- 著者
-
酒井 弘憲
- 出版者
- 公益社団法人 日本薬学会
- 雑誌
- ファルマシア
- 巻号頁・発行日
- vol.50, no.6, pp.558-559, 2014
爽やかな春も終わり,梅雨が近づいてきた.6月と言えば,ジューンブライドで結婚式の季節というイメージがあるのではないだろうか? 2012年のぐるなびウエディングのアンケート調査結果を見てみよう.まず既婚者(男性700名,女性432名)に「どの時期に結婚したか」という質問に対して,春~初夏(4~6月)が1番多く28.7%,続いて秋(10~11月)が23.9%と続く.結婚の意思のある未婚者(男性161名,女性178名)に「どの時期に結婚したいか」を尋ねると,秋が1番多く,53.1%,続いて春~初夏の41.0%となる.親族や友人など式への出席者側(男性1029名,女性703名)の意識では,「いつ出席したいか」という質問に対して,こちらも秋が41.0%で,続いて春~初夏の27.0%という回答であった.つまり,6月に結婚式が1番多いというわけではないのである.<br>もっと詳細に示せば,未婚者の結婚希望時期は10月が1位で6月は4位なのである.既婚者の結婚時期でも1位は11月で,6月は6~7位なのである.例外的に6月に挙式が増えた年があったが,それは,1990年と1993年である.それぞれ6月に秋篠宮,皇太子のご成婚があり,それにあやかっての挙式増加であった.現実的な話をすれば,梅雨時期で稼働率の下がるホテルや式場が欧米のロマンチックな言い伝えを利用し,ジューンブライドとぶち上げて6月の集客を回復しようと画策したのが始まりらしい.ヴァレンタイン・デーを利用してチョコレートの売り上げを伸ばそうとした製菓業界とまったく同じ構図なのである.こういうキャンペーンはそのまま鵜呑みにせず,数字の裏付けを確認することが大事である.<br>ところで,この時期になると決まって懐かしくなるのがロンドンの清々しさである.この時期のロンドンは夜も21時過ぎまで明るく,空気もカラッとしていて実に過ごしやすい.著者がロンドンを訪問する際に必ず立ち寄る場所がある.根っからのシャーロキアン(英国ではホーメジアンと呼ばれるらしい)としては,チャリングクロスのパブ・シャーロック・ホームズと言いたいところだが,同じパブでもそれはジョン・スノウ・パブなのである.と言っても読者のなかでそれを知っている人がいれば奇跡に近い話であろう.有名なエロス像のあるピカデリーサーカスからリージェント・ストリートを北に進み,ブルックス・ブラザーズの店舗の角を右手に曲がって5分ほど進み,さらに左に折れて進んだ先のブロードウィック・ストリートの左角に目指すパブは佇んでいる.別に危険な場所ではないが,普通の観光客は絶対にこんな路地裏までには入ってこないだろう.ここが生物統計学の源流の一つである疫学の"聖地"なのである.