著者
加藤 敏
出版者
日本生物学的精神医学会
雑誌
日本生物学的精神医学会誌 (ISSN:21866619)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.53-59, 2012 (Released:2017-02-16)
参考文献数
23

1964年進化生物学者のHuxleyらが初めて,統合失調症発症にかかわる遺伝子には「遺伝的モルフィスム」(genetic morphism)が含まれ,統合失調症は進化異常(evolutionary anomaly)であるという見解を出した。この考え方を発展する形で,Crowは,ヒトの種に成功をもたらした言語ゆえに,ヒトは統合失調症発症という代償を強いられたと考える。Crespiらは,統合失調症の重要な感受性遺伝子がヒトの進化に関わる遺伝子であることを明らかにした。この種の研究は,人間の進化に関する遺伝子解析を考慮のうちに入れる形で,統合失調症の生物学的解明を行うことを試みるもので,生物学的精神医学における今後の統合失調症の病態解明に重要な展望を拓くといえる。統合失調症の有病率が地域,民族で必ずしも均一ではないという最近の疫学知見は,遺伝子レベルでは統合失調症感受性遺伝子の集積性に種々の変異があることを示唆する一方,統合失調症の顕在発症を考える上では,社会・文化環境の要因も重要であることの傍証となる。
著者
加藤 敏
出版者
日本生物学的精神医学会
雑誌
日本生物学的精神医学会誌 (ISSN:21866619)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.53-59, 2012

1964年進化生物学者のHuxleyらが初めて,統合失調症発症にかかわる遺伝子には「遺伝的モルフィスム」(genetic morphism)が含まれ,統合失調症は進化異常(evolutionary anomaly)であるという見解を出した。この考え方を発展する形で,Crowは,ヒトの種に成功をもたらした言語ゆえに,ヒトは統合失調症発症という代償を強いられたと考える。Crespiらは,統合失調症の重要な感受性遺伝子がヒトの進化に関わる遺伝子であることを明らかにした。この種の研究は,人間の進化に関する遺伝子解析を考慮のうちに入れる形で,統合失調症の生物学的解明を行うことを試みるもので,生物学的精神医学における今後の統合失調症の病態解明に重要な展望を拓くといえる。統合失調症の有病率が地域,民族で必ずしも均一ではないという最近の疫学知見は,遺伝子レベルでは統合失調症感受性遺伝子の集積性に種々の変異があることを示唆する一方,統合失調症の顕在発症を考える上では,社会・文化環境の要因も重要であることの傍証となる。
著者
加藤 敏英 遠藤 洋 酒井 淳一
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.66, no.12, pp.852-858, 2013-12-20 (Released:2014-01-20)
参考文献数
26
被引用文献数
1 3

2004~2012年度にかけて,山形県内の臨床的に健康な1~11カ月齢の肥育牛合計1,098頭の鼻汁を採取し,牛肺炎起因菌の分離同定を実施するとともに分離菌株の薬剤感受性を調べた.その結果,Mannheimia haemolytica(Mh)が225頭(20.5%)225株,Pasteurella multocida(Pm)が835頭(76.0%)835株,Mycoplasma bovis(Mb)が412頭(37.5%)412株及びUreaplasma diversum(Ud)が270頭(24.6%)270株,それぞれ分離された.これらの菌種がまったく分離されなかったのは108頭(9.8%)であった.全調査期間を通じ,MhとPmはエンロフロキサシン(ERFX)とフロルフェニコールに高感受性(MIC50; ≦0.031-0.5mg/l,MIC90; ≦0.031-2mg/l)を示した.また,MbとUdはERFXに高感受性(MIC50; 0.2-0.78mg/l,MIC90;0.25-3.13mg/l)を示したが,一部のMbはマクロライド系に対し著しい低感受性(MICレンジ; TS 1-100mg/l≦,TMS 2-128mg/l≦)を示した.
著者
入口 慎史 今井 徹 田中 昌代 田沼 道也 折井 孝男 加藤 敏明
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.137, no.9, pp.1117-1127, 2017 (Released:2017-09-01)
参考文献数
32

