- 著者
-
菊地 裕絵
- 出版者
- 一般社団法人 日本心身医学会
- 雑誌
- 心身医学 (ISSN:03850307)
- 巻号頁・発行日
- vol.56, no.8, pp.796-800, 2016
<p>摂食障害では疾患に伴う身体的・心理的苦痛や社会機能の低下といったQOLの障害にとどまらず, 死の転帰をとることもある. 自殺は主要な死因の一つであり, 神経性やせ症での自殺による死亡率は1.24/千人年, 自殺による標準化死亡比は31.0であり, 神経性大食症ではそれぞれ0.30/千人年, 7.5と報告されている. 精神疾患の中では, 統合失調症, 大うつ病性障害, 双極性障害, 物質依存に次ぎ, 自殺による死亡率が高い. 摂食障害の中での自殺リスク要因としては排出行動・併存精神疾患の存在, 重症度などが挙げられているが, 軽症例でも自殺リスクは一般人口より高い. また, 摂食障害患者では自殺の意図を伴わない自傷行為が自殺例数に比して他の精神疾患より多いと指摘されているが, 繰り返す自傷行為が周囲の人間の疲弊や治療者の自殺リスクの過小評価につながらないよう注意が必要である.</p>