著者
梛野 綾子 日景 弥生
出版者
弘前大学教育学部
雑誌
弘前大学教育学部紀要 (ISSN:04391713)
巻号頁・発行日
no.99, pp.117-124, 2008-03-25

近年、学校における男女混合名簿の採用率は総じて増加傾向にある。しかし、男女混合名簿は児童生徒への教育的効果が明示されにくいことや、健康診断では別名簿を使用するなどの事務的な煩雑さのため、採用を躊躇する学校もある。そこで、本研究では、混合名簿採用校と未採用校における学校生活に対する児童とその保護者のジェンダー平等意識を調査し、名簿が児童や保護者に与えた影響を探ることを目的とした。 その結果、児童の意識は、採用校の方が未採用校より有意に「敏感」となり、採用校の児童は混合名簿を肯定的に受け止めていることがうかがえた。保護者の意識は、未採用校の方が採用校より有意に「敏感」となった。児童と保護者の意識の関連をみたところ、採用校の方が児童の意識が保護者のそれより「敏感」なケースが多くみられた。また、採用校では保護者が「敏感」で児童が「鈍感」の組み合わせはなかった。これらのことより、採用校における児童の意識には混合名簿が影響を及ぼしている可能性が示唆された。
著者
佐々木 多津子 日景 弥生
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集 第47回日本家庭科教育学会大会
巻号頁・発行日
pp.39, 2004 (Released:2005-02-01)

【目的】家庭科で高校生にジェンダーに気づく授業を実践するときに、高校生のジェンダー観を数値としてつかむことが必要であると考える。高校生のジェンダー観に関する調査はいくつかあるが、それらは高校生の意識を中心とした調査(例えば、「~だと思いますか。」)であり、行動を含む実態調査の報告はあまりない。そこで、ジェンダーに気づく授業を実践するにあたり、高校生のジェンダー観を把握することを目的とした。【方法 】(1)調査対象者及び方法2002年5月下旬~6月上旬に、青森県内の高等学校3校(合計384名;内訳は男子158名、女子226名)で実施した。質問紙法により各学校の家庭科の授業時間に実施したため回収率は100%だったが、データ分析の関係から回答中に「無回答」があった生徒は調査対象から外し、有効回答率は94.1%であった。(2)調査項目アンケート項目は(財)東京女性財団が作成した「ジェンダーチェック学校生活編」「ジェンダーチェック家族・家庭生活編」を参考にし「意識」・「行動」・「感情」に分けて各12項目作成した。(3)集計方法各項目においてジェンダーフリーまたはジェンダーセンシティブと回答した者の割合をジェンダーフリー度(以下フリー度とする)とし、それらの選択肢に対して1点の得点を与え、それ以外は0点とした。このようにして得られた合計点は高い方がジェンダーフリーを示すようにした。【結果および考察】(1)高校生のジェンダーフリー度検定の結果、学校間の有意差はみられなかった。男女別にみると、3校とも女子の方が男子よりも点数が高くフリーとなり、この結果は他の調査とも一致した。各カテゴリー(「意識」「行動」「感情」)におけるフリー度の平均から、「意識」(71.0%)>「行動」(38.0%)>「感情」(31.9%)の順となった。このことから、高校生は「意識」は全般に高いが、「行動」や「感情」ではあまり高くないことが明らかとなった。(2)高校生の実態調査各項目ごとの男女の有意差を検定により調べた結果、36項目のうち16項目で有意差がみられ、男女の有意差についても「意識」より「行動」「感情」で多くみられた。これらの結果より、女子は「男は仕事、女は家庭」という性別役割を多くの面で否定しつつも「仕事を持つ」という意識が低く、結婚したら仕事を辞め、養ってもらいたいと思っている実態も明らかとなった。(3)実態調査から考えるジェンダー学習以上のことから、ジェンダー学習に必要な授業について、次の2つのことが得られた。1つ目は高校生は「意識」ではフリーであることから自分に置き換え、フィードバックして気づくことのできる授業が必要である。2つ目は、内容として「働くことは両性に必要である」「生活的自立も両性に必要である」ことを実感できることが必要である。
著者
川端 博子 日景 弥生 鳴海 多恵子
出版者
日本衣服学会
雑誌
日本衣服学会誌 (ISSN:09105778)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.99-107, 2004 (Released:2021-08-19)
参考文献数
6
被引用文献数
2

