著者
森永 康子 坂田 桐子 古川 善也 福留 広大
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.375-387, 2017 (Released:2018-02-21)
参考文献数
44
被引用文献数
6

「女子は数学ができない」というステレオタイプに基づきながら, 好意的に聞こえる好意的性差別発言「女の子なのにすごいね(BS条件)」(vs.「すごいね(統制条件)」)が女子生徒の数学に対する意欲を低下させることを実証的に検討した。中学2, 3年生(研究1), 高校1年生(研究2)の女子生徒を対象に, シナリオ法を用いて, 数学で良い成績あるいは悪い成績をとった時に, 教師の好意的性差別発言を聞く場面を設定し, 感情や意欲, 差別の知覚を尋ねた。高成績のシナリオの場合, BS条件は統制条件に比べて数学に対する意欲が低かったが, 低成績のシナリオでは意欲の差異は見られなかった。数学に対する意欲の低下プロセスについて, 感情と差別の知覚を用いて検討したところ, 高成績の場合, 低いポジティブ感情と「恥ずかしい」といった自己に向けられたネガティブ感情の喚起が意欲を低めていること, 怒りなどの外に向けられたネガティブ感情はBS条件の発言を差別と知覚することで喚起されるが, 数学に対する意欲には関連しないことが示された。
著者
岡田 有司
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.419-431, 2009
被引用文献数
1

本研究の目的は, 運動部と文化部を区分して捉え, 部活動への積極性に注目しながら, (1) 部活動への参加が学校生活の諸領域, 学校への心理社会的適応とポジティブな関係にあるのか, (2) 対人関係領域の心理社会的適応への影響が部活動への参加状況によって異なるのか, について検討することであった。質問紙調査によって得られた中学生894名のデータから, 以下のことが明らかになった。まず, 部活動に積極的な生徒は全体的に部活動に所属していない生徒に比べ, 学校生活の諸領域や心理的適応の得点が高くなっていた。一方で, 部活動に積極的でない生徒は全体的に学校生活の諸領域や心理的適応の得点が無所属の生徒よりも高いという結果は得られなかった。また, 運動部の生徒は反社会的傾向が高いことが明らかになった。対人関係領域が心理社会的適応に与える影響については, 「クラスへの意識」「他学年との関係」に関しては部活動の参加状況によって影響の仕方に違いがなかったが, 「友人関係」「教師との関係」について違いがみられた。これらの知見をもとに, 学校生活における部活動のポジティブ・ネガティブな面について議論がなされた。
著者
池上 知子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.133-146, 2014 (Released:2014-12-24)
参考文献数
75
被引用文献数
8 1

社会から差別をなくそうという長年の取り組みにもかかわらず, 現代においても依然として差別に苦しむ人たちは存在する。本稿では, この問題にかかわる社会心理学の理論や研究パラダイムの変遷を追いながら, なぜ事態が改善しないのかを考察する。その一つの理由として, 差別的行動や偏見に基づく思考は, 人間が環境への適応のために獲得した正常な心理機能に根ざしていること, その機能はわれわれの意識を超えた形で働くため, これを統制することがきわめて困難である点を指摘する。そして, それにもかかわらず, 社会心理学はそれらを意識的に制御することを推奨してきたことが, 問題をさらに複雑にする結果となっていることを議論する。最後に, 最近, われわれに楽観的見通しを与えてくれる新しい観点が登場してきたことに言及する。それらは, 伝統的接触仮説を発展させた研究と潜在認知の変容可能性を検討している研究の成果に基づいている。本稿では, これらの新しい方向性についても考察する。
著者
伊藤 大幸 浜田 恵 村山 恭朗 髙柳 伸哉 野村 和代 明翫 光宜 辻井 正次
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.451-465, 2017 (Released:2018-02-21)
参考文献数
37
被引用文献数
5 7

