著者
田中 孝治
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2012, 2012

虚記憶とは,実際には起こっていない事柄を起こったこととして誤って思い出すことである。虚記憶を検討する実験手法として,DRMパラダイムと呼ばれる手法が確立されている。本研究では,DRMパラダイムで見られる虚再認が,漢字一字の刺激に対しても見られるかについて検証を加えた。ルア項目1項目とルア項目の関連項目15項目で構成されるリストを12種類作成し,DRMパラダイムに用いた。その結果,6種類のリストにおいて,関連項目が学習時に提示されると,関連項目が提示されない場合に比べて,後のテストにおいて学習時に提示されていないルア項目についても,学習時に提示されたという偽りの既知感を高めることが示された。この結果は,漢字一字の刺激に対してもDRMパラダイムによって虚再認が生成されることを示すものといえる。今後,本研究で虚再認が示されたリストが頑健なものであるかについてはさらに詳細な検証が必要である。

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