著者
加藤 敏
出版者
日本生物学的精神医学会
雑誌
日本生物学的精神医学会誌 (ISSN:21866619)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.53-59, 2012

1964年進化生物学者のHuxleyらが初めて,統合失調症発症にかかわる遺伝子には「遺伝的モルフィスム」(genetic morphism)が含まれ,統合失調症は進化異常(evolutionary anomaly)であるという見解を出した。この考え方を発展する形で,Crowは,ヒトの種に成功をもたらした言語ゆえに,ヒトは統合失調症発症という代償を強いられたと考える。Crespiらは,統合失調症の重要な感受性遺伝子がヒトの進化に関わる遺伝子であることを明らかにした。この種の研究は,人間の進化に関する遺伝子解析を考慮のうちに入れる形で,統合失調症の生物学的解明を行うことを試みるもので,生物学的精神医学における今後の統合失調症の病態解明に重要な展望を拓くといえる。統合失調症の有病率が地域,民族で必ずしも均一ではないという最近の疫学知見は,遺伝子レベルでは統合失調症感受性遺伝子の集積性に種々の変異があることを示唆する一方,統合失調症の顕在発症を考える上では,社会・文化環境の要因も重要であることの傍証となる。

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