- 著者
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日景 弥生
- 出版者
- 日本家庭科教育学会
- 雑誌
- 日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
- 巻号頁・発行日
- vol.55, 2012
<b>はじめに<br></b><b></b> 家庭科の授業で行われる実習は、学習の手段として位置付けられている。発表者は、2007年以降、小学校家庭科学習内容に関する児童生徒の知識および技能の実態調査を行っており、同一対象者に対し、1回目のボタン付け結果を提示することにより2回目は「できた」割合が高くなったこと、生活技能が高い人は自己肯定感が高いこと、ジェンダーにとらわれている男子児童は生活技能を積極的に習得しようとしないため技能程度が低いこと、被服製作や調理に関する知識が高い生徒は技能程度も高いこと、などを報告している。<br> 以上のようなことを踏まえ、本研究では、青森と東京都において小・中学生を対象に、地域における知識や技能の実態を調査することを目的とした。<br><b>方法<br></b><b>1.アンケート調査<br></b>1)調査時期および調査対象【調査対象】青森は小学5年生106名、中学1年生188名、中学3年生193名、東京は小学5年生154名、中学1年生157名、中学3年生152名(以下、小5、中1、中3)とした。【調査時期】2011年5月~12月に実施した。<br>2)調査内容および方法<br>【学校以外の実践経験】学校以外での裁縫と調理の経験の有無を、「はい」または「いいえ」で回答させた。<br>【被服製作用語と調理用語】小学校家庭科教科書から、被服製作技能を伴う用語17項目と、調理技能を伴う用語20項目について、「できる」または「できない」で回答させた(技能の自己評価)。<br><b>2.「ボタン付け」テスト<br></b>1)調査時期および調査対象;上記のアンケート調査と同じとした。<br>2)調査方法<br>【試料】綿ブロード,縫い針,糸を用いた。<br>【テスト方法】「布に二つ穴ボタンをつけなさい」と指示した。<br>【評価方法】評価基準を決めて6つの項目により評価した。<br><b>結果および考察<br></b><b>1.学校以外の実践経験<br></b> 学校以外で裁縫をしたことのある者の割合は、男子では、小5、中1、中3の順に、青森では46.2%、46.0%、68.4%、東京では68.4%、75.6%、80.5%、女子では青森が81.5%、94.3%、88.8%、東京が91.0%、97.5%、86.7%となり、いずれの地域でも男子は学年進行とともに高くなったが、女子ではどの学年による差はみられなかった。この結果から地域における違いをみたところ、小5と中1の男子では有意差がみられ、東京が優位になったが、女子では有意差がみられなかった。<br> 学校以外で調理をしたことのある者の割合は、男子では、小5、中1、中3の順に、青森では90.7%、83.7%、94.9%、東京では91.9%、93.8%、96.9%、女子では青森が95.9%、96.3%、95.0%、東京が94.1%、98.6%、98.5%となり、裁縫経験と同様に、いずれの地域でも男子は学年進行とともに高くなったが、女子ではどの学年による差はみられなかった。また、地域による違いはみられなかった。<br><b>2.用語に関する知識する知識</b> <br> 青森の子ども達の被服製作用語の「知っている」割合は、[用具]は被服製作用語、調理用語ともに小5が最も高く、小5から中3までほぼ同じ値を示した。小5から中1にかけて被服製作用語の[縫製方法]は約10ポイント、[布・型紙]は約40ポイント増加した。調理用語は、どの学年でもほぼ同じ値だった。<br> 一方、東京の子ども達の被服製作用語と調理用語の「知っている」割合も、青森とほぼ同様な傾向を示したが、その割合は青森より高い値を示した。また、東京では小5や中1が対象学年の中で最も高くなった語群もみられ、特に「できる」割合で顕著にみられた。<br> 地域のおける違いをみたところ、被服製作用語、調理用語ともに小5、中1では東京都の方が優位な項目が多く、特に男子で顕著にみられた。しかし、中3では他の学年に比べて、有意差がみられた項目が少なく、両地域に大きな差はみられなかった。<br><b>3.「ボタン付け」テスト<br></b><b> </b>ボタンつけの調査評価項目については、どの学年でも青森の方が高かったが、あまり大きな差はなく、有意差もあまりみられなかった。また、青森と東京ともに女子の方が高い点数の割合が多かった。<b> </b>