クラスサイズ(学級の人数)が学業成績および情緒的・行動的問題に及ぼす影響について,要因の交絡とデータの階層性という2つの方法論的問題に対処した上で検証した。第1に,学年ごとの人数によってのみクラスサイズが決定されている学校を調査対象とする自然実験デザインにより,学校の裁量に起因する要因の交絡や逆方向の影響の発生を防いだ。第2に,マルチレベルモデルの一種である交差分類(cross-classified)モデルを用いて,データの特殊な階層性を適切にモデル化した。第3に,学校内中心化によって学校間変動を除外することで,クラスサイズの純粋な学校内効果を検証するとともに,学校規模との交絡を回避した。9回の縦断調査で得られた小学4年生から中学3年生のデータ(11,702名,のべ45,694名,1,308クラス)に基づく分析の結果,クラスサイズの拡大は,(a)学業成績を低下させること,(b)教師からのサポートを減少させること,(c)友人からのサポートや向社会的行動の減少をもたらすこと,(d)抑うつを高めることが示された。こうした影響の広さから,クラスサイズは学級運営上,重大な意味を持つ変数であることが示された。
著者
相澤 直樹
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.215-224, 2002-06-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
31
被引用文献数
3 8

本研究では, 誇大特性と過敏特性からなる自己愛的人格項目群を作成し, 自己愛的人格の構造を検討した。まず, 67項目からなる自己愛的人格項目群を作成し, YG性格検査の10下位尺度とともに一般の大学生・大学院生545名に実施した。得られたデータにプロマックス回転による因子分析を施したところ,“対人過敏”,“対人消極性”,“自己誇大感”,“自己萎縮感”,“賞賛願望”,“権威的操作”,“自己愛的憤怒”の7因子が抽出された。その後, これらの下位尺度について, 項目一総得点問相関とα係数を用いて内的一貫性を検討した。また, YG性格検査との関係を検討したところ, 各下位尺度の併存的妥当性が確かめられた。次に, 共分散構造分析を用いて自己愛的人格項目群の潜在変数に関するモデルを検討した。モデル1は, 2つの独立的な潜在因子が別々に誇大特性下位尺度と過敏特性下位尺度を規定するという仮説から構成された。モデル2は,“誇大自己”と“萎縮自己”の2つの自己イメージから“自己愛的傷つき易さ”が生じるという潜在因果関係により構成された。分析の結果, 両モデルにおいてすべてのパス係数は有意な値を示したが, 十分な適合度 (GFI) を示したのはモデル2のみであった。以上の結果について, 誇大特性と過敏特性を含む自己愛的人格を包括的にとらえる視点から考察を行った。
著者
村山 航
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.118-130, 2012 (Released:2013-01-16)
参考文献数
50
被引用文献数
33 2

妥当性とは曖昧な構成概念を扱う心理学にとって, もっとも重要な概念の1つである。妥当性というと「基準連関妥当性」「構成概念妥当性」「内容的妥当性」という3つのタイプがあると一般に説明されることが多い(妥当性の三位一体観)。しかし, 1980年代以降の妥当性研究では, こうした妥当性のタイプ分けは適切ではなく, 「構成概念妥当性」という考え方にすべての妥当性は収斂するという考え方が主流である(単一的な妥当性概念)。本稿の前半では, こうした妥当性概念の歴史的変遷について, 思想的な背景や近年の議論などを踏まえた解説を行った。本稿の後半では, 妥当性に関するより実践的なトピックを取り上げ, 心理測定学的な観点から議論を行った。具体的には, 1. 「内容の幅の広い項目群を用いた尺度作成」というアイディアと伝統的な心理測定学的モデルの矛盾, 2. 「個人間相関」と「個人内相関」を区別することの重要性とその関係, そして3. 心理学における「尺度の不定性」が結果の解釈などに与える影響などについて議論を行った。
著者
大西 彩子 黒川 雅幸 吉田 俊和
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.324-335, 2009 (Released:2012-02-29)
参考文献数
37
被引用文献数
11 10