We conducted a meta-analysis to investigate the influence of antifungal spectrum on the effectiveness and adverse events of empirical antifungal therapy for febrile neutropenia. We searched PubMed and Cochrane Central Register of Controlled Trials (Central), and identified randomized controlled trials reporting mortality, efficacy, adverse events, and hepatic and renal dysfunction. Five trials assessed the efficacy and adverse events of agents with antifungal spectrum covering and those not covering Aspergillus. There were no differences in mortality [risk ratio (RR); 0.79, 95% confidence interval (Cl); 0.60-1.02], efficacy ratio (RR; 1.01, 95%Cl; 0.91-1.12), adverse event ratio (RR; 0.23, 95%Cl; 0.04-1.23), and hepatic dysfunction ratio (RR; 0.81, 95%Cl; 0.59-1.12) between two groups. Antifungals with no activity against Aspergillus were associated with lower renal dysfunction ratio (RR; 0.27, 95%Cl; 0.10-0.71). Five trials compared agents with antifungal spectrum covering versus those not covering Mucor. There were no difference in mortality (RR; 1.24, 95%Cl; 0.98-1.57), efficacy ratio (RR; 1.09, 95%Cl; 0.91-1.30), and hepatic dysfunction ratio (RR; 0.98, 95%Cl; 0.66-1.45) between two groups. Antifungals with no activity against Mucor were associated with lower adverse event ratio (RR; 0.60, 95%Cl; 0.47-0.77) and renal dysfunction ratio (RR; 0.25, 95%Cl; 0.13-0.49). Presence or absence of activity against Aspergillus or Mucor is not associated with mortality or efficacy ratio. Amphotericin B with activity against Aspergillus and Mucor has a higher adverse event ratio. Depending on the case, selection of antifungal drugs considering efficacy and side effects is necessary.
著者
加藤 敏幸
出版者
関西大学
雑誌
情報研究 : 関西大学総合情報学部紀要 (ISSN:1341156X)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.1-22, 2012-09-20

サイバーポルノの取り締まりに関して,昨年(平成23 年6 月17 日),刑法175 条が改正された.改正法は従来の客体に加えて,「電磁的記録に係る記録媒体」をもわいせつ物として例示列挙に加え,さらに,「電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布」する行為をも新たに処罰の対象にした.そしてこれに伴い,有償頒布目的でのわいせつ物の所持およびわいせつ電磁的記録の保管も処罰に加えられた.しかし,この改正法の適用にあたっては様々な問題点が指摘されている.そこで,この改正法について,今回の改正に至った背景と改正法の新たな内容,そしてその問題点について検討したい.\nRecently, the law on criminal obscenity was revised in relation to cyberporn. This law extended definitions of the act of criminal obscenity to bring cyberporn under stringent control. However, there are issues that arise in terms of the application of this law in relation to cyberporn. This paper examines these issues in relation to the revision of the law.
著者
加藤 敏幸
出版者
関西大学総合情報学部
雑誌
情報研究 : 関西大学総合情報学部紀要 (ISSN:1341156X)
巻号頁・発行日
no.37, pp.1-22, 2012-09

サイバーポルノの取り締まりに関して,昨年(平成23 年6 月17 日),刑法175 条が改正された.改正法は従来の客体に加えて,「電磁的記録に係る記録媒体」をもわいせつ物として例示列挙に加え,さらに,「電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布」する行為をも新たに処罰の対象にした.そしてこれに伴い,有償頒布目的でのわいせつ物の所持およびわいせつ電磁的記録の保管も処罰に加えられた.しかし,この改正法の適用にあたっては様々な問題点が指摘されている.そこで,この改正法について,今回の改正に至った背景と改正法の新たな内容,そしてその問題点について検討したい.\nRecently, the law on criminal obscenity was revised in relation to cyberporn. This law extended definitions of the act of criminal obscenity to bring cyberporn under stringent control. However, there are issues that arise in terms of the application of this law in relation to cyberporn. This paper examines these issues in relation to the revision of the law.
著者
加藤 敏文 井上 嘉則 上茶谷 若 齊藤 満 加賀谷 重浩 山本 敦
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 = Japan analyst (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.335-340, 2012-04-05
参考文献数
21
被引用文献数
5

