著者
菊地 正博
出版者
日本食品照射研究協議会
雑誌
食品照射 (ISSN:03871975)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.3-10, 2016

<p>放射線の高い透過性を利用すると,牛レバーを包装後に生のままで安全に殺菌できると考えられる。これまでに冷蔵状態の照射牛生レバー中のラジカルを電子スピン共鳴法で検出できた。しかし,実用的には冷凍状態で照射されることが考えられるので,照射された冷凍牛生レバーについて様々な試料調製法を用いてラジカル検出を試みた。予めストローに牛生レバーを詰めて照射した試料のESRスペクトルと,単独で照射したストローのESRスペクトルの差スペクトルから照射応答するピークが見出された。一方,冷凍牛レバーのみを試料管に挿入してESR測定したところ,メインピークとその低磁場側と高磁場側に存在するサイドピークを検出でき,ほぼ直線的な線量応答が確認できた。牛生レバーの凍結乾燥粉末のESR測定ではサイドピークが消失し,ショルダーピークに変化が見られた。冷凍状態で照射した牛生レバーのラジカルが冷凍保存後でも検出可能であるか確認するため,照射後7日間,冷凍保存した牛レバーを流水解凍して検体を作製してESR測定した。その結果,照射誘導ラジカルが検出可能であることが明らかとなり,線量応答性も確認できた。したがって,ESR法は冷凍状態で照射された牛生レバーに対して照射の有無を判別する検知法として利用可能と考えられる。液体窒素温度でのESR法は,牛レバーの解凍から測定まで短時間で実施可能なのでスクリーニング法として有用と考えられる。</p>

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