行指導した。屈曲位の側臥位または腹臥位で下部体幹骨盤を圧迫包み込むことで睡眠への導入、落ち着いた覚醒が得られた。39週(890g)以降、State4が保てる様になり自発運動等を評価できた。肩の後退と足外反は各姿勢でみられ、四肢の分離的自発運動は見られるがぎごちなく体幹を含め回旋運動と運動範囲が少なく、下肢のROM制限、四肢の過筋緊張、自発運動で驚愕しやすかった。手足のホールディングで落ち着かせると注視が可能であり、ホールディングした中で落ち着いた覚醒を経験させ、リラクゼーション後、四肢の他動運動等を通して触圧運動の感覚入力など施行し、親にホールディングと声かけ、見つめ合い等指導した。40週(1079g)では、State4が増え、追視可能。背臥位のポジショニングでは、頭部を安定させるための枕を作製した。41週(1184g)経口開始。吸啜嚥下みられ咽せはないが、3ccを10分要した。42週(1228g)でクベース外での理学療法が可能。感覚入力への受け入れは良く、ROMは改善したが、GMsはPRで自発運動と筋緊張は39週と同様の傾向であった。経口も1回5~20ccと安定せず、胃残や嘔吐を繰り返していたため、理学療法は経口前に施行するなど介入時間を配慮した。43週3日(1372g)でコットへ移床。四肢の過筋緊張は軽減していたがGMsはPRであった。評価、四肢の自発運動の促し、感覚運動入力、ポジショニングなど施行し、親へは、児の感覚運動の特徴や発達の変化を伝え、好む抱っこや落ち着いた覚醒での相互的な感覚運動入力を通して母子関係を促した。以降、感覚運動発達はみられ、53週(2918g)では関わりで声出し笑いや、四肢の抗重力運動が可能となった。退院後は、独歩獲得まで月に1回、獲得後は3~6ヶ月に1回の理学療法評価と各機能獲得に向けた運動、遊び方を指導した。各機能の獲得は修正で、定頚4ヶ月、寝返り6ヶ月,座位保持10ヶ月、四つ這い移動11ヶ月、伝い歩き12ヶ月、独歩19ヶ月であった。独歩獲得までの問題として、立位時に足外反足趾屈曲が見られ、足部の支持性と体重移動への反応が低下していた。足部でのけり出しと運動を指導した。足部の問題は独歩獲得後もみられ、足部運動の継続と靴の指導を施行、2歳9ヶ月時には改善していた。<BR>【考察】40週前後で週数に比し体重が少ない児は、過敏で驚愕啼泣しやすいと感じているが、本児も38週時の理学療法介入時は感覚過敏が問題であった。自発運動で受ける感覚を過剰に受け、覚醒時啼泣が多かったことが、四肢の筋緊張に影響していたと考えられた。ポジショニングの施行で睡眠への導入、落ち着いた覚醒が得られたことは筋緊張の緩和に、また、在胎37週以降に覚醒して集中する能力を発達させるといわれておりポジショニングでState4が保てたことは集中するための環境作りに有用だったと考える。超低出生体重児の粗大機能の獲得時期については、第44回の本学会で報告したIQ70以上の超低出生体重児群の運動獲得時期と比較すると、独歩のみ、90%通過修正月齢よりも遅かった。独歩獲得が遅れたことは、足部の問題が影響していたと考えられるが、修正11ヶ月まで経管栄養であり、体力の少なさ等他の影響も考えられた。<BR>【理学療法学研究としての意義】近年、出生体重が400g未満であっても生存可能となっている。400g未満で出生した脳の器質的異常を伴わない超低出生体重児へのNICUからの理学療法で、児の安定を引き出し発達経過に沿った理学療法の施行経験は、今後の症例への理学療法に役立つと考える。<BR>
著者
廣瀬 恵 増山 素道 堀部 達也 岩本 卓水 廣瀬 昇 猪飼 哲夫
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.BbPI2125, 2011

