著者
中井 大介
出版者
Japan Society of Developmental Psychology
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.539-551, 2013

本研究では,これまで思弁的論考が多く,同一の構造とされてきた,中学生の母親に対する信頼感と父親に対する信頼感の因子構造を明らかにし,それぞれに対する信頼感が生徒の学校適応感に及ぼす影響を検討した。中学生563名を対象に調査を実施した。第一に,中学生の母親に対する信頼感尺度(STM尺度)と父親に対する信頼感尺度(STF尺度)を作成し,信頼性と妥当性を検討した。その結果,(1)STM尺度は「母親への役割遂行評価」「母親への安心感」「母親への不信」の3因子構造であること,(2)STF尺度は「父親への安心・信用」「父親への不信」「父親への親近感」の3因子構造であることが明らかになった。また,中学生の母親に対する信頼感と父親に対する信頼感が生徒の学校適応感に及ぼす影響を検討したところ,(3)母親に対する信頼感,父親に対する信頼感のそれぞれが生徒の学校適応感に影響を及ぼし,その影響の様相は母親と父親の対象別,生徒の学年別・性別によって異なることが明らかになった。これらの結果から,中学生の母親に対する信頼感と父親に対する信頼感は異なる因子構造であること,それぞれに対する信頼感が学校適応感に及ぼす影響には発達差や性差が見られることが明らかになった。

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