- 著者
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藤川 清史
- 出版者
- 環太平洋産業連関分析学会
- 雑誌
- 産業連関 (ISSN:13419803)
- 巻号頁・発行日
- vol.10, no.4, pp.35-42, 2002
- 被引用文献数
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日本は1997 年の地球温暖化防止会議(COP3)の議長国になるなど,地球温暖化問題の解決に積極的に関与してきた。その際交わされた「京都議定書」では,日本は温暖化ガス排出の6%削減を公約した。議定書はその実際の運営方法に関して紛糾したが,昨年秋のマラケシュでようやく最終合意をみた。本年6月に議定書は日本でも批准され,われわれも本格的に温暖化防止対策に取り組まなくてはならない。マラケシュ合意では,二酸化炭素の森林吸収分を多く認めてもらったとはいえ,産業界が推進している「自主行動計画」のみでの公約達成は困難であろうといわれる。このような状況で「炭素税導入やむなし」との空気が醸成されつつあるのだが,問題になるのは新税導入の国民受容性である。炭素税の負担については,国民の属する所得階層や居住する地域によって不公平が生じる可能性があるからである。本稿では,産業連関表と家計調査を用いて,どの程度の負担格差が生じるのかを試算してみた。確かに所得階層別・地域別での炭素税負担の格差は大きく,格差緩和のための何らかの租税政策が採用されるべきであることが示唆される。