固相抽出剤形状の多様化を目的として,逆相/陰イオン交換複合モード型ポリマー系吸着剤をポリエチレン粉末で焼結した多孔質円柱状の固相抽出剤を調製し,固相抽出特性を評価した.作製した焼結型固相抽出剤はモノリス様の連続孔を有しており,高流速下でも被検化合物を定量的に抽出可能であった.中性,塩基性及び酸性薬物を用いて抽出特性を調べたところ,中性及び塩基性薬物は疎水性相互作用により明確に保持され,メタノールで定量的に回収された.酸性薬物は疎水性相互作用と陰イオン交換相互作用が加味された複合相互作用により保持され,ギ酸添加メタノールで定量的に回収可能であった.焼結用樹脂の<ruby><rb>撥</rb><rp>(</rp><rt>はっ</rt><rp>)</rp></ruby>水性によるイオン交換相互作用の低下が懸念されたが,その影響はほとんどなく明確なイオン交換相互作用を発現した.本検討で用いた焼結法は円柱状だけでなく多彩な形状の固相抽出剤を作製可能であるため,固相抽出剤の多様化手法として有用である.
著者
飛田 幹男 宗包 浩志 海津 優 松坂 茂 黒石 裕樹 眞暗 良光 加藤 敏
出版者
日本測地学会
雑誌
測地学会誌 (ISSN:00380830)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.27-37, 2004-03-25 (Released:2010-09-07)
参考文献数
14
被引用文献数
1

The source of seasonal groundwater level variation, which is closely related to the variation of GPS vertical component, was investigated. We found that groundwater pumping for paddy field irrigation from May to August caused drawdown of groundwater level by 7m and this caused temporal subsidence by about 2 cm in Geographical Survey Institute, Tsukuba. Elastic deformation of gravel layers explains the process that groundwater level variation causes variation of ground height, because the height recovers completely and there is no delay between the two variations. The scale error of GEONET due to the seasonal height variation of the fixed GPS station at GSI is estimated to be±0.3 ppb.
著者
野崎 守英 加藤 敏 弘 睦夫 加藤 信朗 中村 昇 土橋 茂樹 田中 久文 清水 正之
出版者
中央大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

言葉には価値を示す言葉と事実を示す言葉とがある。その二つの性格が一つの言葉のうちで重なる場合もある。本研究では、言葉のそうした面について、参加者のさまざまな視角を提示し重ね合わせることを通して、倫理的な価値の多様なあり方の諸相を検討することを試みた。三年間の共同研究を経て明らかになったことを要約すると次のようになると思える。価値語・評価語のあり方にかかわって考えを進めるあり方には、大旨、少なくとも三つの方向がある。第一にあるのは、価値を含む言葉はそもそもどのような組成を備えて成り立つ、と見定めるのが妥当なのか、事実を示すとみなされる語と価値を示す語とは、どんな位相の差を示すものとしてあるのか、あるいはそうした位相の違いといったものなどはそもそもないと定める視点を立てることもできるのかどうか、といった点について、事を抽象する方向に眼を据えて思索を試みる、といった質の究明である。第二にあるのは、徳目としてしばしば話題にされる質の概念、あるいはもう少し広い幅で、人の価値指針となるような概念の成り立ちや意味を問う、といった視点からの究明である。儒学が倫理思想の体裁をとって問題にされる際には、そうした側面がとりわけ立ち上がることになる。旧来、この面の検討は、かなりなされることがあった、といえる。第三としてあるのは、広く日常にも用いられている言葉のうちに含まれている価値指示のあり方(たとえばさまざまな形容詞のうちに籠められているさまざまな価値内包性といったあり方)について、その意味内包のいろいろな方向の検討を試みるといった質の究明である。仔細は、報告集の参加者の論文のうちに見られる。
著者
阪本 英男 加藤 敏春 岸本 和一郎 多田 幸生 村上 明
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.29, no.12, pp.1151-1157, 1988-12-15
被引用文献数
1

