著者
田中 宏子 植松 奈美 梁瀬 度子
出版者
Japan Human Factors and Ergonomics Society
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.25, no.6, pp.347-356, 1989-12-15 (Released:2010-03-11)
参考文献数
14

空間の心理評価における実験方法の検討である. まず, 実大模型, 縮尺模型およびスライドの3つの評価対象における心理量の関連をSD法により検討した. 取り上げた要因は居間に置かれた家具の量と配置である. 因子分析の結果, いずれの評価対象も2つの共通因子が析出され, 価値因子と活動性因子と意味づけた. 活動性因子においては3者の感覚は非常に似通っていたが, 価値因子については在室感・臨場感といった空間と人間との相互作用が影響しており, 空間の価値判断と深い関わりがあると考えられる. ついでSD法の評価の妥当性を確認するために, ME法, 一対比較法の比較検討も試みた. その結果, かなりの整合性が認められた.
著者
田中 宏子 乾 康代
出版者
人間-生活環境系学会
雑誌
人間と生活環境 (ISSN:13407694)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.93-102, 2015 (Released:2018-01-10)
参考文献数
12
被引用文献数
1

本研究は、東日本大震災発生時に茨城県内に居住し、震災によって避難を強いられた住民を対象として、災害発生1年半後に追跡調査を行い、取得したデータのうちから、"子どものいる避難世帯の生活状況"というテーマを設定して研究を行った。子どものいる世帯の避難生活は、原子力災害からの避難が背景にあるがゆえに、周辺被災地である茨城県でも、特異な心理、生活上の困難を、他の世帯型より多く抱えていることが明らかとなった。震災により茨城県外に避難した若い子育て世帯の意向は、帰還が約1割、他所で定住が約5割であり、将来どこに住むかわからない避難継続は約4割であった。原子力災害がもたらす放射能に対する恐怖感に基づく避難は、いずれ元の場所に戻るという明快なものではなく、複雑で深刻な局面を包含していた。また、避難継続世帯は、帰郷世帯や避難定住世帯に比べて、子どもの健康問題を抱える世帯が多かった。
著者
田中 宏子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.55, 2012

【目的】内閣府の有識者会議は、東海・東南海・南海地震が今世紀前半にM9として発生すると想定している。さらに、日本全国には約2,000に上る活断層があると言われており、それらの活断層の中にはM7クラスの地震をもたらすものが確認されている。大規模地震発生の切迫性が高まっている中、生徒たちも自分や家族の命は自分たちで守るという重要性を強く自覚し、その実効性が今緊急に求められている。先の東日本大震災では津波防災教育を受けていた岩手県釜石市の子ども達の多くが生き残った。津波防災教育の有効性が確認されたが、これらは地震発生時の津波を主としたものである。本研究は地震災害全体を取り上げ、山崎<sup>1)</sup>が提案する、教科を主軸とする減災教育カリキュラムの理論に基づき、地震災害という非常時に生徒が即時に有効に対応できる家庭科授業の開発と強化を目的とする。<br>【方法】まず、学習指導要領の中に分散している減災の要素を全て拾い集めて整理し、児童・生徒の発達段階を考慮しながら、家庭科授業に於ける地震災害対応授業の内容とそのねらいを明らかにした。次に2009年11月に滋賀県公立の小学校90校と中学校40校の教諭と2011年7月に開催された滋賀県学校安全研修会防災教育指導者研修に参加した教諭を対象として、減災教育に関する調査を実施した。以上を踏まえ、既往の防災・減災教育に関する実践報告を参考にしながら、家庭科教育に於ける地震災害対応授業案を作成し、その一部の実践を試みた。<br>【結果及び考察】<br>1. 教科の中に組み込む地震災害に関する学習<br> 2009年の調査では、小学校で約4割、中学校で約5割の教室で大型備品の転倒・落下防止対策がなされていなかった。中学校においては自然災害の内容を含まない教科を担当する教諭は備災行動が遅れがちであり、教諭の担当教科と対策の間に関連がみられた。学校の減災を推進するには、全ての教科に災害に関する学習を組み込むことが有効であると考えた。そこで災害に関わる学習を、どの学年の何の教科で、どのような内容でできるかを自由記述で教諭に尋ねたところ、2009年、2011年の調査とも、どの教科においても授業案がだされ、全教科に災害教育を組み込むことができることを確認した。家庭科はその特性から、学校の災害対応力を強化するための先導的役割を果たしていきたい。<br>2.東日本大震災を経ての災害教育の変化<br> 2009年と2011年の調査から得た授業案を精査した結果、震災前と震災後で、生徒自身が自分で対応方法を「考える」指導方法をとる授業案が25.2%から55.6%へと増加した(p<0.001)。そこで地震災害対応授業では、生徒自身が自分で対応方法を「考える」ことを重視した。<br>3.災害状況のイメージ<br> 2009年の調査より、被災地に赴いての体験が減災行動に影響することを確認した。従って全ての教職員、児童・生徒が被災地を訪れることが望ましいが、時間的、空間的、経済的制約がある。また、女性教諭は現地に赴く比率が低いという性差もみられた。そこで現地体験が困難な場合、災害状況を感性で捉えて実体化するために映像による疑似体験を地震災害対応授業に導入した。<br>4.家庭科授業案<br> 災害時に対応できる冷静で俊敏な行動性を高める避難訓練授業をベースに、非常持ち出しベストのポケットに入れる物、家族災害計画、家庭にある危険要素、地震に強い家や地盤、地域の危険、エネルギー依存型のライフスタイルを考える授業などを作成した。これらの授業は宿題を通じて家庭と協働し、生徒自身に加え、家族や地域住民の減災に対する意識や行動を促すことをねらいとする。<br>1)&nbsp; 山﨑古都子、田中宏子:滋賀県における巨大自然災害にともなうリスクについての総合的研究、滋賀大学教育研究プロジェクトセンター報告書、2010.
著者
永田 智子 赤松 純子 榊原 典子 鈴木 真由子 鈴木 洋子 田中 宏子 山本 奈美
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.56, 2013

