著者
田中 彩子 川合 里奈 林 涼子 鈴木 学
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2014, 2015

【はじめに,目的】意欲とは物事を積極的に対処しようとする思考や行動であり,リハビリの遂行に重要で,ADLの自立度に影響するといわれている。意欲を向上させるには,楽しみや交流,目標設定が関係しているといわれている。趣味活動も例外ではなく,実際に導入している施設も多々存在している。先行研究で趣味活動の実施が廃用予防に効果的であったという報告はあるが,趣味活動が意欲向上に効果的であるという報告は極めて少ない。【方法】群馬県内の介護老人保健施設を利用する高齢者41名に,面接形式でアンケートを実施した。趣味に関するアンケートは,趣味の有無,内容,1週間の活動時間とした。そして意欲の程度に関しては「やる気スコア」を使用した。これは,14問の質問項目を3(全くない)~0(大いにある)の4段階判定とし,得点化した。統計処理は,Mann-Whitney検定を用いて,趣味の有無および文化的趣味と運動的趣味による「やる気スコア」得点の差異を検討した。また,趣味の頻度と「やる気スコア」得点との関係についてSpearmanの順位相関分析を用いて検討した。さらに,説明変数を趣味の頻度,目的変数を「やる気スコア」の得点に設定した単回帰分析を実施した。統計ソフトはSPSS20を使用し,有意水準は5%未満とした。【結果】アンケートに回答したのは41名(男性10名,女性31名)で年齢86.0±7.3歳であった。趣味の有無では,ある26名(63.41%),なし15名(36.58%)であった。趣味の内容に関しては,文化的趣味が20名(76.92%),運動的趣味が6名(23.07%)であった。「やる気スコア」は,趣味あり13.35±5.78点,趣味なし21.22±6.36点で前者が有意に高かった(p<0.01)。しかし,文化的趣味と運動的趣味との比較では有意差はみられなかった。また,1週間の趣味活動の合計時間とやる気スコアとの関係はp=0.481(p<0.05)となり,やや強い有意な相関がみられた。因果関係は回帰分析では,R2値は0.061と,このモデルの予測力は十分ではなかった。調整済みR2値は0.036と大きく低下していた。また,モデルの有意性もF(1.37)=2.422(p>0.05)と確立できなかった。標準回帰係数は0.248で,1週間の趣味活動の程度はやる気スコアに負の影響の傾向はあるものの,有意差はみられなかった。【考察】今回の結果から趣味活動が意欲向上に関与していることが示唆された。しかし,趣味の内容は特に関係はみられなかった。そして趣味の頻度は意欲向上に正の影響がみられることから回数の増加はよい効果をもたらすことが示唆された。しかし明らかな因果関係がみられないことから2つの因果関係は確立できず,他の要因が関係していると考えられた。【理学療法学研究としての意義】本研究では趣味活動の有無や程度と意欲向上との関係について検討し,身体機能が低下した高齢者の今後の理学療法に対する意欲や活動性向上の一助にすることを目的とした。

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