靴はそのデザインに多様な形状が要求される.近年においては デザインに対する仕様の変化する期間が短くなっているため このような需要動向に即応できることが望まれる靴の製造工程においても靴CADシステムが導入されているが 三次元でのデザインを作成するための機能については不十分である.筆者らは 靴用CADシステムにおいて靴のデザイナによるデザインの作成作業を支援するための三次元カーソル機能の開発を行い 三次元のグラフィックディスプレイ上で実現した.本報告では 作業の対象であるラストの曲面形状をその三次元形状測定点から創成する過程 三次元カーソルの動きをモデリング曲面上のみに拘束するための処理手順 システムのハードウェア構成について述べるまた 実際に三次元カーソルを用いてデザイン曲線を作成した例を挙げる.
著者
伊藤 公夫 松橋 亮 加藤 敏朗 三木 理 紀平 寛
出版者
Japan Society of Corrosion Engineering
雑誌
Zairyo-to-Kankyo (ISSN:09170480)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.285-291, 2001-06-15 (Released:2011-12-15)
参考文献数
20
被引用文献数
6 5

Potential ennoblement for stainless steel in natural seawater was analyzed. Open circuit potentials (OCPs) of platinum, gold, palladium, chromium, titanium and nickel ennobled in natural seawater as well as stainless steel, SUS 304 (18Cr-8Ni). Potential ennoblement is not a specific event to only stainless steel. Marine biofilm clearly caused potential ennoblement. Cathodic polarization curves for the ennobled stainless steel elucidated that there were two distinct reduction current increases. One is the limited diffusion current of dissolved oxygen reduction below -500mV vs. Ag/AgCl (KClsat). The other reduction current around 0mV vs. Ag/AgCl (KClsat) was considered to be hydrogen peroxide reduction current in acidic condition. Synergistic effect of hydrogen peroxide and low pH in artificial seawater carried out high OCP of stainless steel like that in natural seawater. Therefore, we concluded that synergistic effect of hydrogen peroxide production and low pH by marine microorganisms is possible cause for potential ennoblement in natural seawater.
著者
柏原 太郎 加藤 敏春 有馬 純治 毛利 信幸
出版者
一般社団法人 表面技術協会
雑誌
金属表面技術 (ISSN:00260614)
巻号頁・発行日
vol.24, no.9, pp.500-505, 1973-09-01 (Released:2009-10-30)
参考文献数
7
被引用文献数
1 1

The mechanism for formation of Cr6+ compounds which were produced by high temperature oxidation reaction of Cr-Ca and Cr(OH)3 systems was investigated. The following conclusions were drawn: (1) When Cr(OH)3-Ca(OH)2 system was burned, Cr6+ compounds were produced by two different mechanisms, which were distinguished by the boundary temperature of 300°C. At temperatures above 300°C, Cr6+ compounds were produced by the mechanism proposed by Nishino et al.; but at temperatures below 300°C, Cr6+ compounds were produced by the following reaction: 4Cr(OH)3+4Ca(OH)3+3O2→4CaCrO4+10H2O (2) CrO3 was prouced by burning of Cr(OH)3 including oxidable anions such as SO42+; and the amount of CrO3 compounds produced was maximum at 250°C. Therefore, it was impossible to prevent the production of Cr6+ compounds in the low temperature burning of real sludge. (3) When Cr-Ca system was burned, the amount of Cr6+ compounds produced became constant at a time at a temperature of 440-600°C; but, at temperatures above 700°C, the surface began to fuse and the reaction proceeded to the interior of particles so that the amount of Cr6+ compounds produced increased with the rise of temperature.