We conducted a survey on self-evaluations of skillfulness and attendance in daily activities for private high school students in Tokyo. We also conducted a threads-tying test to determine functional degrees of fingers and hands. We analyzed how skill or lack of skill in using fingers and hands and self-evaluations of skillfulness related to attitudes in daily activities and consciousness towards practical classes. The results are as follows :1. Only about 30% of the high school students evaluated themselves skillful in fingers and hands. They tended to have less confidence about their skillfulness in fingers and hands.2. Analyzing the attitudes in daily activities and reasons, related to self-evaluation of skillfulness, confidence about skillfulness had a relation with positive attendance in daily activities and marks/grades at practical classes.3. The girl students achieved more on threads-tying test than the boy students, which was considered to have relation with the frequency in using fingers and hands in daily activities.4. Self-evaluation of skillfulness did not necessarily coincide with actual skillfulness determined by the test. The sample was divided into the four groups ; skillful, over-estimate, under-estimate and unskillful groups. Considering the characteristic of each group, matters to be paid attention to in educational method in practical classes including sewing class were discussed.
著者
日景 弥生
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.55, 2012

<b>はじめに<br></b><b></b>&nbsp; 家庭科の授業で行われる実習は、学習の手段として位置付けられている。発表者は、2007年以降、小学校家庭科学習内容に関する児童生徒の知識および技能の実態調査を行っており、同一対象者に対し、1回目のボタン付け結果を提示することにより2回目は「できた」割合が高くなったこと、生活技能が高い人は自己肯定感が高いこと、ジェンダーにとらわれている男子児童は生活技能を積極的に習得しようとしないため技能程度が低いこと、被服製作や調理に関する知識が高い生徒は技能程度も高いこと、などを報告している。<br>&nbsp; 以上のようなことを踏まえ、本研究では、青森と東京都において小・中学生を対象に、地域における知識や技能の実態を調査することを目的とした。<br><b>方法<br></b><b>1.アンケート調査<br></b>1)調査時期および調査対象【調査対象】青森は小学5年生106名、中学1年生188名、中学3年生193名、東京は小学5年生154名、中学1年生157名、中学3年生152名(以下、小5、中1、中3)とした。【調査時期】2011年5月~12月に実施した。<br>2)調査内容および方法<br>【学校以外の実践経験】学校以外での裁縫と調理の経験の有無を、「はい」または「いいえ」で回答させた。<br>【被服製作用語と調理用語】小学校家庭科教科書から、被服製作技能を伴う用語17項目と、調理技能を伴う用語20項目について、「できる」または「できない」で回答させた(技能の自己評価)。<br><b>2.「ボタン付け」テスト<br></b>1)調査時期および調査対象;上記のアンケート調査と同じとした。<br>2)調査方法<br>【試料】綿ブロード,縫い針,糸を用いた。<br>【テスト方法】「布に二つ穴ボタンをつけなさい」と指示した。<br>【評価方法】評価基準を決めて6つの項目により評価した。<br><b>結果および考察<br></b><b>1.学校以外の実践経験<br></b>&nbsp; 学校以外で裁縫をしたことのある者の割合は、男子では、小5、中1、中3の順に、青森では46.2%、46.0%、68.4%、東京では68.4%、75.6%、80.5%、女子では青森が81.5%、94.3%、88.8%、東京が91.0%、97.5%、86.7%となり、いずれの地域でも男子は学年進行とともに高くなったが、女子ではどの学年による差はみられなかった。この結果から地域における違いをみたところ、小5と中1の男子では有意差がみられ、東京が優位になったが、女子では有意差がみられなかった。<br>&nbsp; 学校以外で調理をしたことのある者の割合は、男子では、小5、中1、中3の順に、青森では90.7%、83.7%、94.9%、東京では91.9%、93.8%、96.9%、女子では青森が95.9%、96.3%、95.0%、東京が94.1%、98.6%、98.5%となり、裁縫経験と同様に、いずれの地域でも男子は学年進行とともに高くなったが、女子ではどの学年による差はみられなかった。また、地域による違いはみられなかった。<br><b>2.用語に関する知識する知識</b> <br>&nbsp; 青森の子ども達の被服製作用語の「知っている」割合は、[用具]は被服製作用語、調理用語ともに小5が最も高く、小5から中3までほぼ同じ値を示した。小5から中1にかけて被服製作用語の[縫製方法]は約10ポイント、[布・型紙]は約40ポイント増加した。調理用語は、どの学年でもほぼ同じ値だった。<br> 一方、東京の子ども達の被服製作用語と調理用語の「知っている」割合も、青森とほぼ同様な傾向を示したが、その割合は青森より高い値を示した。また、東京では小5や中1が対象学年の中で最も高くなった語群もみられ、特に「できる」割合で顕著にみられた。<br>&nbsp; 地域のおける違いをみたところ、被服製作用語、調理用語ともに小5、中1では東京都の方が優位な項目が多く、特に男子で顕著にみられた。しかし、中3では他の学年に比べて、有意差がみられた項目が少なく、両地域に大きな差はみられなかった。<br><b>3.「ボタン付け」テスト<br></b><b> </b>ボタンつけの調査評価項目については、どの学年でも青森の方が高かったが、あまり大きな差はなく、有意差もあまりみられなかった。また、青森と東京ともに女子の方が高い点数の割合が多かった。<b>&nbsp;</b>
著者
日景 弥生 青木 香保里 志村 結美
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会誌 (ISSN:03862666)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.125-135, 2017 (Released:2018-11-01)
参考文献数
10
被引用文献数
1