本研究の目的は, 児童・生徒が教師の日常的な指導態度をどのように捉えているのかということ(教師認知)が, 学級のいじめに否定的な集団規範と, いじめに対する罪悪感の予期を媒介して, 児童・生徒のいじめ加害傾向に与える影響を明らかにすることである。547名(小学生240名, 中学生307名)の児童・生徒を対象に, 教師認知, 学級のいじめに否定的な集団規範, いじめに対する罪悪感予期, いじめ加害傾向を質問紙調査で測定し, 共分散構造分析による仮説モデルの検討を行った。主な結果は以下の通りであった。(1) 学級のいじめに否定的な集団規範といじめに対する罪悪感の予期は, 制裁的いじめ加害傾向と異質性排除・享楽的いじめ加害傾向に負の影響を与えていた。(2) 受容・親近・自信・客観の教師認知は, 学級のいじめに否定的な集団規範といじめに対する罪悪感の予期に正の影響を与えていた。(3) 怖さの教師認知と学級のいじめに否定的な集団規範は, いじめに対する罪悪感に正の影響を与えていた。(4)罰の教師認知は, 制裁的いじめ加害傾向と異質性排除・享楽的いじめ加害傾向に正の影響を与えていた。本研究によって, 教師の受容・親近・自信・客観といった態度が, 学級のいじめに否定的な集団規範といじめに対する罪悪感の予期を媒介して, 児童・生徒の加害傾向を抑制する効果があることが示唆され, いじめを防止する上で教師の果たす役割の重要性が明らかになった。
著者
伊藤 裕子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.458-468, 2001-12-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
41
被引用文献数
3 1

本研究の目的は, 第1に, 青年期女子の性同一性を測定する尺度を開発してその発達過程を明らかにし, 第2に, 自尊感情および身体満足度と性同一性との関連を検討することにある。中1, 中3, 高2, 大学に在籍する701名の女子青年に, 性同一性, 自尊感情, 身体満足度を尋ねた。その結果,(1) 女子青年の性同一性は, 父への信頼, 母への同一視, ステレオタイプな性役割への同調, 性的成熟への戸惑い, 性の非受容から構成される,(2) 性同一性は中学1年から3年にかけて低下し, その後上昇するという発達的変化を示す,(3) 身体満足度との関連から, 青年前期には身体的側面において性同一性の危機が経験されている,(4) 青年期における女子の自尊感情は, 両親の良好な関係を認知し, その関係を生み出す源泉としての父親を頼りに思い尊敬できること, および自己の性を受容できることが関係していた。このことより, 性同一性から摂食障害に至る過程において, 母親の存在の背後にある父親の影響が小さくないことが示唆された。なお, 性同一性尺度 (GIIF) の信頼性, 構成概念妥当性, および基準関連妥当性も併せて検証された。
著者
栗田 季佳 楠見 孝
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.129-139, 2010 (Released:2012-03-27)
参考文献数
44
被引用文献数
3 1

本研究では, 近年用いられるようになった「障がい者」表記に注目し, ひらがな及び漢字の表記形態が身体障害者に対する態度に及ぼす影響について, 接触経験との関連から検討することを目的とした。身体障害者に対する態度については, イメージと交流態度の2つの態度次元に着目した。SD法及び交流態度尺度を用いて, 大学生・大学院生348名を対象に調査を行った。その結果, 身体障害者イメージは身体障害学生との交流に対する当惑感を媒介として身体障害学生と交友関係を持つことや自己主張することに対する抵抗感に影響を与えることが示された。そして, ひらがな表記は接触経験者が持つ身体障害者に対する「尊敬」に関わるポジティブなイメージを促進させるが, 接触経験の無い者が持つ尊敬イメージや, 身体障害学生との交流に対する態度の改善には直接影響を及ぼすほどの効果を持たないことがわかった。身体障害学生との交流の改善には「社会的不利」「尊敬」「同情」を検討することが重要であることが本研究から示唆された。特に, 身体障害者に対する「尊敬」のイメージの上昇は, 接触経験の有無にかかわらず, 交流態度の改善に影響を与えることが考えられる。
著者
波田野 結花 吉田 弘道 岡田 謙介
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.151-161, 2015 (Released:2015-08-22)
参考文献数
27
被引用文献数
2 1