【目的】<BR> 今回対象となった脳動静脈奇形(以下、AVM)による広範な右脳内出血患者は、重度意識障害と著明な四肢の痙縮、さらに妊娠(妊娠28週)が合併していることから様々な制限を受け、痙縮コントロールに難渋した。そこで、術前、全身麻酔下、及び術後鎮静期間、立位訓練開始時にわたり痙縮評価を実施し、本症例を通じて、痙縮コントロールの治療手段を検討し、臨床推論モデルの一助となるシングルケーススタディーとして報告する。<BR>【対象】<BR> 脳動静脈奇形による脳内出血発症の女性患者(発症時正常妊娠28週)。<BR>搬送時Japan coma scale(以下JCS)は200、瞳孔散大でCT上右前頭頭頂部に7センチ前後の血腫を認めた。入院当日にAVM摘出術、血腫除去術、外減圧手術施行した。<BR>【説明と同意】<BR>ヘルシンキ宣言に基づき、患者および家人に対し、症例報告する旨を十分に説明し、同意を得た。<BR>【理学療法経過】<BR> 第2病日目より、理学療法開始。初期評価時JCSは30、右上肢にわずかな随意運動を認めるが、除皮質硬直様姿勢を呈していた。Modified Ashworth scale(以下MAS)は、右上下肢3~4、左上下肢 3、足関節背屈可動域は右-50°左-40°で両側の重度内反尖足位を示していた。故に、可動域改善を目的とした早期介入を実施。脳浮腫最大期(第7病日目)は四肢浮腫が著明に出現。看護治療計画にも体位交換毎の可動域訓練とポジショニングを試みるが、右上下肢優位の痙縮は改善されなかった。右足趾には持続的不随意運動も観察されるが、MAS 4と著明な痙縮が持続される。第16病日、JCS I-10、時に瞬きなどでコミュニケーションが可能、バイタルサインが安定したため、車椅子訓練開始。右足部をフットレストに載せることが難しく、内反尖足改善のアプローチは困難な状況であった。第30病日、帝王切開及び残存異常血管摘出術施行。術前評価は、足関節背屈可動域が右-50°、左-40°、両上下肢MAS 3~4であったが、術前徒手矯正時は右-45°左-30°MASは3であった。理学療法士が開頭術中マニピュレーションを実施し、筋弛緩剤を併用する全身麻酔(TIVA)下ではMAS 1、足関節背屈可動域は右-30°左-20°で腓腹筋筋短縮の関節拘縮傾向が認められた。さらに、術中最大背屈位を参考とし、ナイトブレースを目的としたシーネによる装具作成をした。しかし、手術直後のドルミカム、プレセデックスの沈静のみでは強い痙縮が出現し、内反尖足位を認めた。第31病日、前足部に発赤、水疱形成が認められた為、シーネ固定を抜去し床上での可動域訓練・ポジショニング訓練を徹底した。第36病日、水疱除圧・足位修正のため足底板を作成し、車椅子訓練再開。第40病日、足関節背屈可動域は、右-50、左-35、坐位での下肢荷重が開始後、わずかに可動域改善が確認された。第52病日、徐々に座位から立位訓練へ理学療法プログラムを進め装具検討会を実施した。装具は立位訓練の効率化を目的としたもので、支柱付き前開きの短下肢装具を左右に作製予定であったが、転院の運びとなり作成を転院先に申し送った。現在は左SLB+四点杖で監視歩行が可能となっている。<BR>【考察】<BR> 本症例は、脳圧亢進と錐体路障害による重度な痙縮が早期より出現し、切迫流産を回避するため、立位訓練などの自重を利用した積極的な足関節可動域のアプローチが実施できず、徒手的な関節可動域訓練とポジショニングのみを継続したため、足関節可動域維持、改善に難渋したケースであった。臨床所見経過では、MAS・足関節可動域に画期的変化はみられず、痙縮治療のガイドラインから認められるような、持続的伸張法としてとらえるポジショニングや、装具療法を目的としたシーネ固定も、本症例のような強い痙縮筋に対して、効果を持続することは難しく、痙縮の持続的コントロールについては、あまり望ましい治療効果が得られなかった。<BR> 本症例において、MASと足関節可動域の変化として、最も痙縮に対し治療効果が認められたのは全身麻酔下(TIVA)であり、ドルミカム、プレセデックスなどの沈静中も痙縮が増強する臨床所見から、沈静ではなく筋弛緩剤の効果は確実であったと考えられる。<BR> 近年、筋弛緩薬に対する痙縮のコントロールには否定的な報告もあるが、筋緊張緩解に関して、服薬状況と理学療法の併用が痙縮コントロールにおいて治療効果が高いことを推察させた。<BR>【理学療法学研究としての意義】<BR> 理学療法実施と並行して投薬による筋緊張コントロールは、関連身体症状への汎化も含め理学療法プランを円滑に進める手段として有効であり、重症症例に対する筋緊張亢進のメカニズムの推論と筋弛緩剤の薬理作用に対する検討が、筋緊張亢進に伴う障害の改善を目的とした理学療法施行に重要であると考えられた。
