- 著者
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高橋 康弘
振甫 久
石黒 正樹
- 出版者
- 公益社団法人 日本理学療法士協会
- 雑誌
- 理学療法学Supplement
- 巻号頁・発行日
- vol.2015, 2016
【はじめに,目的】我々は第49回日本理学療法学術大会で夜間痛が長期に及ぶほど肩関節外旋のROMと結帯の予後に悪影響が及ぶことを明らかにした。今回の目的は前回の研究に症例数を増やし改めて明確にする事と,その内訳を分析し詳細な予後の特徴について明らかにする事である。【方法】2011年5月から2015年6月までに肩関節周囲炎と診断され機能面がプラトーに至るまで運動療法を施行した40名(女性26名,男性14名,年齢65.5±10.8歳)を対象とし後方視的研究を行った。除外基準は腱板断裂,患側・健側肩に既往や合併症のある者,糖尿病や重度全身性疾患を持つ者とした。夜間痛は発症から消失するまでの期間を週単位で記録した。屈曲・外転・外旋は,プラトー患側ROMを健側ROMで除し,患側ROMの改善した割合(以下:改善率)を算出した。結帯は健側結帯とプラトー患側結帯の差(以下:結帯差)を脊椎の個数で示した。夜間痛期間と各項目(屈曲・外転・外旋の改善率,結帯差)との関係をSpearmanの相関係数を用いて調べた。次に相関の得られた項目を夜間痛が無かった群(以下:無群)と夜間痛を有した群(以下:有群)に分け改善率,結帯差をMann-Whitney検定による2群比較を行った。さらにこの比較で有意差の得られた項目を,無群,夜間痛が1週から4週続いた群(以下:1-4週群),夜間痛が5週以上続いた群(以下:5週以上群)に分け改善率をKruskal-Wallis検定による3群比較を行い多重比較にはScheffeの方法を用いた。有意水準はp<0.05とした。【結果】夜間痛期間と外旋改善率はr=-0.58 p=0.0003で負の相関を認めた。夜間痛期間と結帯差はr=0.31 p=0.04で正の弱い相関を認めた。屈曲・外転は相関は無かった。外旋改善率の2群比較はp=0.01で無群が有意に高かった。結帯差の比較は有意差は無かった。外旋改善率の3群比較は無群と5週以上群で無群が,1-4週群と5週以上群で1-4週群がp=0.0001でそれぞれ有意差が見られた。無し群と1-4週群は有意差は無かった。【結論】本研究も外旋ROMと結帯の予後は夜間痛が長期に及ぶほど悪影響を受けることが明確となり前回の研究結果と一致した。Mengiardiらは肩関節周囲炎による烏口上腕靭帯と腱板疎部の関節包の肥厚を指摘しており炎症による夜間痛が続くほど伸張性が落ち予後に影響すると考察された。また夜間痛が無い群に着目したところ外旋は特に予後が良いことが示された。さらに3群比較により無群と1-4週群の間には有意差は無いが,これらと5週以上群の間に有意差が見られたことは夜間痛が4週以内の患者は特に予後が良い事が示された。統合すると外旋改善率は夜間痛が長期に及ぶほど低くなるがこの期間が4週以内に治まれば特に予後が良いという特徴が明らかになった。