- 著者
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藤本 この美
草野 篤子
- 出版者
- 一般社団法人 日本家政学会
- 雑誌
- 一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
- 巻号頁・発行日
- vol.55, pp.108, 2003
【目的】日清・日露戦争期から日本内外の軍隊買春は拡大し、日中戦争の頃には軍そのものが戦場に「慰安所」を設置し、「慰安婦」を従軍させるといった「軍隊慰安婦」政策が実行された。政府はこれまで慰安所への関与は認めているものの、あくまで業者の経営によるものと主体性を否定している。そこで本研究では、公文書から当時の政府や軍の主体的関与を明らかにし、同時にこの問題を日本軍隊の特殊性や植民地支配のあり方、様々な人権差別が交錯した問題として捉え、慰安婦制度を生んだ社会的背景を考察する。【方法】朱徳蘭編『台湾慰安婦関係資料集』(不二出版、2001年)を用いて、公文書から軍や政府の主体的関与を探し出す。また、藤目ゆき氏の研究を参考に「性」・「階級」・「民族」という視点から、基本的人権をキーワードに論述する。【結果】台湾における慰安婦徴集・送出には「軍→内務省→台湾総督府→州知事・庁長→郡守・警察署長→業者」、海南島における慰安所の建設・経営には「軍→台湾総督府→台湾拓殖株式会社→福大公司→業者」といった組織の存在が明らかとなった。軍や政府の主体的関与が認められ、同時に半官半民の台湾拓殖株式会社の関与、さらにそれを隠蔽するため福大公司という子会社をトンネルとして融資をした事実も判明した。また社会的背景としては、天皇制国家・家父長制社会・差別社会の存在があったと考察される。女性は男によって「モノ」化され、天皇には侵略戦争のための「コマ」として扱われ、差別によって意思を遮断されたのである。今後女性の性の蹂躙をなくすためには、女性が自分の生き方と性のあり方を自分で決定できるような社会の土壌をつくっていくことが重要である。