- 著者
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宮西 孝則
- 出版者
- 紙パルプ技術協会
- 雑誌
- 紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
- 巻号頁・発行日
- vol.70, no.12, pp.1281-1288, 2016
- 被引用文献数
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<p>オゾン漂白を組み込んだ漂白シーケンスは一般的にライトECF漂白と呼ばれている。1971年から各国でパイロットプラントを使った研究開発が行われ,1992年に実機が稼動した。現在,オゾン漂白は世界の23工場で運転中であり,約1,000万トン/年のパルプが漂白されている。23工場のうち14工場の設備は2000年以降に稼働し,日本の製紙会社では国内6工場,海外2工場に導入している。すなわち,新しいオゾン漂白設備の50%以上を我が国の紙パルプ産業が保有している。ライトECF漂白は,環境負荷を著しく低減するだけでなく,晒し薬品コストを削減し,蒸気使用量を減らすことができる。パルプ強度を損なうことなく,到達白色度を高め,ピッチトラブルを減少し,叩解エネルギーを減少するなど多くの経済的メリットをもたらす。オゾン漂白は,中濃度又は高濃度で行われ,1990年代は既存設備を利用した改造工事で設備費が安価で工事が容易な中濃度が優勢だったが,2000年以降は高濃度設備が改良されて,中濃度と高濃度が拮抗している。二酸化塩素ECFとオゾンECFのどちらを選択するか,中濃度と高濃度のどちらが有利かなど,漂白シーケンスは,それぞれの工場の条件を検討して選択する。オゾン漂白基礎講座第1回ではオゾンの性質,オゾンの発生技術,オゾン漂白の操業条件などオゾン漂白の基礎について述べる。</p>