The purpose of this research is to clarify perspectives of teachers without the license of home economics education (LHEE) by comparing those with the LHEE. Perspectives of teachers with the LHEE were better than those of teachers without the LHEE. Additionally, the teachers with the LHEE thought that problem solving ability was more important, and they utilized resources such as homes and community which were the basis of students’ livelihood. However, teachers without the LHEE had almost no time to research materials for teaching some subjects in addition to home economics education, and they were able to take the line of least resistance such as worksheets. The quality of home economics education was influenced by difference between teachers with the LHEE and those without the LHEE. In order to ensure study opportunity, the boards of education need to prepare support system for teachers without of the LHEE, and reform teachers’ license system immediately.
著者
山田 桂子 日景 弥生
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.44, pp.36, 2002

&lsaquo;目的&rsaquo;第1報で報告した測定項目をもとに、中学生とその保護者のジェンダー観を比較し、両者の意識の関連を検討することを目的とした。<BR>&lsaquo;方法&rsaquo;1. 調査対象と時期;第1報と同様である。2. ジェンダー観の比較;中学生とその保護者、それぞれのアンケート項目で近似した項目を比較した。さらに、中学生と保護者を男女に分け、それぞれ得点の高い者(以下バイアス群)と低い者(以下フリー群)から順に約20%を抽出し、各群を詳細に分析した。<BR>&lsaquo;結果および考察&rsaquo;1. 両者のジェンダー観の比較;アンケートの近似項目では中学生およびその保護者ともほぼ同じ傾向を示した。しかし、「運動会の応援団長はいつも男子がやる方がよい」では保護者の方がフリー傾向を示したが、近似項目である「PTA会長は男性の方が活動しやすいと思う」ではバイアス傾向となり、この傾向は母親の方が父親より顕著にみられた。これより、保護者が自分自身に直接的に関わるものとそうでないものとでは無意識のうちに違う判断をしていることがうかがえた。2. 両者のジェンダー観の関連;両親がフリー群の場合は中学生もフリー群が、両親がバイアス群の場合は中学生もバイアス群が多くなった。これより、父親と母親のジェンダー観が似ている場合、その子どもである中学生も両親と同じ傾向となることが示唆された。