著者
北村 俊平
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.25-37, 2015
被引用文献数
1

鳥類は地球上のさまざまな生態系において,多様な生態系サービスを担っている.本総説では,鳥類による花粉媒介と種子散布についての知見をまとめた.動くことのできない植物にとって,花粉媒介と種子散布は自らの遺伝子を広げる数少ない機会の一つであり,多くの鳥類が花蜜や果実を餌資源として利用している.自然実験を利用した研究から,花粉媒介者や種子散布者である鳥類を喪失することで,実際に植物に花粉制限が生じ,更新過程が阻害されている事例や群集レベルでも種子散布が機能していない事例が明らかになってきた.現段階では例数は少ないものの,鳥類による種子散布の経済的価値を評価した研究も行われている.スウェーデンの都市公園では,公園内の優占樹種であるコナラ属の種子散布者であるカケス1ペアの経済的価値は,人間が種子の播種や稚樹の植樹作業を行った場合にかかる費用に換算すると58万円から252万円に相当する.一方,鳥類は優秀な種子散布者であるがゆえに外来植物の分布拡大を促進する負の側面も知られている.これまで見過ごされてきた鳥類による花粉媒介や種子散布の情報を蓄積していくことで,それらの生態系サービスをうまく活用する方策,ひいては鳥類を含む生物多様性の保全に結びつけていくことができるのではないかと期待される.

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