著者
内尾 優 長谷川 三希子 猪飼 哲夫 内山 温 楠田 聡 藤本 泰成 新田 收
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.45, no.6, pp.347-357, 2018 (Released:2018-12-20)
参考文献数
33

【目的】超低出生体重児の自発運動の特徴と新生児枕による即時的影響を明らかにすることである。【方法】対象は,神経学的異常のみられない超低出生体重児群8 名(平均出生体重729 ± 144 g,平均在胎期間24.6 ± 2.0 週),正期産児群8 名とした。評価時期は,修正月齢1 ヵ月に行った。評価機器は,乳児自発運動評価を目的に開発された小型の三次元動作計測システムを用い,児の自然な自発運動を新生児枕有無の2 条件で記録した。得られた三次元座標データより自発運動の平均速度,対称性,流暢性,突発性を算出し,比較した。【結果】超低出生体重児の自発運動は,正期産児と同様の平均速度,流暢性,突発性を示したが,正期産児と比較し非対称性を示した。また,新生児枕の使用により即時的に非対称性が軽減した。【結論】神経学的異常のみられない超低出生体重児の自発運動の特徴は,非対称性であり,新生児枕の使用により軽減できる可能性が示唆された。
著者
猪飼 哲夫 米本 恭三 宮野 佐年 小林 一成 福田 千晶 杉本 淳 安保 雅博
出版者
The Japanese Association of Rehabilitation Medicine
雑誌
リハビリテーション医学 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.29, no.7, pp.569-575, 1992-07-18 (Released:2009-10-28)
参考文献数
32
被引用文献数
10 9

脳卒中片麻痺患者にともなう肩関節亜脱臼の座位におけるX線学的評価を行い,経時的変化について検討した.骨頭下降率とAHI(肩峰骨頭間距離)比の間には有意の相関を認めた.胸椎部の側弯は亜脱臼群の約4割に認められ大多数は麻痺側凸を呈していたが,肩甲骨の下方回旋はわずか1例のみであった.肩関節痛とROM制限は亜脱臼群に多く,6ヵ月以上経過した症例に特に多く観察された.初診時にBrunnstrom stageがIII以上の症例に,また片麻痺の回復によりstageが上がってくる症例に亜脱臼が改善する傾向が認められた.亜脱臼が改善する症例が存在することは,早期の亜脱臼に対して,ポジショニングや筋促通の必要性が示唆された.
著者
猪飼 哲夫 辰濃 尚 宮野 佐年
出版者
社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
リハビリテーション医学 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.12, pp.828-833, 2006 (Released:2006-12-29)
参考文献数
15
被引用文献数
20 27

バランス機能は歩行能力に影響する因子の一つと考えられる.そこで歩行能力の代表的な評価法である最大歩行速度 (Maximum Walking Speed: MWS) と各種バランス検査を,若年者群と高齢者群で検討した.身長は若年者群ではMWS, Functional reach (FR),タンデム肢位での重心動揺,Timed Up and Go test (TUG) と相関したが,高齢者群では関係は認められなかった.若年者群ではMWSは,タンデム肢位外周面積,TUGと相関したが,これは身長の影響によると考えられた.高齢者群ではMWSは,FR,タンデム肢位総軌跡長,TUGと相関した.高齢者では歩行能力は静的・動的両者のバランス機能に影響されることが示唆された.
