- 著者
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藤井 正
- 出版者
- 人文地理学会
- 雑誌
- 人文地理学会大会 研究発表要旨
- 巻号頁・発行日
- vol.2004, pp.2-2, 2004
都市圏は、爆発的に拡大する近代都市空間を把握し整備するための、単核で求心的な構造を有する結節地域概念(中心地とその関係圏という空間的まとまり)である。それに対して近年の日米大都市圏についての構造変化・多核化研究は、新たな機能地域構造を提示しつつある。都市圏は、都市機能の郊外立地とともに多核的な構造へと変化してきた。合衆国ではオフィス中枢をも含む郊外都心も形成され郊外の自立化が指摘された。しかし、各郊外領域間や中心都市との流動は少なくないし、都心群はむしろ機能分担している。日本でも中心都市通勤者数が減少をみるなど、少子高齢化や都市機能の郊外立地、郊外への転入人口の減少などのなかで東京や大阪などの大都市圏という従来の地域構造は転機を迎え、今後の住民の生活行動が問われている。 このように相互流動の展開が見られる都市圏を、本報告では新たな機能地域(相互流動による空間的まとまり)として理解したい。中心都市による単核の求心的な結節地域構造から、郊外への中心機能の立地(分散的多核化)がすすみ、合衆国では機能集積を生み出す集中的多核化によって郊外都心形成もみた。しかしそこでも都心群は機能分担し、領域間ではかなりの相互流動を示す。こうした郊外都心形成には至らないわが国大都市圏でも、郊外間流動が増加する一方、中心都市通勤者も減少を示すようになってきた。そこでは中心都市の強固に見える結節地域構造の下層で展開する分散的多核化により、やはり相互流動の展開する新たな機能地域構造がその重要性を増している。また都市政策面で盛んに主張されるコンパクトシティだが、それらが形成する都市圏(都市地域)全体の構造についても、同様の視角からの検討が今後求められよう。