著者
田中 宏子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.55, 2012

【目的】内閣府の有識者会議は、東海・東南海・南海地震が今世紀前半にM9として発生すると想定している。さらに、日本全国には約2,000に上る活断層があると言われており、それらの活断層の中にはM7クラスの地震をもたらすものが確認されている。大規模地震発生の切迫性が高まっている中、生徒たちも自分や家族の命は自分たちで守るという重要性を強く自覚し、その実効性が今緊急に求められている。先の東日本大震災では津波防災教育を受けていた岩手県釜石市の子ども達の多くが生き残った。津波防災教育の有効性が確認されたが、これらは地震発生時の津波を主としたものである。本研究は地震災害全体を取り上げ、山崎<sup>1)</sup>が提案する、教科を主軸とする減災教育カリキュラムの理論に基づき、地震災害という非常時に生徒が即時に有効に対応できる家庭科授業の開発と強化を目的とする。<br>【方法】まず、学習指導要領の中に分散している減災の要素を全て拾い集めて整理し、児童・生徒の発達段階を考慮しながら、家庭科授業に於ける地震災害対応授業の内容とそのねらいを明らかにした。次に2009年11月に滋賀県公立の小学校90校と中学校40校の教諭と2011年7月に開催された滋賀県学校安全研修会防災教育指導者研修に参加した教諭を対象として、減災教育に関する調査を実施した。以上を踏まえ、既往の防災・減災教育に関する実践報告を参考にしながら、家庭科教育に於ける地震災害対応授業案を作成し、その一部の実践を試みた。<br>【結果及び考察】<br>1. 教科の中に組み込む地震災害に関する学習<br> 2009年の調査では、小学校で約4割、中学校で約5割の教室で大型備品の転倒・落下防止対策がなされていなかった。中学校においては自然災害の内容を含まない教科を担当する教諭は備災行動が遅れがちであり、教諭の担当教科と対策の間に関連がみられた。学校の減災を推進するには、全ての教科に災害に関する学習を組み込むことが有効であると考えた。そこで災害に関わる学習を、どの学年の何の教科で、どのような内容でできるかを自由記述で教諭に尋ねたところ、2009年、2011年の調査とも、どの教科においても授業案がだされ、全教科に災害教育を組み込むことができることを確認した。家庭科はその特性から、学校の災害対応力を強化するための先導的役割を果たしていきたい。<br>2.東日本大震災を経ての災害教育の変化<br> 2009年と2011年の調査から得た授業案を精査した結果、震災前と震災後で、生徒自身が自分で対応方法を「考える」指導方法をとる授業案が25.2%から55.6%へと増加した(p<0.001)。そこで地震災害対応授業では、生徒自身が自分で対応方法を「考える」ことを重視した。<br>3.災害状況のイメージ<br> 2009年の調査より、被災地に赴いての体験が減災行動に影響することを確認した。従って全ての教職員、児童・生徒が被災地を訪れることが望ましいが、時間的、空間的、経済的制約がある。また、女性教諭は現地に赴く比率が低いという性差もみられた。そこで現地体験が困難な場合、災害状況を感性で捉えて実体化するために映像による疑似体験を地震災害対応授業に導入した。<br>4.家庭科授業案<br> 災害時に対応できる冷静で俊敏な行動性を高める避難訓練授業をベースに、非常持ち出しベストのポケットに入れる物、家族災害計画、家庭にある危険要素、地震に強い家や地盤、地域の危険、エネルギー依存型のライフスタイルを考える授業などを作成した。これらの授業は宿題を通じて家庭と協働し、生徒自身に加え、家族や地域住民の減災に対する意識や行動を促すことをねらいとする。<br>1)&nbsp; 山﨑古都子、田中宏子:滋賀県における巨大自然災害にともなうリスクについての総合的研究、滋賀大学教育研究プロジェクトセンター報告書、2010.

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