1.問題の所在と研究の目的  家庭科教員を取り巻く現状は厳しい。小学校においては継続的に家庭科の実践研究を行う教員は少なく,家庭科授業の手本を示してくれる先輩教員や情報交換できる同僚が身近にいないことが多い。別の方法で小学校家庭科の授業者を支援する手立てが必要である。  小倉ら(2007)は,全国の小中学校における日々の理科授業の改善に役立てるため,優れた特徴をもつ理科授業をビデオ収録するとともに,その実践の何が優れているかを具体的に示すことによって,理科を指導する教師が参考にすることを目的とした研究を行った。本研究の基本的な発想は小倉らの研究に依拠する。つまり家庭科授業をビデオ収録し,その指導案を集めるだけでなく,家庭科教育の有識者が,その授業の何が優れており,何が課題なのかを具体的に示すことによって,家庭科の授業実施や改善を支援できると考えた。  ただし,小倉らの研究では,授業ビデオと報告書に掲載された評価コメントを,視聴者自身が対応付けながら視聴しなければならない点で不自由がある。そこで,共有された授業風景動画の特定場面と討論中の発言内容の対応を明示化する動画共有システムVISCO(小川ほか2009)を利用することにした。VISCOではコメントを具体的な映像場面に直接付与すると,吹き出しのように表示することなどが可能になるため,視聴しやすくなることが期待できる。  そこで,小学校家庭科授業の実施・改善を支援することを目指し,優れた点や課題点などのコメントを授業ビデオとともに閲覧することのできる動画共有システムと家庭科授業ビデオを一つのパッケージとして開発することを本研究の目的とした。 2.パッケージの開発手順と特徴  今回開発したパッケージには,VISCOおよび7本の小学校家庭科授業の動画ファイル,各授業の指導案が含まれている。   VISCOはWindows7を推奨環境とするシステムで,動画の映像場面にコメントを付与すると,インターネットを通じてコメント情報がサーバに蓄積される。視聴時には,インターネットを通じて,蓄積された複数人のコメント情報を動画上に吹き出しの様に重ねて表示させることができる。またコメントはリスト表示され,そこからコメントを挿入した場面に動画を移動させることもできる。  小学校家庭科授業およびその指導案は日本家庭科教育学会近畿地区会の有志によって収集・編集された。授業は学習内容A~Dから各1本以上とし(A=1本,B=2本,C=3本,D=1本),題材(テーマ)は重ならないように調整した。授業は学校長の許諾を得た上で撮影し,かつ子どもの名前や顔にはモザイク加工を施した。音声が聞き取りにくい場面にはテロップを付け,授業内容がわかる程度の長さにカットした(最短約16分,最長約38分,平均約24分)。  このように編集された7本の授業ビデオに,教員養成系大学・学部で家庭科教育に携わる研究者7名が分担して,VISCOを使って優れた点や課題・助言,解説等のコメントを付与した。1本当たりのコメント者数は3名,コメント数は平均48.3±11.5件であった。 3.今後の課題 小学校と同様の手続きで中学校・高等学校家庭科教育のパッケージを開発するとともに,研究者の付与したコメントの妥当性や有効性を検証することが今後の課題である。 本研究はJSPS科研費 24531124の助成を受けたものである。参考文献 小倉康ほか(2007)優れた小中学校理科授業構成要素に関する授業ビデオ分析とその教師教育への適用,平成 15 年度~18 年度科学研究費補助金 基盤研究(A)(1) 研究成果報告書 小川修史・小川弘・掛川淳一・石田翼・森広浩一郎(2009)協調的授業改善を支援するための動画共有システムVISCO 開発に向けた実践的検討,日本教育工学会論文誌,Vol.33, Suppl., 101-104
著者
佐々 尚美 加藤 佐千子 田中 宏子 貴田 康乃
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会誌 (ISSN:03862666)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.226-233, 2003-10-01
被引用文献数
7

The purpose of the investigation is to explain the influence of meals with adults on elementary students' food consciousness, the food attitudes and the food knowledge. It was carried out with elementary school students in the fifth and the sixth grades, and answers were obtained from 667 elementary students. The results of the investigation were as follows. The rate of eating both staple foods and the side dishes is higher in meals with adults. The elementary school students who had meals with adults had many conversations, felt the meals were pleasant, were very satisfied, looked forward to them, were careful of their health, and helped preparing for the meal. Their food knowledge was also high. Most of the elementary school students that had meals alone complained about the defects of the physical condition. It became clear that meals with adults influenced elementary school students' food consciousness, food attitudes and the food knowledge. It was important that there was an adult at the time of the meals, and that food education in the family was important for elementary school fifth and sixth grade students.
著者
山崎 古都子 田中 宏子
出版者
滋賀大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究の目的は、日本の住宅の長寿化と、減災を促進することである。本論では生活実務に内在するジェンダー性が、住宅管理行動の減衰と技術低下の傾向を生み、それが住宅の長寿化の阻害要因であることを検証した。また、居住者には根強い建て替え意識があることが減災に対する無関心を生んでいることを明らかにした。従って、住宅の長寿命化、減災両側面から住宅の管理責任意識を発揚する必要がある。そのために本研究では、地域と、学校が連携して居住者を育てる減災教育カリキュラムを開発した。