著者
安達 拓 吉野 克樹 北目 茂 猪飼 哲夫 林 雅彦 後藤 慎一
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.D3P2522, 2009 (Released:2009-04-25)

【はじめに】呼吸筋機能は腹部臓器を初め身体各臓器重量の作用方向の影響を受け、これが体位による換気メカニクスの違いとなる.我々はこうした体位による呼吸筋メカニクスの違いを利用して呼吸リハビリに応用する方策を検討しているが、今回主要吸気筋である横隔膜の体位を利用したトレーニング法を検討するため頭低位における横隔膜機能を調べた.【原理】横隔膜筋力強化法として従来吸気回路に粘性抵抗を負荷する方法や腹壁に砂嚢などの重し袋を載せて呼吸するいわゆるabdominal pad法がある.一方腹腔内臓器重量は横隔膜筋力に対して、立位では補助的に作用し横隔膜収縮力を軽減するが、仰臥位では拮抗的に作用し横隔膜にとっては負荷となり、頭低位では腹部重量が横隔膜に対して腹壁に載せた砂嚢と同様の働きをする.【方法】本研究に同意が得られた健常成人を対象として、ティルトテーブルを利用し臥位(0°)より各10°間隔でー30°まで頭低位姿勢をとり各角度で測定した.測定パラメーターは、ニューモタコメーターによる一回換気量・気流量.また胸部および腹部に装着したインダクタンスプレスチモグラフ(レスピトレース)による胸・腹壁の動きからrib-cage volume.(Vrc)abdominal volume(Vab)Chest wall volume(Vcw)を測定しiso volume法にて補正後、Konno-Meadダイアグラムでchest wall configurationを解析した.胃・食道バルーン法により食道内圧Pesと腹腔内圧Pgaを測定し経横隔膜筋力Pdi(=Pga―Pes)を計測した.比較対象として仰臥位でabdominal pad法(0kg~2kg)行い同パラメータを検討した.【結果】頭低位では換気運動においてVrcに対してVabの寄与度の割合が多くなり、FRCの低下が認められた.換気量に対する横隔膜出力(ΔPdi/ΔV)は-10°以下で増大した.同様にabdominal pad法ではΔPdi/ΔVは砂嚢1.0~1.5kg重量から増加した.【結論】臨床的にabdominal pad法で用いられる1.0kg加重による横隔膜負荷は頭低位-10°~-20°で達成され、この程度の頭低位姿勢では自覚症状は見られず呼吸を維持できた.頭低位姿勢を利用した横隔膜トレーニング法の可能性が示された.
著者
安達 みちる 猪飼 哲夫 平澤 恭子
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.38 Suppl. No.2 (第46回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.BbPI2149, 2011 (Released:2011-05-26)

【目的】超低出生体重児の運動発達は、体重が少ないほど遅れる傾向があると報告されている。400g未満で出生した児の運動発達経過についての報告は少なく、今回、346gで出生した超低出生体重児の理学療法をNICU退院後も引き続き経験した。発達経過と理学療法について検討考察し、今後の症例への理学療法に活かす事を目的とした。【方法】対象は、346gで出生した超低出生体重児。重症IUGRを認め、27週4日で緊急帝王切開にて出生。アプガースコアは1分1点、5分1点。呼吸器管理日数は63日。修正5ヶ月で経口と経管栄養で自宅退院。修正11ヶ月で経管栄養を離脱。修正18ヶ月のMRIは異常なし。3歳時の新版K式はDQ78(運動48、認知84、言語社会78)。38週から3歳まで理学療法が行われ、児の発達経過と理学療法との関連を検討した。【説明と同意】理学療法の施行と本学会への発表において、家族から口頭と書面で承諾をいただいた。【結果】38週1日(756g)保育器内より理学療法施行。