著者
羽生 和紀
出版者
日本環境心理学会
雑誌
環境心理学研究
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.12-18, 2013

環境表象は認知地図といわれることが多いが,地理的地図とは異なり,空間のアナロジーとしての構造だけではなく命題的な構造ももっている。そして様々な環境・空間表象の断片から利用可能で必要な表象を選択し,必要に応じた精度,情報量,尺度で一時的に生成される空間・環境表象が認知地図である。認知地図を構成する空間の表象・情報は直接的・間接的経験から獲得される。直接的経験においては,オプテック・フローを含む視覚的情報が重要だが,疲労感をともなう運動感覚や固有受動フィードバックによる身体感覚も距離の情報の一部となる。環境における空間行動では,量的な認知距離や認知地図を用いた顕在的な認知処理がおこなわれることもあるが,経験の豊富な環境においてはデフォルトの経路選択あるいは経過時間に関する「感覚」や移動時のオプテック・フローの知覚と身体感覚とそれにともなう疲労の経験に基づく潜在的な判断がおこなわれることが多い。また,疲労感や不快などの情動的な反応が環境認知に影響を与えており,とくに不確実な状況においては支配的な役割をはたすこともある。こうした複雑なシステム全体として環境認知を扱った研究はまだ不足しており,今後より必要とされるだろう。

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〔image01〕羽生和紀(2013) 環境認知:研究の現状と課題、環境心理学研究1(1), 12–18 https://t.co/diZQLOpkEr #CiNii

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