著者
西脇 泰子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.28, 2016

<br><br>【目的】日本各地域には自然環境の中から育まれた食材を中心とした日常食または行事食がある。しかし現代は地域の伝統的な料理が親から子へ伝承されにくい傾向にある。そこで1960年〜1970年頃までに定着してきた岐阜県中濃地域の郷土料理とその暮らしの背景を明らかにするために聞き書き調査を実施した。<br><br>【方法】日本調理科学会「次世代に伝え次ぐ日本の家庭料理」聞き書き調査に参画し、中濃地域の岐阜県郡上市(北部)、美濃市(中央部)、加茂郡川辺町(南部)を調査した。対象者はその地で30年以上居住した60歳代~80歳代の女性4名であり、家庭の食事作りに携わってきた人である。<br><br>【結果】郡上市では、雑穀を主とした米食で野菜や芋を中心に、「味噌煮」や「桑の木ささげの煮物」などを食した。田植え時は「朴葉寿司」が作られた。「鶏ちゃん」は各家庭で味付けが工夫され、現在は土産物になっている。夏は長良川で釣った鮎、冬は山で獲れる鹿、熊、猪の料理も食された。美濃市では、家庭で打ったうどんを「煮込みうどん」で、「だつ(里芋の茎)」料理や、「ひきずり」(鶏のすきやき)を食された。主食は、塩秋刀魚の「秋刀魚飯」、「へぼ(蜂)の炊き込みご飯」、「茶飯」と味ご飯が多い。川辺町では、米の少ない時は麦飯、山の素材(山菜・へぼなど)を多く食した。中濃地域は寒い土地柄のため保存食作りが盛んである。大根の切り干しやさきぼし、赤だつの乾燥、干し柿、漬物(大根・白菜・きのこ)などの保存食を日常食に取り入れ再調理していた。正月には「ねずし」、大根なますを作り、川魚も甘露煮、一夜干しにする。伝え継ぎたい家庭料理は、朴葉ずし、ねずし、鶏ちゃん、だつ料理、ひきずり、秋刀魚飯、茶飯、年越しのおかず、昆虫食などである。<br><br>

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