著者
田辺 けい子
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.35-47, 2015

<b>目 的</b><br> 2014年現在でも決して少なくなく,将来的にも増加が見込まれる子どもを産まない女性たちの生殖観や身体観に着目し,これを明らかにすることによって女性の健康支援の在り様を考察することである。<br><b>対象と方法</b><br> 聞き取り調査に基づく質的研究である。対象は30才から80才代までの女性29名である。ただし生殖年齢にある30才代と40才代の16名は,本研究の主題である子どもを産まない女性たちに特徴的な側面が色濃くでるよう,子をもうけることに消極的あるいは否定的な女性を選定した。質問内容は(1)子や孫の人数とその人数に満足しているか否か,(2)月経歴および初経と閉経に関連する体験,(3)保健医療行動の内容,および,(1)~(3)に関連する経験の内容や態度の理由,周囲の人々との関係性,対象者の生殖観,身体観に反映すると推察される経験や出来事についても可能な限り詳しく聞き取り,医療人類学的考察を行った。<br><b>結 果</b><br> 3つの語りの特徴が確認できた。<br>1.産まないことが自らの身体に付与されている生殖能を疎かにするかのような身体観を作っていること<br>2.月経には益するところがないという考え方<br>3.女性身体の生物学特性ことに身体的リスクに関する情報がないこと<br> これらの結果から,対象者は「生殖から離れている身体」といえるような位相にあることが確認でき「生殖から離れている身体」に内在する4つの課題と2つの強みが明らかになった。<br><b>結 論</b><br> 「生殖から離れている身体」に内在する4つの課題と2つの強みを踏まえた支援があれば「生殖から離れている身体」の健康は一定程度担保しうることが示唆された。<br> 課題とは次の4点である。<br> 1.自らの身体の生殖にかかわる属性の放棄<br> 2.個人の人生の問題としてのみに閉ざされる生殖<br> 3.育まれてこなかった生殖を肯定的にみたり,生殖可能な身体として自らの身体をケアする生活態度<br> 4.無性あるいは中性的な身体に価値を置くこと<br> 強みとは次の2点である。<br> 1.老齢期を健康に過ごさねばならないという十分な動機と欲求<br> 2.女性の身体は自然のバランスによって健康が保たれるといった身体観や健康観

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