著者
利根川 明子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.569-582, 2016
被引用文献数
8

本研究では, 教室における児童の感情表出と学級適応感(居心地の良さ, 被信頼・受容感, 充実感)の関連を検討した。児童の感情については, ポジティブ感情(喜び, 興味)とネガティブ感情(悲しみ, 怒り, 恐れ)に着目し, 児童がこれらの感情を表出することの効果と, 感情表出のあり方が異なる学級に所属することの効果を同時に検討した。小学校4・5・6年生の児童1,968名と担任教諭70名を対象に質問紙調査を実施し, マルチレベル分析を行った結果, ポジティブ感情をよく表出する児童ほど学級適応感が高く, ネガティブ感情をよく表出する児童ほど学級適応感が低いことが示された。また, こうした感情表出の効果には交互作用が見られ, ポジティブ感情の表出が多い児童ほど, ネガティブ感情の表出による居心地の良さの感覚と充実感の低下の度合いが低いことが示された。これらの児童レベルの効果に学級間差は見られなかった。学級レベルの効果については, 児童評定値の集計値を用いた場合と, 教師評定値を用いた場合の2つの方法で分析を行い, いずれの方法で検討した場合も, ポジティブ感情の表出が多い学級に所属している児童たちほど学級適応感を強く感じやすく, ネガティブ感情の表出が多い学級に所属している児童たちほど学級適応感を弱く感じやすいことが示された。

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