- 著者
-
斎藤 清二
- 出版者
- 日本箱庭療法学会
- 雑誌
- 箱庭療法学研究
- 巻号頁・発行日
- vol.27, no.1, pp.75-82, 2014
1991年から2000年の10年間に,84名の摂食障害患者(神経性食思不振症[AN]53名,神経性過食症[BN]31名)が,心理療法セッションにおいて,自身の病いの経験と夢について語ることを勧められた。12名の女性の患者(AN8名,BN4名,14歳から28歳)が研究協力者となった。これらの患者は8ヶ月から6年間経過観察され,全例が寛解に達するか,明らかな病状の改善を認めた。322編の夢の語りが収集され,物語分析法により質的に分析され,カテゴリー化された。研究協力者から報告された夢語りのテーマと構成概念は,以下のようなキーワードによって描写することができた。「孤立/混乱/自我同一性の喪失」「旅」「試練」「異界」「自己解体」「死と再生」。比喩的に言えば,研究協力者のメタ・ナラティブは,通過儀礼,変容,死と再生といったテーマに関連しており,それを通じて真の自己が実現される一種の「探求の物語」として描写可能であった。結論として,個人レベルの人生の物語だけではなく,超個人的あるいは元型レベルの物語を共有することが,摂食障害の患者を理解し,治療的に寄り添うことを続けるために重要である。