これまでの心理学データ分析では, 概して統計的仮説検定の結果は報告されるが, 効果量の報告や議論は軽視されがちであった。しかし近年の統計改革の中で, 効果量を活用することの重要性が再認識されている。そこで本研究では, 過去4年間に 『教育心理学研究』誌に掲載された論文中で報告された仮説検定について, 論文中の情報から対応する効果量の値を算出し, 検定におけるp値と効果量との間の関係を網羅的に調べた。分析対象は, 独立な2群のt検定, 対応のある2群のt検定, 1要因および2要因の被験者間分散分析におけるF検定であった。分析の結果, いずれの場合においても報告されたp値と効果量の相関係数は-0.6~-0.4であり, 両者の間には大まかな対応関係が見られた。一方で, 検定結果が有意であるにもかかわらず小さな効果量しか得られていない研究も決して少なくないことが確認された。こうした研究は概ね標本サイズが大きいため, 仮説検定の枠組みの中では検定力分析の必要性が考えられる。また仮説検定の枠組みに留まらず, メタ分析によって関心下の変数ごとに効果量の知見を蓄積することや, ベイズ統計学に基づく新たな方法論などが今後の方向性として考えられる。
著者
岡田 謙介
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.71-83, 2015 (Released:2015-08-25)
参考文献数
61
被引用文献数
1 4

測定の信頼性は,実証的研究のおよそすべてに関わる問題である。本稿ではまず,信頼性の観点から直近1年間の教育心理学研究を概観する。近年のわが国における心理学諸分野のレビューからも確認されたように,研究場面において最もよく利用される信頼性の指標としてCronbachのα係数がある。しかし,α係数とはどのような指標なのかについては,心理学者の間で必ずしも理解がされていなかったり,誤解がされていることも少なくない。そこで本稿では,α係数がどのように解釈できる指標なのか,またどのように解釈してはいけない指標なのかを論じる。具体的には,前者についてはα係数が (1) 可能なすべての折半法による信頼性の平均であること,(2) 信頼性の下界の一つであること,(3) 本質的タウ等価の条件のもとで信頼性と一致することを述べる。後者については,α係数が (1) 大きいことが一次元性(等質性)の根拠とはならないこと,(2) 内的一貫性の指標とされることが多いが近年批判も高まっていること,(3) 項目数など様々な要因に依存すること,(4) 信頼性の「下限」ではないことを述べる。最後に,α係数に代わる信頼性の推定法と今後の展望,そして信頼性を高めるような測定の重要性を述べる。
著者
冨永 敦子 向後 千春
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.156-165, 2014-03-30 (Released:2014-12-24)
参考文献数
57
被引用文献数
2 5

本研究では最近のeラーニングに関する実践的研究の進展を概観した。情報通信技術の進展とともに,eラーニングと呼ばれる,ネットワークとパソコンやモバイル端末を利用した教育が一般的になりつつある。本稿ではまず,従来の教育とeラーニングを活用した教育を比較した研究を取り上げ,eラーニングが従来の教育方法と同程度かそれ以上の効果があることを示唆した。次に,eラーニングがより効果的となる特質として,反復学習の最適化が可能であることと学習者に対するフィードバックがシステムとして可能であることを取り上げた。さらに,ドロップアウトが比較的多いと言われるeラーニングの短所を補うための方策として,ドロップアウトしやすい時期や学習者の特定,講師のプレゼンス,ブレンド型授業の採用,メンタリングといった観点から工夫していくことが必要であることを主張した。最後に,これからのeラーニングの課題について述べた。
著者
伊藤 裕子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.396-404, 1997-12-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
23
被引用文献数
1