覚醒時、驚愕しやすく啼泣が多いためホールディングにて落ち着くポジショニングを確認し施行指導した。屈曲位の側臥位または腹臥位で下部体幹骨盤を圧迫包み込むことで睡眠への導入、落ち着いた覚醒が得られた。39週(890g)以降、State4が保てる様になり自発運動等を評価できた。肩の後退と足外反は各姿勢でみられ、四肢の分離的自発運動は見られるがぎごちなく体幹を含め回旋運動と運動範囲が少なく、下肢のROM制限、四肢の過筋緊張、自発運動で驚愕しやすかった。手足のホールディングで落ち着かせると注視が可能であり、ホールディングした中で落ち着いた覚醒を経験させ、リラクゼーション後、四肢の他動運動等を通して触圧運動の感覚入力など施行し、親にホールディングと声かけ、見つめ合い等指導した。40週(1079g)では、State4が増え、追視可能。背臥位のポジショニングでは、頭部を安定させるための枕を作製した。41週(1184g)経口開始。吸啜嚥下みられ咽せはないが、3ccを10分要した。42週(1228g)でクベース外での理学療法が可能。感覚入力への受け入れは良く、ROMは改善したが、GMsはPRで自発運動と筋緊張は39週と同様の傾向であった。経口も1回5~20ccと安定せず、胃残や嘔吐を繰り返していたため、理学療法は経口前に施行するなど介入時間を配慮した。43週3日(1372g)でコットへ移床。四肢の過筋緊張は軽減していたがGMsはPRであった。評価、四肢の自発運動の促し、感覚運動入力、ポジショニングなど施行し、親へは、児の感覚運動の特徴や発達の変化を伝え、好む抱っこや落ち着いた覚醒での相互的な感覚運動入力を通して母子関係を促した。以降、感覚運動発達はみられ、53週(2918g)では関わりで声出し笑いや、四肢の抗重力運動が可能となった。退院後は、独歩獲得まで月に1回、獲得後は3~6ヶ月に1回の理学療法評価と各機能獲得に向けた運動、遊び方を指導した。各機能の獲得は修正で、定頚4ヶ月、寝返り6ヶ月,座位保持10ヶ月、四つ這い移動11ヶ月、伝い歩き12ヶ月、独歩19ヶ月であった。独歩獲得までの問題として、立位時に足外反足趾屈曲が見られ、足部の支持性と体重移動への反応が低下していた。足部でのけり出しと運動を指導した。足部の問題は独歩獲得後もみられ、足部運動の継続と靴の指導を施行、2歳9ヶ月時には改善していた。【考察】40週前後で週数に比し体重が少ない児は、過敏で驚愕啼泣しやすいと感じているが、本児も38週時の理学療法介入時は感覚過敏が問題であった。自発運動で受ける感覚を過剰に受け、覚醒時啼泣が多かったことが、四肢の筋緊張に影響していたと考えられた。ポジショニングの施行で睡眠への導入、落ち着いた覚醒が得られたことは筋緊張の緩和に、また、在胎37週以降に覚醒して集中する能力を発達させるといわれておりポジショニングでState4が保てたことは集中するための環境作りに有用だったと考える。超低出生体重児の粗大機能の獲得時期については、第44回の本学会で報告したIQ70以上の超低出生体重児群の運動獲得時期と比較すると、独歩のみ、90%通過修正月齢よりも遅かった。独歩獲得が遅れたことは、足部の問題が影響していたと考えられるが、修正11ヶ月まで経管栄養であり、体力の少なさ等他の影響も考えられた。【理学療法学研究としての意義】近年、出生体重が400g未満であっても生存可能となっている。400g未満で出生した脳の器質的異常を伴わない超低出生体重児へのNICUからの理学療法で、児の安定を引き出し発達経過に沿った理学療法の施行経験は、今後の症例への理学療法に役立つと考える。
著者
内尾 優 長谷川 三希子 猪飼 哲夫 楠田 聡 内山 温 藤本 泰成 新田 收
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2016, 2017

