著者
酒井 弘憲
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア
巻号頁・発行日
vol.50, no.8, pp.800-801, 2014

暑さ真っ盛りである.突然のゲリラ豪雨や竜巻の発生など,10年前には考えられなかったような気候になっている.こんなに暑いと体調を崩したり,亡くなったりする方も多かろう.<br>日本では死亡理由の第1位はがんである.報道でも日本人の2人に1人はがんになるということを見聞きされることであろう.実際にがんセンターの発表でも,生涯で何らかのがんに罹患する確率は,男性で58%,女性で43%とそれぞれ確かに2人に1人の割合である.さらに男性の4人に1人,女性の6人に1人ががんで死亡している.<br>しかし,自分の身の回りで2人に1人という高い割合でがんを患っている人がいるだろうか? 確かに死亡理由でみると2人に1人ががんで亡くなっている.しかし,がんの罹患率をみると完全に年齢に依存しているのである.男女とも50歳代から徐々に罹患が増え始め,60歳代から急増する.同じくがんセンターの公表資料に「現在年齢別がん罹患リスク」がある.例えば,30歳の男性が10年後にがんに罹患する確率はわずか0.5%,20年後に罹患する確率は2%しかないのである.50歳の男性でも10年後にがんに罹患する確率は6%,20年後に罹患する確率は18%なのである.つまり,必要以上にがんに罹ることを怖れることはないというのが今回のお話のオチである.だからといって勝手気ままな生活をして,あえて罹患リスクを高める必要はないわけで,運動や食生活に気を付けてがんに罹りにくくすることが肝要である.<br>しかし,不幸にもがんに罹ってしまった場合,やはり不安に駆られてしまうのが人情であろう.著者は,幸いにも入院するような大病に罹ったことはないが,人一倍臆病なのでそういう状態で入院した場合,看護師さんはきっと天使のように見えることであろう.<br>「クリミアの天使」と呼ばれたフローレンス・ナイチンゲールのことは,皆さんよくご承知のことと思う.しかし,彼女が看護師としての業務に就いたのは,90年の生涯のうち,わずか2年でしかないということをご存じだろうか.

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