This study investigated the formative factors of gender conception as a cognitive frame concerning gender and its influence on a selection of gender roles (career patterns) using a multiple regression analysis. High school students, composed of 747 females and 726 males, were asked their gender conception measured by how much they agreed to stereotypical behaviors and affairs according to gender. The factors contributing to reinforcement of the gender conception were as follows: (a) the contact with magazines proper to gender,(b) awareness of sex/gender differences in an early period of life,(c) encouragement of femininity (masculinity) by parents, and in addition,(d) a gender separated educational environment in males. Otherwise, from the pass analysis it was indicated that the attitudes of gender roles were made by the medium of the gender conception composed by those factors, and that the gender roles were selected on those attitudes. The Scale of Gender Conception was available as a measure for a gender schematic process except the self concepts.
著者
平山 るみ 楠見 孝
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.186-198, 2004-06-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
19
被引用文献数
50 34 11

本研究の目的は, 批判的思考の態度構造を明らかにし, それが, 結論導出過程に及ぼす効果を検討することである。第1に, 426名の大学生を対象に調査を行い, 批判的思考態度は, 「論理的思考への自覚」, 「探究心」, 「客観性」, 「証拠の重視」の4因子からなることを明らかにし, 態度尺度の信頼性・妥当性を検討した。第2に, 批判的思考態度が, 対立する議論を含むテキストからの結論導出プロセスにどのように関与しているのかについて, 大学生85名を用いて検討した。その結果, 証拠の評価段階に対する信念バイアスの存在が確認された。また, 適切な結論の導出には, 証拠評価段階が影響することが分かった。さらに, 信念バイアスは, 批判的思考態度の1つである「探究心」という態度によって回避することが可能になることが明らかにされ, この態度が信念にとらわれず適切な結論を導出するための重要な鍵となることが分かった。
著者
小塩 真司 岡田 涼 茂垣 まどか 並川 努 脇田 貴文
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.273-282, 2014 (Released:2015-03-30)
参考文献数
34
被引用文献数
19 22

本研究では, 日本で測定されたRosenberg(1965)の自尊感情尺度の平均値に与える調査対象者の年齢段階や調査年の要因を検討するために, 時間横断的メタ分析を試みた。1980年から2013年までに日本で刊行された査読誌に掲載された論文のうち256研究を分析の対象とした。全サンプルサイズは48,927名であった。重回帰分析の結果, 調査対象者の年齢段階と調査年がともに, 自尊感情の平均値に影響を及ぼすことが明らかにされた。年齢段階に関しては, 大学生を基準として, 調査対象者が中高生であることが自尊感情の平均値を低下させ, 成人以降であることが自尊感情の平均値を上昇させていた。また調査年に関しては年齢層によって効果が異なっていた。中高生や成人においては最近の調査であるほど直線的に自尊感情の平均値が低下しており, 大学生では曲線的に変化し, 近年は低下していた。また件法が自尊感情得点の平均値に影響を及ぼすことも明らかにされた。
著者
松岡 弥玲
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.45-54, 2006-03-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
36
被引用文献数
5 1

本研究の目的は,(1) 理想-現実自己のズレが年齢と共に減少していく変化と, 自尊感情が生涯にわたって維持される傾向とが関係しているかどうかを検証すること,(2) 理想自己の実現可能性の生涯発達変化を捉えること,(3) ズレを減少させる方略 (肯定的解釈粘り強さ諦めの早さ) の生涯発達変化をズレとの関わりから探索的に検討することである。調査参加者は15歳から86歳までの男女 (865名)。主な結果は以下の通りである。(1) 自尊感情は生涯維持され, ズレは年齢と共に減少していた。そして青年期から老年期までの全ての群でズレと自尊感情との間に有意な負の相関関係がみられ, ズレが減少していく変化と自尊感情の維持とが関連していることが示唆された。(2) 実現可能性は, 45-54歳に減少する傾向がみられた。(3) ズレを減少させる方略は, 高校生から55-64歳までの間, 対照的な方略が交互に用いられ, 男女差が顕著であった。しかし, 65-86歳群になると男女共にズレと方略との関わりが無くなった。これらの結果について, 性差に焦点をあて, ライフイベントや職業生活との関わりから考察がなされた。