著者
半谷 吾郎 BERNARD Henry
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement
巻号頁・発行日
vol.32, pp.37-37, 2016

<p>一斉開花結実があり、季節性の大きな低地フタバガキ林に覆われた、ボルネオ島、ダナムバレー森林保護区のレッドリーフモンキー(<i>Presbytis rubicunda</i>)1群の遊動パターンを、25か月にわたって調査した。他のコロブスの個体群に比べて、遊動域が小さく、一日の遊動距離が長く、食性の季節変化との関連が見られないことが、この個体群の遊動の特徴だった。全調査期間を通じた遊動域(95%カーネル)は、21.4haだった。月ごとの遊動域、およびコアエリア(50%カーネル)の大きさは、4つの食物カテゴリー(種子、新葉、<i>Spatholobus macropterus</i>の新葉、<i>Spatholobus macropterus</i>以外の新葉)の採食時間から、統計的に有意な影響を受けていなかった。種子をよく食べる季節に、遊動域をシフトさせる傾向も見られなかった。一日の遊動距離、および月ごとの1時間当たりの遊動距離は、いずれもその日・その月の食性から有意な影響を受けていなかった。一日の遊動距離は1160±340 m(平均±SD、レンジ: 550-2140 m)だった。この遊動パターンは、森林内に小さなパッチが高密度で存在するマメ科のつる、<i>Spatholobus macropterus</i>の新葉1種だけをフォールバック食物として利用する、この個体群の独特な採食戦略によって説明できる。遊動域が小さいのは、食物が総量として豊富にあるからである。一方、一日の遊動距離が長いのは、パッチの一つ一つが小さく、すぐに枯渇してしまうからであると考えられた。</p>

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