著者
千葉 悦子 飯塚 友子 市川 まりこ 鵜飼 光子 菊地 正博 小林 泰彦
出版者
日本食品照射研究協議会
雑誌
食品照射 (ISSN:03871975)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.23-36, 2016 (Released:2017-03-01)
参考文献数
11

「香辛料は,照射殺菌に比べて過熱水蒸気殺菌では香りが減少し色調が変化する」ことを,官能検査により種々の条件で確かめた。加熱調理のカレーであっても,照射殺菌品は過熱水蒸気殺菌品より「試食前の香り」や「試食しての辛味」が統計的な有意差を伴い強かった。料理でなく香辛料自体で比較し,赤唐辛子,白・黒コショウは,照射殺菌品の方が,風味や辛味がより強い傾向であった。さらに,赤唐辛子やターメリックの過熱水蒸気殺菌品は,未処理品との色の違いが非常に大きく,照射品は小さかった。そこで,色と風味の比較を2次元マップに表すと,照射品は未処理品に近いことが一目瞭然で,放射線殺菌の長所が納得しやすく,リスクコミュニケーション推進に効果的であると分かった。また,香辛料は水に浮沈するので,香辛料の量を厳密に揃える比較には,香辛料の分散が必要と分かった。それには,ポタージュや介護用とろみ剤が有効であろう。とろみ剤を水に溶かして香辛料を分散させると,白コショウの辛味は,統計的な有意差を伴い,照射殺菌品の方が過熱水蒸気殺菌品より強かった。ただし,照射品の風味の方が好まれるとは限らず,風味は強弱だけでなく質的な違いも感知される場合があると考えられた。
著者
菊地 正博
出版者
日本食品照射研究協議会
雑誌
食品照射 (ISSN:03871975)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.3-10, 2016

<p>放射線の高い透過性を利用すると,牛レバーを包装後に生のままで安全に殺菌できると考えられる。これまでに冷蔵状態の照射牛生レバー中のラジカルを電子スピン共鳴法で検出できた。しかし,実用的には冷凍状態で照射されることが考えられるので,照射された冷凍牛生レバーについて様々な試料調製法を用いてラジカル検出を試みた。予めストローに牛生レバーを詰めて照射した試料のESRスペクトルと,単独で照射したストローのESRスペクトルの差スペクトルから照射応答するピークが見出された。一方,冷凍牛レバーのみを試料管に挿入してESR測定したところ,メインピークとその低磁場側と高磁場側に存在するサイドピークを検出でき,ほぼ直線的な線量応答が確認できた。牛生レバーの凍結乾燥粉末のESR測定ではサイドピークが消失し,ショルダーピークに変化が見られた。冷凍状態で照射した牛生レバーのラジカルが冷凍保存後でも検出可能であるか確認するため,照射後7日間,冷凍保存した牛レバーを流水解凍して検体を作製してESR測定した。その結果,照射誘導ラジカルが検出可能であることが明らかとなり,線量応答性も確認できた。したがって,ESR法は冷凍状態で照射された牛生レバーに対して照射の有無を判別する検知法として利用可能と考えられる。液体窒素温度でのESR法は,牛レバーの解凍から測定まで短時間で実施可能なのでスクリーニング法として有用と考えられる。</p>