<p>【はじめに,目的】</p><p></p><p>新生児期~乳児期初期にみられるまだ意思を持たない運動は自発運動と呼ばれ,その運動を通した経験により感覚運動発達は進む。早産児として出生した超低出生体重児は神経学的異常がみられなくとも,正期産児に比べ自発運動は劣り,感覚運動発達全般が遅延する。しかし,その自発運動を客観的に評価したものや介入による改善を報告したものは少ない。超低出生体重児の頭部は大きく,縦長扁平で,非対称な姿勢を呈しやすい特徴を持つ。そこで今回,超低出生体重児の自発運動の特徴,及び新生児用枕の有無による自発運動への即時的影響を明らかにすることを目的とした。</p><p></p><p></p><p>【方法】</p><p></p><p>対象は神経学的異常のない超低出生体重児8名(男5/女3,平均在胎週数24週6日±2週0日,平均出生体重729.4±144.8g),正期産新生児8名(男4/女4,平均在胎週数38週1日±0週6日,平均出生体重3152.6±390.2g)とした。評価機器は乳児自発運動評価を目的にプログラミングされたKinect for Windows v2を用い,両手首に異なる2色のマーカーを貼布した。評価は修正月齢約1か月に,超低出生体重児は新生児集中治療室内,正期産新生児は対象児の自宅内で外的刺激の少ない環境下にて行った。肌着1枚を着せた状態で,背臥位での自発運動を各群とも新生児用枕有無の2条件で約3分間ずつ記録した。枕の有無は対象毎に無作為に順番を入れ替えて行った。解析対象は児の機嫌が良いstate 4の状態で,かつ自発運動が連続して確認できたはじめの30秒間とし,評価機器より得られた両手首の3次元座標データ(34 Hz)から各指標 ①平均速度,②非対称性(左右上肢平均速度のLaterality Index),③突発性(加速度の尖度),④滑らかさ(躍度Jerk Index)を算出し,両群を枕の有無で比較した。統計解析は各指標に対し,対象(超低出生体重児,正期産新生児)と枕(有,無)を要因とする二元配置分散分析を行った。さらに対象の違いと枕の有無を含めた全ての4条件をBonferroni法による単純主効果の検定にて検討した。有意水準は5%とし,統計ソフトにはSPSS ver.23を用いた。</p><p></p><p></p><p>【結果】</p><p></p><p>二元配置分散分析の結果,各指標①~④に対し,枕による主効果,交互作用は認めなかった。単純主効果の検定の結果,枕無し条件での②非対称性(左右上肢平均速度のLaterality Index)は,超低出生体重児のほうが正期産新生児に比べ,有意に大きかった(p<0.01)。枕有り条件では有意差はみられなかった。指標①,②,④では有意差はみられなかった。</p><p></p><p></p><p>【結論】</p><p></p><p>神経学的異常のない超低出生体重児の上肢自発運動は,正期産児と同様の速度,突発性,滑らかさを有していたが,左右の非対称性があることが示された。また,新生児用枕の使用により非対称性を軽減する可能性が考えられた。</p>
著者
植松 海雲 猪飼 哲夫
出版者
社団法人日本リハビリテーション医学会
雑誌
リハビリテーション医学 : 日本リハビリテーション医学会誌 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.39, no.7, pp.396-402, 2002-07-18
被引用文献数
19

リハビリテーション専門病院に入院した高齢脳卒中患者374症例を対象に,自宅退院のための能力的・社会的因子条件について,classification and regression trees(CART)を用いて分析した.対象患者の自宅退院率は82.6%.単変量の解析では退院時家族構成人数,配偶者の同居の有無,functional independence measure(FIM)18項目各得点において転帰先間で有意差を認めた.CARTによる解析の結果,FIMトイレ移乗,家族構成人数からなる決定木が得られ,トイレ移乗が要介助でかつ家族構成人数が2人以下の場合は自宅退院が困難(自宅退院率21.7%)などのルールが得られた.CARTは,連続変数,カテゴリー変数のいずれをも扱うことが可能であり,結果は直感的に理解しやすく分類や予測などの研究に有効な手法と考えられた.