- 著者
-
小野田 尚佳
- 出版者
- 日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
- 雑誌
- 日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
- 巻号頁・発行日
- vol.33, no.3, pp.160, 2016
<p>2010年のガイドライン発刊以降にいくつかの注目すべき論文が発表されている。とくに,National Cancer Database[1]による信頼性の高い調査は,甲状腺未分化癌の臨床像を具体的な数値で示すことができている。一方で,生命予後は過去20年全く改善が認められていないと報告されている[2]。今までの治療法は意義がなかったのだろうか?これまで行われてきた集学的治療をレビューし,今後の課題を示していただいた。</p><p>探索的に行われていた化学療法の成果は,不明のままであった。甲状腺未分化癌患者を対象として国内で実施されたweekly paclitaxelによる化学療法の臨床試験[3]は,現時点での標準治療の成績を客観的に提示したものと考えられ,新規治療開発の基準となるデータとしてご紹介いただいた。</p><p>話題の中心ともいえる甲状腺未分化癌に対する最新の分子標的治療については,本号の別特集を参照されたい。</p><p>治療成績の改善を目指す上において,発症や進展に関わる基礎的研究成果の理解は重要であるが,技術の進歩によって臨床所見の裏付けとなる遺伝子異常が確認できるようになってきている。新たな治療法の創生に向けての多数のヒントが隠されている大変興味深い基礎的分野の知見をご紹介いただいた。</p><p>いずれの文章でも,難治性の希少疾患である甲状腺未分化癌の診断,治療,研究には,多施設での連携や登録制度の確立,臨床試験の充実が必要であることが述べられており,甲状腺癌診療における現在の重要課題のひとつとしてこれらの課題を読者と共有できることを希望する。</p>